1. おうちde医療
  2. >
  3. PICK UP!在宅医療機関
  4. >
  5. 【PICK UP!在宅医療機関 004】ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長

【PICK UP!在宅医療機関 004】ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長 最終更新日:2024/12/20

【PICK UP!在宅医療機関 004】ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第4回目は2019年に東京都大田区にて「ひなた在宅クリニック山王」を開業された田代和馬院長です。開業までの道のり、クリニックの特長そして今後の在宅医療にかける思いを熱く語っていただきました。
在宅医療の道を選んだ経緯
— ひなた在宅クリニックの成り立ちについて教えてください。
新人の頃、沖縄の病院で、がんを専門として研修を受けました。その時に、「在宅で最期を迎えたい」というがん患者さんを多く見てきたのですが、実際に在宅医療を始めても上手くいかなくて、すぐに病院に戻ってきてしまう方が多かったんです。
そういった状況を見て、自分なら在宅医療にどう向き合っていけるだろうと心の中で思っていました。ちょうどその頃、学生時代からの親友である現理事長が、宮崎で在宅クリニックを開業したのですが、それに私も喚起されまして。自分も在宅医療をやりたいと思うようになったのです。
そして2019年4月、現理事長とともに大田区にて、当院を開業するに至りました。東京での開業を決めたのは、地方よりも既に在宅医療が普及している環境で、色々と挑戦をしてみたいという思いがあったからです。
元々、大田区には縁もゆかりもなかったですが、それでも私のことを受け入れてくれたこの地には、とても感謝しています。だから、これからも大田区周辺の方々のために頑張っていきたいと思っています。
— 断らない医療がモットーの一つになっていますが、そこに至った経緯を教えてください。
研修を受けた沖縄の病院が、どんな患者さんも断らないというスタンスだったので、その影響は受けていると思います。私の頭の中には、断るという選択肢が初めからないんですね。
そういった感じでやっていると、周りの方が「あそこに行けば、何でもちゃんと診てくれるよ」と言ってくれるようになって。気がつけば「断らない医療」というのが、自然と当院のキーワードになっていました。
— 貴院ホームページでは、スタッフ全員が写真付きで掲載されていたり、オフィス内の写真があったり、「ワンチーム」という様子が伺えます。その思いについて教えてください。
「正しい医療をやっていこう」とスタッフみんなが思ってくれています。みんな意識がとても高いんですよ。正しい医療をやっていこうという渦を最初に作ったのは私ですが、今は自分もスタッフたちと共に、その渦の中にいるような感じです。
自分はいつも、スタッフに背中を押してもらっているなと感じています。だから何年経っても、「頑張らなくては」と初心を忘れずにやっていけているんです。
— ホームページやSNSなどで情報発信されていますが、その目的や意図について教えてください。
ホームページなどでは、私たちが在宅医療で日々感じている課題を中心に、発信していきたいと思っています。患者さんたちが感じている困りごとを、私たちが患者さんに代わって世の中に発信する。あとは、患者さんが在宅医療を通じて幸せに過ごす姿も、多くの人に伝えていけたらと思っています。
ひなた在宅クリニックについて
— 診療地域はどの辺りを中心にされていますか。
大田区が中心です。基本的には、クリニックから近距離の患者さんが多いですが、特殊な患者さんであるなど、私たちが診ることでメリットが大きいと感じる場合は、少し遠くても診に行くことはあります。
— 患者さんの数、主な疾患はどのような感じでしょうか。
患者数は、月に500人から600人くらいです。内訳としては、約4分の1が悪性腫瘍の方で、一番多くなっています。あとは心不全、腰痛などがひどくて動きづらい方、パーキンソン病などの神経難病の方など、対応する患者さんの症状は多様です。
— 看取りの人数が一つの実績のファクターになっていますが、貴院が注力するポイント、KPIは何になりますか。
KPIとしては、新規の患者さんが週に一人は来てくれたらいいな、という感じです。新規患者の増加は、数あるクリニックの中から当院を選んでくれたことの指標になりますから。
在宅医療を通じて、患者さんの願いを叶えたい
— 医師を目指したきっかけについて教えてください。
最初は単純なことがきっかけでした。小学校2年生の時、隣の席の子が看護師になりたいと言っているのを聞いて、じゃあ、僕は医者になろうと思ったんですね。家に帰って、「将来は医者になる」と言ったら、家族みんなが喜んでくれて。うちは母子家庭だったので、母も嬉しかったのだと思います。「頑張れ」って応援してくれました。
