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【PICK UP!在宅医療機関 006】りおん薬局 平井文朗代表 最終更新日:2024/12/25

【PICK UP!在宅医療機関 006】りおん薬局 平井文朗代表
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第6回目は千葉県柏市、埼玉県新座市にて「りおん薬局」を運営されている薬剤師平井文朗代表です。これまでの歩み、りおん薬局やこれからの薬剤師像に向ける思いを熱く語っていただきました。
挫折から学ぶ
— 薬学を志すきっかけを教えてください。
大阪生まれの私は、高校時代まで競技スキーに打ち込む日々を送っていました。しかし、怪我によりスキーを断念。薬の力で痛みから解放された経験が、私を薬学の道へと導きました。
大学2回生の頃には、とある外資系の製薬会社(以下、A社)に入りたいという目標を明確に持っていました。それ以外の会社には行かない、と心に決めるほどでした。私は就職活動前から製薬企業を徹底的に調べ上げ、数十社にわたる情報を集めました。その結果、やはりA社以外に行きたい会社はないと確信しました。そして、A社への就職を叶えました。
就職後、第1志望の抗がん剤領域で働きたいと願い、研修に全力で取り組みました。しかし、実際に配属されたのはプライマリー領域の呼吸器麻酔分野でした。自分の思いを実現できず、正直悔しい思いがありました。
希望していた配属を得られなかった悔しさをバネに、誰よりも勉強しました。通常であれば一度で合格する薬剤師国家試験も、私は2度目の挑戦で合格するという状況でした。しかし、この働きながら勉強を続けるスタイルが、いつしか私にとって当たり前のものとなっていました。そして、この努力を積み重ねる習慣は、今も変わることなく続いています。
不屈の社会人生活
— MRをされていた頃のエピソードを教えてください。
A社での広島時代の3年間は、単に麻酔薬を売るだけではなく、麻酔科や呼吸器科の先生方と深く関わりながら、多くのことを学ばせていただきました。先生方と密に連携しながら働いた日々は、自分の成長にとって大きな財産となりました。
2年目の夏頃に異動となり、そこで出会ったB先生が「これからは在宅医療が注目される時代だ」と話してくださり、初めてその重要性に気づかされました。当時は在宅医療についてほとんど知りませんでしたが、その先生の活動に触れ、訪問診療や往診の現場について多くのことを教えていただきました。
そんな時、私の祖母が倒れるという出来事が起きました。祖母が管だらけでベッドに横になる状況で、親から投与されている薬について質問されても自分の専門分野外で答えられず、無力さと悔しさを痛感しました。その思いをB先生に伝えたところ、「そんなに悔しいなら、俺についてこい」と言われ、土曜日を利用してB先生の往診に同行させていただくことになりました。いわゆるカバン持ちとして先生の活動を間近で見ながら、多くの知識を吸収しました。そして、薬剤師としての道を考えるようになり、MRを3年で卒業、社会人4年目に名古屋で薬剤師として勤務をはじめました。
— 薬剤師をされていた頃のエピソードを教えてください。
名古屋で薬剤師を経験したのち、大阪に戻り、当時珍しかった在宅専門薬局に就職しました。そこで在宅医療の現場に本格的に携わることになりました。名古屋での経験を踏まえ、ある程度は対応できると思っていましたが、現実はそう甘くありませんでした。特に、施設在宅医療で医師と同行する業務では、患者さん一人一人の状況に深く入り込む必要があり、その責任の重さに押しつぶされそうになる日々が続きました。
その中で、C先生との出会いが私の転機となりました。C先生は、訪問医療の現場で薬剤師が医師にどのような貢献ができるのかについて非常に厳しい意見を持っていました。ある日、私が持っていた薬のガイドブックを手に取り、「薬剤師が医師の隣に来て何ができるんだ?お前の知識はこれ以上のものか?」と厳しい言葉を浴びせられました。この経験は非常に悔しく、以降、私はこの本を徹底的に読み込みました。折り曲げたり、書き込んだりして、毎年2-3冊は買い替えるほど勉強しました。そして、目の前の患者さんが、どのような人生を歩まれて、なぜいまの薬を必要としていているのか、薬学書だけの知識に偏らないように、薬剤師としての知識を深めることに注力しました。
開業 りおん薬局
— 立ち上げするにあたってどのような想いがありましたか?
