【PICK UP!在宅医療機関 010】厚誠会歯科 清水麻理子訪問診療部長 理事 最終更新日:2025/01/11
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第9回目は神奈川県小田急沿線上にグループ展開している「厚誠会歯科」にて訪問歯科を中心に診療されている清水麻理子訪問診療部長です。厚誠会の歴史や特長、歯科診療や訪問歯科にかける思いを熱く語っていただきました。
これまで、そして現在
— なぜ、歯科医を目指すことになったのか教えてください。
幼いころから物を作ることが好きで、折紙やビーズだけでなく、幼稚園のころからパッチワークをしていました。小学校では図工の時間が好きでした。高校生の時にそのエピソードを知った家庭教師の先生から「絶対、歯医者さん向いているよ」と言われたことが、歯科医を目指すきっかけでしたね。私自身、その時はピンとこなかったのですが、今では天職だと思っています。
— 物づくりと研究に対する探求心はどこから生まれたのですか。
大学受験の際、歯学部だけを志望したわけではありませんでした。自然や動物も好きで、獣医師や生物生産、生命応用、海洋学部など、進路に迷いました。手に職をつけるべきか、自分のやりたいことは何か、と深く考えた先に研究職をしたいという気持ちがありました。自宅で金魚やめだか、庭のカエルや虫を観察するのが好きだったからだと思います。歯科医になるために勉強をつづけながら、大学生活中に研究活動をするのは大変なことだと思いましたが、進むべき道かなと考え、歯学部に進むことを決心したのです。
長野での大学生活はすごく楽しかったです。自然豊かな広大なキャンパスの中で、講師の先生達が熱心に教えてくれる環境でした。そして、学生時代にマウスの研究活動をはじめ、下顎骨の成長時にメッケル軟骨というのが出現する事を発見し、論文を書きました。その後、無事に国家試験に合格し、歯科医となりました。
— 研修医時代や、厚誠会との出会いを教えてください。
大学卒業後、研修医期間は母校に勤めました。主に入れ歯の勉強をしていました。翌年に、以前から目指していた歯列矯正の医局に入りました。しかし歯の欠損状態によっては矯正治療だけでは噛み合わせが完成しないこともあり、同時期、大学院にも通って研究もしていたのですが、東京方面に移籍し矯正と入れ歯と噛み合わせを総合的に勉強をすることにしました。その中で、厚誠会歯科でのアルバイトを勧められ、アルバイトから常勤医にと誘われて翌年正社員になり、現在に至っています。
— 厚誠会には、どのような歴史がありますか。
開業とほぼ同時の40年前から訪問診療を行っています。社会において弱い立場にある方たちにも医療の光を当てるべきだという考えから「健康は全ての人に」という理念を持ち日々の診療を行っています。当時は障がいのある方や、自力で診療に来られない方を送迎し、治療をしていました。
また、日本で初めて日曜診療や海外進出もし、当時はメディアにも取り上げられ話題になりました。国内でも小田急沿線上に医院を増やし、その後、歯科医の教育にも力をいれるようになりました。大学から講師の先生が来られて、アカデミックな指導を受ける体制となりました。直接指導を受ける事でさらなる知識や技術の向上となり、その後の診療をする上での自分のベースとなりましたので、とても感謝しています。
訪問診療のみならず、ライフワークの充実を目指して
— 診療の枠を飛び越えた活動も活発に行っているようですね。
入社してから数年後に紹介を受けてMEDというプレゼンのイベントに参加しました。そこで魂を揺さぶられる話があり、歯科医になってよかったと初めて心から思える機会がありました。それが自分の転機だったと思います。
MEDは、近未来の日本の医療を良くしようと孤軍奮闘している方が発信するプレゼンの場です。そこで摂食嚥下のカリスマ看護師小山珠美さん(NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」にご出演)がプレゼンをされていたのですが、ここでのご縁で、現在わたしは伊勢原協同病院にて小山さんと連携し「食べる」にこだわって患者さんを診させて頂いています。
MEDは一回目は聴衆で参加し、二回目に実践プレゼンターとなり、その実践プレゼンターの中に同郷の医師と歯科医がいて、3人で群馬のMEDを企画しようと盛り上がり、「MEDぐんま」を立ち上げ現在は4人の「チーム前橋」で毎年開催し、2025年で8回目を迎えます。
MEDぐんまは「チーム前橋」それぞれのライフワークの中で大きな部分を占めていて、1年をかけて構想を練っています。このような出会いや活動がわたしにとって大きなターニングポイントでした。
— 訪問診療の現状は、どのようなものなのでしょうか。