あと、将来は人のためになる仕事をしたいと思っていたんです。人助け、人のために行動することが苦ではなくて、むしろやりがいがある。そう感じていたので、医師を目指すことは性に合っていました。実際に医師になってみて、やはりとてもやりがいがあったので。医師を志して後悔したことは一度もないです。
— 在宅医療に進まれたきっかけについて教えてください。
研修医の時に、腫瘍内科を中心に経験を積んでいたので、がん患者さんと接する機会がとても多く、在宅医療に関心を持つきっかけとなりました。
がん患者さんの中には、在宅で最期を迎えたいと思っている方がいらっしゃいます。これは患者さんにとって、人生最後の願いなんですね。その願いを叶える力になりたい。そう思って在宅医療の道に進むことを決めました。
よき医療は患者さんを理解することから始まる
— 実際に在宅医療の道に進まれて感じたことは何でしょうか。
患者さんが幸せになるためには、医療の問題を解決するだけでは十分でないということを感じています。医療的なこと、社会的なこと、家族との人間関係といった多方面から、患者さんが抱える問題を全体的に捉えないといけないと思っています。
これからの高齢社会で、在宅医療のニーズはきっと高まってくるはずなので、私たちは質の高い在宅医療を提供できるように、努力していかなければならない。そのためにも、人や社会を俯瞰的に捉え、在宅医療を通じて、人々の最大公約数的な幸福を実現していきたいです。
時々、患者さんから「どこの病院とも相性が合わなくて困っている」という相談を受けることがあるんですね。私はそういった方たちを救っていきたいです。どこの病院とも合わないと言っているけれど、まず、この方はどういった方なのか。困っている背景には何があるのか。患者さんのことをちゃんと見て理解していくことを大切にしています。
「医は仁術なり」という言葉がありますが、患者さんのことを見て、話を聞くことが医療の基本。その王道を行くのが在宅医療だと私は思います。
高齢社会のニーズに応えていくためには
— 在宅医療の課題はどこにあると思われますか。
今の日本は、経済的問題や身寄りのない方の老後問題など、様々なニーズが増えていますが、社会保障がまだ追いついていないのが現状です。社会構造が変化する中で、多様な問題を解決していかなければなりません。これからは官民が連携して、国、地域と医療機関が密接に連携していく必要性が、ますます高まってくると思います。
そのためには、私たち医療現場も、外に向かってどんどん声を上げていかなければいけないと思っています。在宅医療についても、もっと社会全体で考えていくべきではないかと感じています。
在宅医療で、安心できる医療を届けていきたい
— 目指されている在宅医療のあり方について教えてください。
私は在宅医療をやっていますが、在宅で療養することが一番いい選択肢だと思っているわけではないんです。私が思う理想的な医療の形は、病院、施設、家、どこにいても患者さん本人が過ごしたい環境で、安心して療養できる、安心して最期を迎えることができる環境づくりだと思っています。
療養中は様々な不安が出てきますが、患者さんに寄り添うことで、その不安を安心に変えていく。そのお手伝いをできるのが在宅医療です。在宅医療をベースに、場合によっては施設や病院とも連携しながら、患者さんにとって一番安心できる医療を提供します。在宅医療によって、本人の望む場所で、安心を積み重ねていくことを実現していきたいです。
また、在宅医療が社会インフラのようなものとして、高齢社会問題の一つの解決策となっていけばいいなと思っています。そのためには、在宅医療による正しい医療を届けていかなければなりません。不適切なケアで、不快な思いや苦しい思いをする方を出さない。無責任に病院や施設に患者さんを押し付けるようなことはあってはならないです。ソーシャルワークをする際も、患者さん本人の意思をきちんと尊重する。在宅医療難民を生みださないよう、私たちも努力しなければいけないところです。
— 最後に、地域住民の方へメッセージをお願いします。
在宅医療には、まだあまり知られていないことも多く、利用することに不安がある方も多いのではないかと思います。在宅医療は、患者さんと身近な関係で、お話をよく聞き、丁寧に診察をしていく医療です。その姿は、昔ながらの古き良きお医者さんに近いかもしれません。
私たちは、皆さんが安心して在宅で療養しながら過ごしていけるよう、精一杯頑張りますので、不安なことがあれば何でも気軽にご相談ください。

ひなた在宅クリニック山王
〒140-0013
東京都品川区南大井6-24-6 DAITOビル3階
TEL:03-6429-8671/FAX:03-6429-8672
診療時間 9:00~18:00
休診日 土曜・日曜・祝日
※土日・夜間も往診対応は可能です

WEB:https://hinata-clinic.net/
田代和馬院長のプロフィール
経歴:
平成元年 宮崎市生まれ 乙女座 A型
内科学会認定内科医
2014年 宮崎大学医学部卒業
2016年 沖縄県立中部病院初期研修修了、緩和ケア研修会修了
2018年 沖縄県立中部病院後期研修修了、認定内科医
2019年 沖縄県立北部病院内科、ECFMG Certificate
2019年 ひなた在宅クリニック山王 院長
関連リンク: