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【PICK UP!在宅医療機関 005】clapping hands 角祥太郎代表 最終更新日:2024/12/22

【PICK UP!在宅医療機関 005】clapping hands 角祥太郎代表
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第5回目は2017年に「株式会社clapping hands」を設立された角祥太郎代表です。設立までの経緯、事業の特長そして今後の訪問歯科にかける思いを熱く語っていただきました。
訪問歯科の経験から
— 訪問歯科を行うようになった経緯を教えてください。
私の出身は石川県の輪島塗の職人が多い地域で、周りにはアートに携わる方が多くいました。母親が絵描きをしていましたので、その環境のせいか自分も将来はアート関係の仕事をしようと思っていました。そんな時に歯科医をしている父親から「国家資格を持ってからでも、アートの仕事はできるぞ」と勧められ、その流れで歯科医を目指しました。
博士課程修了後は、千葉県の医療法人社団海星会で勤務医になりました。そこの法人が訪問歯科にも注力しており、私が入職時には訪問車が4台ありました。医院と訪問の診療を交代制で行い、どんどん訪問歯科に力を入れていこうという方針だったので、勤めて数年後には約50の高齢者施設を6台ほどの訪問車で回っていました。
入職5年目に副理事長になりましたが、訪問歯科診療にはやりがいや楽しさを感じており、十数年間ずっと続けています。しかし、患者さんやそのご家族さんとのコミュニケーション、職場や業界の労働環境、提供している医療のことなど考えさせられることが多くありました。
訪問歯科をはじめたころ
— 経営者として訪問歯科を行う上での課題を教えてください。
訪問歯科は介護支援専門員(ケアマネージャー、以下ケアマネ)さんに患者を紹介してもらうところから始まります。そのため、営業的な課題からケアマネさんを口腔ケアに目覚めさせることが大切です。ファッションに無頓着な人がファッションアドバイスをできないのと同じように、口腔ケアに意識の低いケアマネさんは患者の口の中のことまで意識していないのです。まず、ケアマネさんに歯のメンテナンスを受けてもらい、歯のメンテナンスをするのは当たり前と思ってもらえるように教育をします。そうしないと必要な治療ができるようになりません。
ケアマネさんの営業は、ケアマネさんがまず患者さんになってくれる、メンテナンスに通ってくれるようにならないと難しいです。
もう一つが内部的な課題で訪問歯科を行うスタッフの雰囲気と環境を整えることです。認知症の方は特に感じたりが敏感で、近くの家族の方もやっぱり感じているんです。結構雰囲気悪くて愛想悪い人が訪問して機嫌悪くケアしたら絶対わかるんですよ。歯科医院のスタッフも結構大事じゃないかなって思っています。
いくらいい治療をしても、雰囲気が悪かったり、機嫌悪いスタッフが来たら、紹介もしたくないと思います。「どうやって歯ブラシ入れればいいですか?」の質問すらしたくなくなっちゃうので、「それって医療ですか?」って言われたら、僕は「医療じゃないよ!」と思います。そういう意味で雰囲気と環境を整えることが大事です。
— 噛み合わせが趣味
私が歯科を面白いなって目覚めたきっかけが被せ物だったんです。特に噛み合わせが壊れちゃってる咬合不全とか歯を抜かず見残すみたいな治療が好きでした。噛み合わせのバランスとか前歯をきれいにするみたいな治療にすごく力を入れています。在宅歯科とかの治療は入れ歯で機能を回復させる治療が多くて、訪問歯科を始めたらほとんど皆さん入れ歯なので、そういうのがいっぱい診れて天職だと思いました。
そういう思いもあって、副理事長になった同じ年に歯科技工(入れ歯などを作る)所を持つ法人の株式会社DENRICHEの代表取締役になりました。
— 会社設立を考えるようになったきっかけを教えてください。
私には「メンタル残高」と定義しているものがあります。
内部的な課題を解決できずに5年ほど訪問歯科を続けていました。その頃に、訪問歯科と並行して講演依頼(歯医者に教える歯医者みたいな仕事)がたまたま増えました。そんな活動をしながらも、働く人たちの雰囲気と環境を整えないと医療行為は難しいと思っていました。治す前に患者さん、ご家族、ヘルパーさん、ケアマネさんの教育をしなきゃいけなくて、教育の手前で患者さんに安心・納得・信頼してもらう【つかみ】みたいなものがあると思っています。そのつかみの手前に働く人たちのメンタル残高がリッチな状態じゃないと難しいんです。
また、「治療はできるけど、医療として成り立っていないんじゃないか」とか。「直せるけど、スタッフが勤めづらそうだな」とか。「歯科の治療としては正しいけど、ご家族とか患者さんの気持ちは置いてってんじゃないか」とか。「治療はできるけど、医療としてどうなんだろう」と思うことは結構あり、葛藤したり難しかったりしました。医療法人では共同経営をしているからある意味外資系社長みたいな言うこと聞かなきゃいけない立場なので、モヤモヤをしながら現場回ったりしていました。
