【在宅医療関連サービス】芝建築設計事務所 望月厚司社長 最終更新日:2025/06/22

注目の在宅医療関連サービスへのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療サービス」の第1回目は東京都立川市にて病院・クリニック・福祉施設に特化した「芝建築設計事務所」を運営されている一級建築士望月厚司社長です。これまでの歩み、これからの医療・福祉施設設計に向ける思いを熱く語っていただきました。
望月社長のあゆみ
— ご出身と建築業界を志したエピソードをお聞かせください。
出身は埼玉県川口市です。川口市の「芝」という地域で、芝小学校、芝中学校へと進学しました。40年近く住んでいたこともあり、独立の際に事務所名を「芝建築設計事務所」と名付けました。愛着のある地名なのです。
高校を卒業後、建築の専門学校に進学しました。建築に興味を持ったきっかけを思い返すと、中学生の頃に校舎の建て替え工事を間近で見ていたことかもしれません。当時は仮設校舎のプレハブでの授業に不便を感じていましたが、日々建物が完成に近づいていく様子がとても印象的でした。今思えば、あれが建築の世界への入り口だったのかもしれません。

— 専門学校をご卒業されてからは、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?
卒業後、まずゼネコンの松栄建設株式会社に入社しました。ただ、もともと設計事務所で働きたいという願望があり、3年ほどで退職し、1993年に株式会社新環境企画に入社しました。翌年には社内異動により株式会社新環境設計に移りました。この新環境設計は、福祉施設や医療施設の設計を専門とする会社でした。これが、私がこの分野に進む大きなきっかけとなりました。
それまでは介護施設や障害者施設、病院といった分野とはまったく無縁でしたが、新環境設計は当時からこの分野で歴史のある会社で、そこで17年間、本当に多くのことを学びました。特別養護老人ホームの計画から設計監理、障害者入所施設、病院の増築、クリニックや薬局など、数えきれないほどのプロジェクトに携わらせていただき、おそらく130件以上の施設に関わったと思います。
その中でも特に印象に残っているのは、新環境設計時代の最後に担当した埼玉県の特別養護老人ホームです。120床の規模でデイサービスも併設されており、延床面積は6,500平方メートルにもなりました。完成までに2年から3年近くかかりましたが、非常に大きなプロジェクトでやりがいを感じました。
その後、2009年から株式会社アース建築設計工房で設計部長・管理建築士として勤務しました。独立する前に、知人の紹介で少しだけ関わらせていただいたのがきっかけです。そこは主に戸建て住宅、特に建売住宅の設計を手がけている事務所で、私がそれまで専門としてきた福祉施設とはまったく異なる分野でした。戸建ての設計を手伝いつつ、これまでの経験を活かして介護施設の営業も行っていました。ある意味、独立への準備期間のようなものでした。

「芝建築設計事務所」について
— 独立を決意されたきっかけは何だったのでしょうか?
40歳を目前にして、「これが最後のチャンスかもしれない」と独立を決意しました。会社に残るか、自分の力で挑戦するか。50歳、60歳、70歳と働き続けることを考えたとき、40歳という年齢が大きな節目に感じられました。
創業当初は、東京都および近隣3県の社会福祉法人や介護施設運営者を対象に、自ら足を運び名刺を配る日々。すぐに成果が出るわけではありませんでしたが、「とにかく人と会う、顔を出す」ことを心がけ、医療・福祉関係者や異業種の方々が集まる交流会や商工会議所にも積極的に参加しました。そのような活動の中で得た人脈が、少しずつ現在の仕事につながってきています。
そして、より多くのお客様からの信頼を得て、事業の基盤を確かなものとするために、2015年に法人化。「株式会社芝建築設計事務所」として新たな一歩を踏み出しました。医療・福祉施設は非常に専門性が高く、利用者やスタッフにとって本当に使いやすい空間をつくるには、長年の経験とノウハウが欠かせないと考えています。

— 現在の事務所の体制について教えていただけますか?
はい、現在は私と女性スタッフ2名の3人体制で、ここ5〜6年はこのメンバーです。福祉施設と医療施設を専門としています。もちろん、それ以外にも事務所や店舗の設計、また少し変わったところでは、大手回転寿司チェーンの店舗を2件ほど設計させていただいたこともあります。
起業してからの実績としては、設計監理まで担当した案件で40〜50件ほどでしょうか。建物の定期報告調査などの細かい仕事も含めると、70〜80件くらいになると思います。大学の実習棟を手がけたこともあり、その隣では偶然にも日本を代表する建築家が音楽堂を設計していて、同じ敷地で隣同士になったのは貴重な経験でした。

開業時における「お役立ちサイト」を目指して
— こちらはどのような背景で始められたのでしょうか?
「開業支援ページ」を立ち上げたきっかけは、お客様との打ち合わせや相談の中で、情報格差によって不利益を被るケースをたびたび目にしたことです。
たとえばあるコンペでは、当社が設計し、大手工務店が施工を担当するチームで提案しましたが、結果として地元の低価格な業者が受注しました。しばらくしてお客様から連絡があり、「当初は安く見えたが、後から多額の追加費用が発生した」とのこと。必要と思われる設備が含まれておらず、見積もり内容と実際の工事内容に大きな差があったようです。最終的に、当社が最初に提示した見積もりの方が結果的には安価だったのでは、という話になりました。
こうした出来事は、発注者が専門的な知識を持ち合わせていないことに加え、設計と施工の立場が分離していないために、相談しても解決が難しい状況を生んでいます。特に医療・福祉施設においては、ナースコールや空調、放送設備など、一般住宅とは異なる専門的な配慮が求められるにもかかわらず、そうした項目が見積もりから漏れていたり、後出しで追加費用となるケースも見られます。
また、コンペを行う際も、詳細条件を提示せずに概算で比較する例が多く、見積もり金額だけでは判断がつかないという問題もあります。見た目の価格が安くても、後になって大きな追加費用が発生するということも少なくありません。
こうした課題を少しでも解消したいという思いから、「開業支援ページ」では、土地探しから計画・設計・工事・開業に至る各ステップでの注意点や必要な知識を整理し、発注者自身が適切な判断を行えるようサポートしています。正しい情報があれば、防げるトラブルも多くあると信じています。
— 具体的には、どのような情報を発信されているのでしょうか?
「開業支援ページ」では、設計段階で確認すべき点や、工事業者に見積もりを依頼する際の注意点など、実務に役立つ情報を発信しています。また、残念ながら追加費用によって価格を引き上げようとする業者が存在するのも現実です。そうしたリスクを知っておくことも、後悔のない施設づくりには欠かせないと考えています。
このページはまだ立ち上げから日が浅く、広告も積極的には出していないため、大きな反響があるわけではありません。ウェブの専門家から見れば改善の余地もあるかもしれませんが、「見た目よりも中身を重視する」という姿勢を大切にしています。
本当に伝えるべき情報を、必要としている方にしっかり届けること。それが一番の目的です。現在はSEO対策にも取り組みながら、検索結果での表示改善に努めており、今後はコラムの定期更新など、より多くの方に役立つ発信を続けていく予定です。
— この「開業支援ページ」を通じて、最終的にどのようなことを実現したいとお考えですか?
理想としては、福祉施設やクリニックなどの開業を考えた方が、まず最初にこのページを訪れてくれるような、そんな「お役立ちサイト」に育てていきたいと思っています。
「開業を思い立ったら、まず芝建築設計事務所の開業支援ページを見てみよう」と言われるような存在になれたら嬉しいですね。行政書士さんや税理士さんが出版している“開業したら最初に読む本”のような、信頼できる情報源を目指しています。
社会福祉法人の方や、障害者支援に情熱を注いでいる方々は、本当に純粋な方が多く、人を疑うことをあまりしません。だからこそ、業者の言葉をそのまま信じてしまい、価格だけで選んで後悔するケースが後を絶ちません。
そうした方々が、安心して施設づくりに取り組めるよう、少しでもお役に立てればと思っています。ある意味では「世直し」のような気持ちでやっている部分もありますね(笑)。
まずは、みなさんに開業支援ページを訪れていただき、ご感想やご要望をいただければ幸いです。