人生の一つの転機となったのが結婚と子どもの誕生でした。その頃、在宅医療に携わっていた私は、多い時で200人~300人もの患者さんを担当していました。ただ、人数が多すぎて、一人ひとりにじっくり向き合う余裕がなくなってしまい、薬を「ただ渡すだけ」という日々が続いていました。無理がたたり、ある日ついに体調を崩し、倒れてしまいました。訪問車の中で点滴を受けながら仕事を続けた日もありましたが、そんな私を見た妻から「体を大切にしてほしい」と言われ、自分自身の働き方を見つめ直すことになりました。
りおん薬局のロゴマーク
そこで、「自分のやりたいこととは何か」を深く考えました。多くの在宅患者さんやご家族、多職種の方から学ばせてもらった経験から、自分一人で無理をして多くの患者さんを担当するのではなく、地域の患者さんを大切にできる薬剤師を育てることに注力しようと思い立ちました。地域の医療とは、医師や看護師だけではなくて、薬剤師でも変化を起こすことできると思いました。10人でも、100人でも、私の知識や経験を伝え、想いをもった薬剤師を育てることが、地域の医療に大きな変化をもたらすと考えたのです。
この決意を胸に、現場を回りながら講演や講義活動を続け、人材育成に力を入れるようになりました。MR時代に培ったプレゼン能力がここで活用でき、教えることの難しさとやりがいを感じながら、点と点が線になり、それが面となり、やがて広がりを持つようになるプロセスを体感しました。
2016年、長年の経験と想いと共に独立を決意しました。開業場所を選ぶ際には、自分が住んでいたエリア周辺のクリニックや薬局を多く調べ、最適な場所を探しました。運よく競合薬局のいないエリアのクリニックの2階が空いており、そこに決めました。
こうして2017年2月に開業し、紆余曲折を経ながらも「地域に根ざした、子どもからお年寄りまでをカバーできる薬局」を作るという夢を具体化させました。私の想いに賛同してくれた薬剤師と2名でのスタートでした。
— サービス内容・体制について
【りおん薬局セブンパークアリオ柏店】(千葉県)
2022年10月の開局以来、セブンパークアリオ柏店は、地域の皆さまの健康をサポートする拠点として、日々の薬局活動に当たっています。当薬局の大きな特徴は、何と言ってもショッピングモールという立地にあることでしょう。内科、小児科、皮膚科、眼科、歯科など、様々な診療科の処方せんはもちろん、近隣地域の処方せんも幅広くお受けしています。
年始を除き、土日祝日も休まず営業しているため、患者さんはいつでも安心してご利用いただけます。処方せんだけでなく、サプリメントやアロマ、消毒用品など、健康に役立つ商品も取り揃えております。また、薬剤師による在宅訪問も実施しており、ご自宅で療養されている患者さんにも、薬剤師がお伺いし、服薬指導や健康相談を実施しています。
りおん薬局セブンパークアリオ柏店
【りおん薬局新座志木店】(埼玉県)
2023年4月の開局以来、新座志木店は在宅医療に特化した薬局として、地域に貢献してまいりました。現在では、200名を超える在宅患者さんの健康管理をサポートしています。
当薬局が力を入れているのは、クリーンベンチによる無菌調整や医療用麻薬の調整など、高度な薬学的ケアです。また、新座市だけでなく、志木市、朝霞市、和光市、さらには川越市、所沢市、練馬区、板橋区など、広範囲の医療機関、介護施設と連携し、薬剤師による訪問を実施しています。
特に、店舗の営業時間外でも、在宅患者さんに対して24時間365日の対応体制を構築していることが、当薬局の大きな強みです。訪問薬局として当たり前のこの体制も、地域の薬局にとってはまだまだ課題の1つと感じています。日曜日や祝日には、患者さんの薬を受けつけているいつもの薬局と連絡がとれないので訪問をお願いしたい、といった依頼も医療機関から多くいただいています。医療機関や患者さんだけでなく、介護福祉関係者の皆さまからのご相談も随時受けつけており、地域全体の医療の質向上に貢献したいと考えています。
りおん薬局新座志木店
— 特長について
セブンパークアリオ柏店と新座志木店の2店舗でスタッフは20名です。当薬局では、シフト制を導入していますが、遅刻、早退、欠席に関しても、個人の状況を優先できるよう、柔軟な働き方を推奨しています。
従業員には、自ら学び、考え、行動するということを期待しています。体調不良や家族の事情など、誰しもが予期せぬ事態に直面することがあるからです。独身者も既婚者も、お互いの状況を理解し合い、協力し合える職場環境づくりを目指しています。
薬局という性質上、薬剤師がいないと業務が成り立たないため、薬剤師の確保は最優先事項です。そのため、従業員同士で協力し、シフト調整を行っています。万が一、薬剤師が不足する場合は、私やマネージャーが現場に駆けつけ、スタッフに無理をさせないようにしています。
サービスの平準化を目指して