一般的に、訪問歯科診療は応急処置ぐらいだろうというイメージが強いと思うのですが、私は、外来と同等のクオリティでの訪問診療を目指しています。
厚誠会歯科は訪問歯科の長い歴史と実績から、機材や設備投資が充実しています。訪問車の中に、最新のレントゲンや歯を削る機材を積み、院内で滅菌した診療道具を積んで院内と遜色ない治療が可能となっています。虫歯が深くても、すぐに抜かずに外科処置をして残せる歯は残します。また合併症リスクが高い患者さんの治療は経過観察されがちですが、私はどちらかというと、積極的に治療を実践していきたいと考えています。その理由としては急性期で治療を受けている患者さんは治療期間により、痩せたりして入れ歯が合わなくなります。入れ歯が合わないと満足な食事ができない。食事ができないと回復が遅れる。それを防ぐために、早めに介入して、入れ歯の調整と食事の訓練をすることで、患者さんを早く回復させて退院してもらうことができるからです。
他には障がい者施設ではミールラウンドといって食事の状況を見させて頂き姿勢や食形態、食事のスピード、一口量、食器具などのアドバイスをさせてもらっています。これからは嚥下にも更に力を入れていきたいと考えています。
次なる実践、高みを目指して
— 実際の現場で苦労されていることや、今後、訪問診療で実践していきたいことを教えてください。
現在厚誠会歯科の訪問コース数は1週間で、23コースあり、30人くらいのスタッフで対応しています。現在、わたしはそのうち4コースを担当しています。訪問診療はいわゆる「3K」で嫌厭されがちですが、むしろ私はポジティブな感覚でした。大変な状況下でどのように工夫するかを考え、それが結果に繋がった時は歯科医冥利につきますね。
ただ、この訪問歯科診療は社会からも必要とされ需要もありますが、認知度はまだ低く、本当に治療が必要な方達に対して情報が伝わっていない点が悔しいです。訪問内容はこれからの時代、患者さんやニーズに伴い変化が大きいと思います。だからこそ、これからも地道ながらも、積極的に情報を発信していきたいです。
食は本当に大事で、残った歯の状況により、難しい噛み合わせの方がいます。そのような方は、治療に苦労されても入れ歯がうまく合わせられなくて、食事が困難になります。そのような方にももう一度食事の楽しさを味わって頂けたら本望ですね。
— 次のステップに向け、新たに取り組まれていることや将来の展望を教えてください
最近勉強しているのが、マイクロスコープによる顕微鏡歯科治療で、今後極めていきたいと考えています。ミクロの世界での治療を正確に行う事でこれまでは治すことが難しいと言われていた歯も救えたり、機能面も持ち合わせた審美治療も可能となります。
人生を時間軸で捉えた時に、生まれた時からお年を召されるまでの間、姿勢や嚥下、咬合、虫歯、歯周病などが常に関わってきますが、世代毎にそれらのトータルサポートが出来るよう向き合っていきたいです。大変な状況になる前に何ができるのかを遡って考え、目の前の患者さんに今できることを外来と訪問とからハイブリッドで提供していけたらと思います。
また、今後も外部活動として、MEDプレゼンテーションの継続や、患者さんに向けた啓発活動、市民公開講座や健康クラブなどでの講演活動をしていきたいです。
最後になりますが、加齢や病気、障がいなどで外出の機会など楽しみが減ってしまうことがあるかもしれません。しかしそうなった時でも食べる喜びや楽しみは残りますので、患者さんやご家族に寄り添いながら守っていきたいです。特に訪問歯科の重要性をより多くの方に理解して頂けるよう日々、コミュニケーションを大切に知識・技術的にも切磋琢磨していきたいです。
医療法人社団 厚誠会歯科
〒243-0014
神奈川県厚木市旭町2-8-21 YSビル 3階
医療法人社団 厚誠会
TEL:046-229-2405
WEB:https://koseikai.com/
厚誠会歯科 新百合ヶ丘
厚誠会歯科 相模大野
厚誠会歯科 海老名
厚誠会歯科 本厚木
厚誠会歯科 秦野
訪問診療部
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厚誠会歯科 新百合ヶ丘
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厚誠会歯科 秦野
訪問診療部
清水麻理子訪問診療部長のプロフィール
経歴:
松本歯科大学歯学部卒業
松本歯科大学歯科矯正学入局
東京歯科大学臨床専門専修科生入学
厚誠会歯科入社
厚誠会歯科往診部長就任
厚誠会歯科訪問診療部長就任
厚誠会歯科理事就任
厚誠会歯科秦野院長就任
松本歯科大学歯学部卒業
松本歯科大学歯科矯正学入局
東京歯科大学臨床専門専修科生入学
厚誠会歯科入社
厚誠会歯科往診部長就任
厚誠会歯科訪問診療部長就任
厚誠会歯科理事就任
厚誠会歯科秦野院長就任