そういった経験の中で知見を積み、メンタル残高がリッチな状態でいられるお手伝いをしようと考えたのが株式会社clapping hannds設立のきっかけの1つです。
株式会社clapping handsについて
— 事業内容について教えてください。
私が設立した株式会社clapping handsは、「子供が将来、寝たきりにならない未来を作る」ことを目標しています。歯科医師としての会社ではなく歯科医院のコンサルタント会社です。その具体的な活動として、訪問歯科の現場で得た経験を基に、働く環境を整え、医療の質を向上させる仕組み作りを行っています。その活動として、書籍の出版(3冊)や年200回以上の講演会、歯科医院等のスタッフセミナーや歯科メーカー社員向けに研修を行っています。時には動物病院から講演の依頼を頂くことがあり、私自身驚いています。
講演会にて
— 講演やスタッフ研修の内容について教えてください。
講演は施設向け、歯科医師向け等いろいろあります。施設向けの講演では、摂食嚥下や解剖学の話をします。歯科医向けでは、依頼のあった歯科医院で講演を行います。『予防歯科ではエンジョイして待ってくれる患者さんを作ることが大事』、『働いているスタッフの環境改善とメンタルの残高を上げる』、『もっといい仕事ができるようファシリテーションする』というようなお話をしています。院内のノリ感、雰囲気が上がるお手伝いをして、それは訪問歯科にもつながるところがあります。
スタッフ研修では提案型ミーティングをしてもらいます。内容は歯科医院の課題ごとに違いますが、研修の結果として、離職率の減少、スタッフの意識改革によるマネージャー業務の担当やコーチングスキルやコミュニケーションスキルの学習などプラスの効果として表れています。
— どのようなお悩みから講演や研修を相談されることが多いですか?
開業している歯科医の悩みの1つにスタッフのマネジメントがあります。「最近、寿退社が多いと思っていたら近所の歯科医院で寿退社したスタッフが働いていた。」みたいなことは、よく相談されます。歯科医院の院長もチームも自分が育った時のマネジメントしか知らなくて、高度経済成長バリバリの時の人は「こうだからこうしてください!」で、動くのですけど、若いスタッフは外圧に弱くて、自分がここで発言してストレスになるくらいなら辞めようとなるんです。本当に一言の外圧で辞めようとなります。治療の現場では医師の指示でスタッフが動くというトップダウンの関係ですが、歯科医院を会社と考え、社長と従業員という関係になるとトップダウンの指示だけでは会社として立ち行かなくなっているのが現状です。
しかし、彼らは情報を扱うのがとても上手です。その情報を基にしてとても仕事をします。なので、ミーティングなどを通して課題を出して問いを投げかけます。すると、彼らは自身で考え・行動するようになります。それを積み重ねることでチームは組織として成長していくのです。
教育実習にて
訪問歯科の未来について
— 角先生が目指している訪問歯科について教えてください。
今後の訪問歯科への提言は「スタッフさんたちこそがエンジョイし、メンタルの残高をリッチに保ちながら訪問することがすごく大事」と言うことです。それができる訪問歯科が増えて楽しそうな業界にしていきたいです。
「歯科医師といえば、この人!」と挙げられる先生があまりいなくて、インフルエンサーみたいに頑張ってる人はいますけど、業界が発展する時には、道先案内人のような人が必要だと思います。そこで僕が有名になりたいっていうよりもいい仕事をみんなしているんだから、それをもっとなんか滑らかに世の中の人に理解されてほしいなって思っています。
— 最後に読者の皆さんに一言お願いします。
一般の方には、「ちょっと歯を見てくんないかな?」みたいに軽い気持ちで呼んでください。そしたら、おじいちゃんおばあちゃんの家に来たみたいな気持ちで行くからっていう事です。軽い気持ちで人と会えること、それがフレイルの第一段階の予防になります。人と会いたくないってところから始まるのがフレイルなので。
歯医者の特に訪問歯科の方には、今後、今よりも必要とされる仕事です。「味を出して、研鑽し続けて喜ばれて行きましょう」です。

株式会社 clapping hands
〒263-0044
千葉県千葉市稲毛区小中台町365-9
角祥太郎代表のプロフィール
経歴:
2005年 東京歯科大学 卒業
2009年 東京歯科大学解剖学講座にて博士課程 修了
2009年 千葉県の医療法人海星会 勤務
2013年 同法人副理事長・株式会社DENRICHE代表取締役 就任
2017年 株式会社clapping hands 設立
所属・資格:
歯科医師 / 歯学博士
株式会社clapping hands 代表取締役