— 自社の課題とそれに向けての展開について教えてください。
自社の課題はいくつかあり、スタッフのモチベーション向上や継続的なサービスの平準化などに取り組んでいます。
具体的には、継続的なサービス提供にあたっての平準化は、質の高いサービスを提供する一方で過剰なサービスは避けるべきとしています。自ら学び、考え、行動するというのが軸なんですけれども、一つに過剰なサービスは継続性に欠けるということです。
やろうと思えばいくらでも30分でも1時間でもお話しできます。ただ、それがずっとだと継続できなくなるから、やっぱり「限られた時間の中で必要な情報をいただいて、共有して、その患者さんにとって良いサービスを提供できるように」と、「私たちは薬局の薬剤師と薬剤師でない人も、薬局のスタッフとして患者さんと関わっていく」というところで過剰なサービスをしないことをスタッフに伝えています。
— サービスを『粘土』に例える
今後の薬局業界は大手薬局と私たちのような小規模薬局との2極化が進むと考えています。そこで私たちは当薬局の強みとして、在宅医療特化のような当薬局ならではの強みを明確にし、医療介護福祉の関係者や患者さんにアピールし、患者さん一人ひとりの状況に合わせて、サービスをカスタマイズできる柔軟な対応を行い、地域密着で地域の医療機関や介護施設との連携を強化し、地域に根ざした薬局を目指します。
私が大手薬局等に勤めていた経験もあり、当薬局のサービスを『粘土』に例えています。粘土は、様々な形に変形でき、患者さんに合わせて柔軟に対応できることを意味します。しかし、粘土の量は無限ではありません。限られた時間と資源の中で、患者さまのニーズに最も適した形に粘土を形作る必要があります。
— 平井代表の今後の展望について語ってください。
今後の展望としては、薬局という枠にとらわれず、地域社会に貢献できる薬剤師を育成したいと考えています。
まずは、2024年から学校薬剤師を始めました。これは小学校に当薬局の管理薬剤師が行って、学校の中のお水の清潔さや空気中の二酸化炭素の濃度を測ったり、照度(教室の明るさ)が問題ないかの検査を行うものになります。
また、2025年から当薬局にて薬学部生を受け入れて、実務実習を行う予定です。実務実習は薬学部生の教育プログラムの一環であり、薬学教育にも貢献していきたいと思っています。私たちの想いを薬学部生に触れてもらい、今後の薬学部生、薬剤師として活動に活かしてもらいたいです。
訪問薬局の未来
— 現状の課題と目指すべき未来像について教えてください。
訪問薬局の現状としては、まだまだ課題がたくさんあります。特に、患者さんの情報をどう共有し、より良いケアを提供していくかが大きな課題です。理想の訪問薬局は、薬剤師が医療だけでなく、介護や福祉の知識も活かして、患者さん一人ひとりに合わせた柔軟な対応ができる場所です。薬剤師は、単に薬を届けるだけでなく、患者さんの生活全体をサポートする存在になれると考えています。
そして、在宅医療に関しても、もっと大きな視点で捉えていきたいです。一つの薬局だけで完結するのではなく、地域全体の薬局が連携して、より多くの在宅患者さんをサポートできるようなネットワークを構築したいです。
— 最後に、地域住民へのメッセージをどうぞ!
薬局の薬剤師は、気軽に相談できる、身近な医療の資格者です。地域には、様々なタイプの薬局があります。年齢や経験、店舗の雰囲気など、あなたに合った薬局をぜひ見つけてください。
かかりつけ薬局というより、あなたの『お気に入り薬局』を見つけることを勧めます。薬剤師との相性、店舗の雰囲気、家からの距離など、あなたにとって大切な要素は人それぞれです。薬剤師は医療に関する知識が豊富なので、安心して相談できます。
病気になってからではなく、健康なうちから、気になることがあれば気軽に立ち寄ってみてください。薬局は、あなたの健康をサポートしてくれるパートナーです。きっと、あなたにとっての『最高の薬局=お気に入り薬局』が見つかりますよ。

りおん薬局
りおん薬局 セブンパークアリオ柏店
〒277-0922
千葉県柏市大島田1-6-1 セブンパークアリオ柏2F (229-1)
TEL:04-7197-3364
営業時間 10:00~19:00 年中無休(年末年始除く)
りおん薬局 新座志木店
〒352-0001
埼玉県新座市東北2-14-8
TEL:048-424-2164
営業時間 月〜金 10:00~19:00、土 10:00~15:00
定休日 日・祝
WEB:https://lionpharmacy-fine.com/
平井文朗代表のプロフィール
経歴:
2005年 東京薬科大学 卒業
2017年 株式会社FiNE 設立/りおん薬局(東京都板橋区)開局
2022年 りおん薬局セブンパークアリオ柏店 開局
2023年 りおん薬局新座志木店 開局
2024年 東京都板橋区の薬局を譲渡/本社を千葉県柏市に移転
2025年 新規開局予定