【PICK UP!在宅医療機関 003】出張歯科四つ木 池川裕子院長 最終更新日:2024/12/14
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第3回目は東京都葛飾区にて「出張歯科四つ木」を運営されている池川裕子院長です。開業までの道のり、クリニックの特長そして今後の在宅医療にかける思いを熱く語っていただきました。
訪問歯科の道を志した経緯
— 歯科医師を目指したきっかけについて教えてください。
父が産婦人科医だったので、子どもの頃から、将来は医療の道に進むことを何となく意識していました。大学受験では医学部なども受験したのですが、結果的に松本歯科大学へ進学し、歯科の道へ進むことに決めたんです。
自分としては、歯科医になって良かったと思っています。口腔内からの健康づくりはとても大事なことだと思うので、そこに携わっていけることにやりがいを感じています。
— なぜ訪問歯科に進まれようと思ったのでしょうか。
卒業後は医局に残って、障害者歯科をやりたいと思っていたんです。母校の松本歯科大学は、障害者歯科の分野に強みを持っていたので、自然と興味が湧いたんですね。でも、「東京へ帰って来てほしい」という両親の意向もあったので、医局に残る道は諦めました。それでも障害者歯科に近いことがしたいと思い、訪問歯科をやっている歯科医院に就職したんです。そこでは外来と訪問歯科を半々ぐらいで診ていました。
— 実際に進まれてみていかがでしたか。
歯科医なら最初はみんな思うことなのかもしれませんが、「もう歯医者やめたい」なんて思っていた頃もありました。学生時代にしっかり勉強していても、実際に現場に出ると教科書どおりにはいかないことがたくさんあるんですよ。こちらから治療方法を提案しても、患者さんが嫌がる場合もありますしね。そんな時にどうしたらいいのだろうと悩むこともありました。
入れ歯の調整などの技術面に関しても、慣れるまでは大変です。ベテランの先生方が感覚でできることも、新人のうちはなかなか上手くできなくて。でも、そういった悩みは、時が解決してくれました。たくさん実践を積む中で、自然とできるようになっていきましたね。
— その後二つ目の医院に移られていますが、きっかけは何だったのでしょうか。
今も参加している医介塾(地域の医療や介護、福祉に携わる方々の職種を越えた交流会)での交流がきっかけで、二つ目の医院に移りました。
私自身、ケアマネさんとの繋がりが結構あったんですね。訪問歯科の場合、ケアマネさんが新規の患者さんを紹介してくれるケースが多いので、そこが私の強みかなと思います。
出張歯科四つ木について
— 医療法人社団煌道会 出張歯科四つ木の成り立ちについて教えてください。
前の医院を退職することが決まっていて、今後どうしようかと考えていた時に、これもまた医介塾で声をかけてもらったんですね。「新しい医院を一緒に立ち上げないか」というお誘いでした。それで立ち上げたのが、現在の出張歯科四つ木です。個人医院として立ち上げたのち、医療法人社団煌道会のグループに属することとなり、今に至ります。
— 「最短で伺う事」にはどのような思いが込められていますか。
すぐに診てもらえるということが、患者さんからの信頼に繋がっていくと考えています。先に予約が入っている場合もあるので、その日のうちに対応できるとは限らないのですが、できるだけ迅速に対応することを、いつも心がけています。
— 「独自の報告書」というのはどのような内容なのでしょうか。
「独自の報告書」というのは、患者さんの治療計画や治療経過に関して、ケアマネさんにお渡ししている報告書のことです。自治体にもよりますが、月に1回の報告でもいいところを、当院では患者さんについて何か気づいたことがあれば、こまめに報告するという方針でやっております。
例えば、訪問診療で診ていたはずの患者さんが、一人で勝手に外来に行ってしまっていたということがありました。このようなことがあると治療計画に支障をきたしてしまいます。また、患者さんが勝手にインプラントを入れてしまい、後から家族に請求がきてしまったら大変ですよね。
このようなことを未然に防ぐために、私たちは患者さんの些細な変化に目を向けて、ケアマネさんと密な連携をとっていくことを大切にしています。私たちのきめ細やかな報告によって、ケアマネさんの負担が少しでも軽減できたらいいなとも思っています。
— 設備の充実についてはどのようにお考えですか。
設備を充実させて、訪問診療でも、外来診療と同レベルの診療をできるようにすることを目指しています。設備が整っていないことで、患者さんをお断りするようなことはしたくないという思いがありますね。
— 診療地域はどのエリアを中心にされていますか。
葛飾区、江戸川区、墨田区、台東区辺りを中心にしています。少し遠いですが、障害者歯科の患者さんがいるので、文京区にも行っていますね。東京都内だけでなく、千葉県の松戸、市川などへ行くこともあります。
— 医院の人的な体制としてはどのような感じでされているのでしょうか。
現在は歯科医師2名、歯科衛生士2名、あと、ドライバー、事務員、理学療法士を含めて、12人程度でやっています。ちなみに、理学療法士がいる訪問歯科は、かなり珍しいようです。