建築における情報格差解消
— 現在感じていらっしゃる「福祉施設および医療施設」の問題点について教えていただけますか?
そうですね、いくつか課題はありますが、大きな流れとしてまず挙げられるのは、高齢者人口が2025年をピークに、今後徐々に減少していくと予測されていることです。これはつまり、新たな施設、いわゆる「箱モノ」の建設需要が今後減少していく可能性が高いということです。
国も在宅医療・在宅介護への移行を推進していますし、老朽化した既存施設の中には、そのまま閉鎖されていくケースも増えるでしょう。設計事務所としては、これは仕事の減少に直結する、少し厳しい現実でもあります。
ただ一方で、築40年、50年を経過した特別養護老人ホームなど、古い施設が数多く存在しており、それらの改修や大規模修繕の必要性は今後ますます高まっていくと考えています。新築が減る一方で、既存ストックをいかに有効に活用し、安全で快適な環境を維持していくかという課題が、今後の大きなテーマになってくるでしょう。
— 障害者施設についてはいかがでしょうか?
障害者支援の分野では、支援を必要とする方は増加傾向にあり、支援団体も増えています。しかし、その一方で運営面に課題を抱える施設が多いと感じます。
行政からの支援だけでは限界があり、社会福祉法人であっても、自ら収益を上げていく努力が今後ますます求められるでしょう。以前、ある法人の方が「自分たちで稼げるようにならなければ、本当の意味で質の高い支援はできない」とおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。
ボランティア精神だけでは運営が難しくなってきている現状があり、非営利法人であっても経営的な視点を持つことが必要不可欠になっています。
— 望月さんが目指す「新たな福祉施設および医療施設」への貢献について教えてください。
私たちの役割は、「良い施設を作りたい」「今の施設をもっと良くしたい」と願う方々に、建築の専門家として寄り添い、支援していくことだと考えています。それは新しい建物を設計するだけではありません。大規模な改修や日々のメンテナンスといった分野にも、今後はより力を入れていきたいと思っています。
「設計事務所」と聞くと、どうしても“新築の建物をデザインするところ”というイメージが強いかもしれませんが、私たちは建物に関するあらゆる「困りごと」に応える窓口でありたいと思っています。
「ここに相談すれば、きっと何かしらの道筋が見えてくる」そんな存在を目指しています。そのための情報発信の一環として、先ほどお話しした「開業支援ページ」も今後さらに充実させていきたいと考えています。
建物は建てたら終わりではありません。人が生活し、働く限り、そこには必ず新たなニーズが生まれ続けます。特に、特別養護老人ホームなどの大規模改修は今後確実に増えていく分野です。実際、先日も延床面積約9,000平米の大規模施設の改修設計を終えたばかりです。これだけの規模の改修を手がけられる設計事務所や施工業者は多くありません。こうした実績と蓄積したノウハウを活かし、今後も建築を通じて社会に貢献していきたいと考えています。

— 最後に、日々福祉や医療の現場で奮闘されている方々、特に在宅医療に関わる利用者や従事者の方々へメッセージをお願いします。
日々、利用者さんのために奮闘されている中で、もし建物や設備に対してストレスや不満を感じているのであれば、ぜひ専門家に相談してほしいと思います。
例えば、「動線」ひとつ取っても、スタッフの動きや物品の出し入れといった日常的な作業が非効率なままだと、それが毎日のストレスになりますよね。
もちろん、相談したからといってすぐにすべてが改善されるわけではありませんし、改修には費用も伴います。しかし、もしそれが原因で業務効率が落ちたり、精神的な負担がかかっているのであれば、5年先・10年先を見据えたときに改善によって得られるメリットは非常に大きいはずです。
「どこに問題があるのか」「どう改善できるのか」「費用はどのくらいかかるのか」といった情報が分かれば、現実的な対策を立てられるようになります。
時には「今は予算的に難しい」といった判断もあると思いますが、それでも「なぜこの状態なのか」が分かるだけで、気持ちがずいぶん楽になるはずです。最もストレスなのは、「理由が分からないまま我慢し続けること」ですから。
— 情報格差をなくす、という話にもつながりますね。
そうですね。「開業支援ページ」もその一環として運営していますが、まずは正しい情報を知り、選択肢を持つことがとても大切だと思います。
建物や設備に対するストレスを抱えたまま業務を続けるのではなく、まずは気軽に私たちのような専門家にご相談いただければ嬉しいです。医療や介護の本来の業務に、より集中できる環境づくりを全力でサポートさせていただきます。
株式会社芝建築設計事務所

〒190-0002
東京都立川市幸町5丁目80-10
TEL:042-537-9759/FAX:042-537-9769
MAIL:mochizuki@shiba-architects-office.com
WEB:https://www.shiba-architects-office.com/
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WEB:https://www.shiba-architects-office.com/
望月厚司社長のプロフィール
経歴:
1988年 埼玉県浦和市立南高等学校(現 さいたま市立浦和南高等学校)卒業
1990年 東京建築専門学校 建築学科 卒業
1990年 松栄建設株式会社 入社
1993年 株式会社新環境企画 入社
1994年 株式会社新環境設計 入社(配置移動)
2009年 株式会社アース建築設計工房 設計部長・管理建築士 就任
2010年 芝建築設計事務所 創業
2015年 株式会社芝建築設計事務所 社名変更 代表取締役・管理建築士 就任
株式会社新環境設計入社後現在までに、福祉施設及び医療施設を専門に建築の企画・設計・監理に従事
現在までに150件以上の設計等の業務に参画している
1988年 埼玉県浦和市立南高等学校(現 さいたま市立浦和南高等学校)卒業
1990年 東京建築専門学校 建築学科 卒業
1990年 松栄建設株式会社 入社
1993年 株式会社新環境企画 入社
1994年 株式会社新環境設計 入社(配置移動)
2009年 株式会社アース建築設計工房 設計部長・管理建築士 就任
2010年 芝建築設計事務所 創業
2015年 株式会社芝建築設計事務所 社名変更 代表取締役・管理建築士 就任
株式会社新環境設計入社後現在までに、福祉施設及び医療施設を専門に建築の企画・設計・監理に従事
現在までに150件以上の設計等の業務に参画している
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