訪問歯科をやっていくにあたって、ドライバーの確保は非常に重要だと思っています。ギリギリの人員では、急な休みが出た時に診療の手が回らなくなってしまう。だからドライバーに関しては、余裕を持った人員の確保をするようにしています。また、ケアマネさん等との密な連絡などを実践するために、事務員の確保も必要だと感じています。
歯科医として関わる様々な取り組み
— 葛飾医介塾とはどのような会なのでしょうか。
こちらは毎月1回開催している、医療や介護関係者の交流の場です。こじんまりとした会ながら、毎回新しい方が参加してくれるなど、活発な交流が行われています。私、お酒はあまり飲めないのですが、それでもとても楽しく参加させてもらっています。私自身、医介塾からいただいたご縁がたくさんありますしね。平成29年からは塾長も務めさせていただいています。
— 在宅歯科カレッジではどのようなことをされていますか。
在宅歯科カレッジはFacebookとYoutubeにて活動をしています。さらに、WHITE CROSSなどの歯科医向けのセミナーを通じて、訪問歯科に関する疑問点の解消や、技術の向上を目的としています。私もYoutubeの動画に出演するなどして、取り組みの普及に努めています。
メンバーも少しずつ増えてきて、訪問歯科への関心も高まってきているようには感じますね。訪問歯科をできる歯科医を増やしていくためにも、立ち上げの段階でサポートをして、何か手助けができればいいなと思っています。
認知症になっても、できることはたくさんある
— 定食屋きまぐれでのエピソードなどはありますか。
こちらは、医療・介護の有志の取り組みで、認知症の方がフロアスタッフとして働く定食屋さんです。認知症の方々が生きがいや、やりがいを感じられるような居場所づくりとしてやっており、私も協力させてもらっています。
たとえ認知症になったからといって、何もできなくなるわけではないんですよね。そこを誤解して「こちらでやるから、座っていて」などと、認知症の方の行動に制限をかけてしまうのは、良くないと思っています。
定食屋きまぐれでは、注文をまちがえてしまっても大丈夫なんです。認知症の方が生き生きと働くことが目的なので。中には、社会で一度も働いたことのない方もいらっしゃるんですけど、そういった方でも今では楽しそうに働いてくれていて、よかったなあと思いますね。
この取り組みには色々な反響があります。例えば、ケアマネさんが、担当の利用者さんの働く姿を見て、「この方、こんなに動けるんだ!」と驚いていることもありました。普段記憶が曖昧な方でも、エプロンを着せてあげると、「前にもここ来たわね」と思い出してくれることもありました。この取り組みが、認知症の方の心の片隅にでも根付いてくれたら嬉しいです。
— トラベルドクターとはどのような取り組みでしょうか。
年をとって体が動きにくくなっても、旅行に行きたいという思いの方はたくさんいらっしゃいます。そのような方の願いを叶える取り組みが、トラベルドクターです。伊藤 玲哉先生が立ち上げた会社です(https://travel-doctor.jp/)。私も、歯科医として協力させてもらっています。
「旅行に行く」という目標があると、不思議とリハビリも上手くいきやすいんですよ。「露天風呂に入りたいな、じゃあ、段差の昇り降りができないといけないよね」などといって、リハビリへのモチベーションが上がるんです。
在宅医療の未来を担う訪問歯科
— 訪問歯科が抱える課題について、池川先生はどのようにお考えでしょうか。
訪問歯科という選択肢があることを、もっと多くの方々に知ってもらいたいです。そのためには、訪問歯科を知っていただく活動や技術面での向上を図っていかなければいけないと思っています。
また、訪問歯科に携わる歯科医師や歯科衛生士の数も増やしていかなければいけないと感じています。これからの時代、在宅医療は絶対に必要とされてくるはずなので。
— 最後に、地域住民の方へメッセージをお願いします。
人生において、「よく噛んで食べられること」はとても重要なことです。歯のどこか1か所にでも不具合を感じたら、歯医者さんに早めに相談してほしいと思います。お口の健康を保つことは、体全体にも良い影響を与えますので。
当院では、患者さんにも寄り添った治療を心がけていますので、困ったことがあれば、いつでも気軽にご相談ください。
医療法人社団煌道会 出張歯科四つ木
〒124-0011
東京都葛飾区四つ木二丁目18番2号 アプト船橋204
TEL:03-6666-2253/FAX:03-6666-2254
診療時間 9:00~18:00
WEB:https://www.ddental.jp/
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TEL:03-6666-2253/FAX:03-6666-2254
診療時間 9:00~18:00
WEB:https://www.ddental.jp/
池川裕子院長のプロフィール
経歴:
2008年 松本歯科大学 卒業
2009年 神奈川歯科大学 研修修了
2018年 出張歯科四つ木 勤務
2008年 松本歯科大学 卒業
2009年 神奈川歯科大学 研修修了
2018年 出張歯科四つ木 勤務
資格・役職:
東京歯科保険医協会 理事
葛飾医介塾 塾長
在宅歯科カレッジ 管理者
東京歯科保険医協会 理事
葛飾医介塾 塾長
在宅歯科カレッジ 管理者
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