【PICK UP!在宅医療機関 011】つなぐ薬局 山口峻平代表 最終更新日:2025/01/21
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第11回目は千葉県柏市、東京都足立区など5拠点にて「つなぐ薬局」を運営されている薬剤師山口峻平代表です。これまでの歩み、つなぐ薬局やこれからの薬剤師像に向ける思いを熱く語っていただきました。
病棟で勤務する薬剤師に憧れて
— ご出身はどちらですか。
千葉県松戸市で生まれ、小学5年生の時に足立区へ引っ越してきました。それから15年以上この街で暮らしていました。子どもの頃から和菓子が大好きで、将来は和菓子職人になりたいと夢見ていました。今思えば、懐かしい思い出です。
— 薬剤師を目指したきっかけは何でしょうか。
高校2年生の時、医療特集の番組を観たことが、薬剤師を志すきっかけとなりました。それまでは建築関係の道を漠然と考えていたのですが、番組で描かれていたチーム医療の現場で活躍する薬剤師の姿に強く心を動かされたんです。医師や看護師と連携しながら、患者さんの治療に関わる薬剤師の仕事に魅力を感じ、帝京大学薬学部への進学を決意しました。
— 大学卒業後のキャリアについて教えてください。
新卒時は、中野区の小規模な総合病院に就職しました。大学病院という選択肢もありましたが、小規模病院の方が幅広い症例に直接関われると考えたのです。内科、腎臓内科、外科など、様々な診療科で患者さんと向き合える環境で、医療人としての基礎を築くことができました。
2年間の経験を経て、より専門的なスキルを磨きたいと考え、杉並区の地域中核病院へ転職しました。そこでは病棟での薬剤管理指導や注射薬の調剤に加え、より専門性の高い抗がん剤の調製や緩和ケアにも携わることができました。多忙な毎日でしたが、素晴らしい仲間たちに支えられ、やりがいを持って仕事に取り組むことができました。
盟友と共に「つなぐ薬局」を創業
— 創業に至った経緯についてお聞かせください。
病棟薬剤師として働く中で、一つの課題が心に引っかかっていました。せっかく元気になって退院された患者さんが、薬の管理がうまくいかず再入院されるケースを何度も目にしてきたのです。「退院後も患者さんの服薬を支援できる仕組みが必要なのでは」。そんな想いが強くなり、在宅医療の道を模索し始めました。
そんな時期に、現在の共同創業者の山内と在宅医療について語り合う機会がありました。彼は千葉県柏市で在宅医療に取り組む薬局薬剤師でした。対話を重ねるうちに、二人の描く医療の未来が重なっていることに気づいたんです。「自分たちで新しい在宅医療の形を作っていこう」。そうして『つなぐ薬局』の構想が生まれました。
ただし、すぐに創業という決断はせず、準備期間を設けることにしました。共同経営とはいえ、それぞれが大切にしたい想いがあります。どのような薬局を目指すのか、どんなケアを提供していくのか。二人で時間をかけて議論を重ね、ビジョンを固めていきました。
「共同経営って大変じゃない?」とよく聞かれますが、実は山内とは大学時代からの親友で、二人三脚でここまでやってこられたのが何より心強いんです。お互いを100%信頼できる仲だからこそ、むしろ心強いパートナーとして一緒に会社を成長させられています。
「つなぐ」ことで患者さんの悩みを総合的に解決
— 薬局名である「つなぐ」に込められた思いとは何でしょうか。
「つなぐ」という薬局名には、私たちの理念が込められています。この名前は山内が提案してくれたのですが、単にお薬を提供するだけでなく、患者さんと必要な医療・介護サービスをつなぐ架け橋になりたいという想いが表現されています。
薬剤師としての専門性は大切にしながらも、医療機関や福祉施設との連携を深めることで、患者さんが抱える様々な悩みや課題に、より包括的に応えていきたい。そんな私たちの使命を、この「つなぐ」という言葉に込めています。
— 創業にまつわるエピソードについてお聞かせください。
一番の思い出は、一号店となる柏さくら台店の物件探しですね。ある先生から「自分の医院の二軒隣がもうすぐ空く」と教えていただいた物件に一目惚れしました。絶対にここで開局したいという強い思いから、オーナーさんに直接手紙を書いて熱意を伝えたんです。
その後、不動産屋さんに申し込みに行くと「この物件はすでに決まっています」と言われ、一瞬がっかりしたのですが、実はその借り手が私たち自身だったという。オーナーさんが私たちの想いを汲んで、すでに決めていてくださったんです。人との縁のありがたさを実感した、忘れられないエピソードです。その時は本当に嬉しかったですね。
— スタート時はどのような状況でしたか。
開局当時は、薬局による在宅医療自体があまり知られていない時期でした。医療機関の方々に私たちの役割を理解していただくところから始める必要があったんです。患者さんの状態変化にいち早く気づいて報告したり、服薬状況を細かく共有したり。そうした地道なコミュニケーションの積み重ねによって、少しずつ医療機関からの信頼を築いていくことができました。
実は医療機関の先生方も、在宅患者さんの日々の様子を詳しく知りたいというニーズを持っていらっしゃいました。特に服薬管理などの薬学的な面では、薬剤師からの積極的な提案を求められることも多く、そこで培った連携が私たちの強みになっています。
— その後の事業展開は、どのようにされたのでしょうか。
一号店の柏さくら台店では、外来と在宅医療の両方を手がけていましたが、患者さんの増加に伴い、在宅医療の需要が予想以上に高まってきました。そこで、より専門的なケアを提供するため、柏さくら台店は外来を中心とし、新たに在宅医療に特化した柏店を開設することにしました。
その後、地域のニーズに応える形で展開を進め、私の地元でもある足立区に足立店をオープンしました。足立区は高齢化率も比較的高く、在宅医療へのニーズを強く感じていた地域でしたので、開業の決断は自然な流れでした。さらに今年は我孫子店も新たにオープンし、着実に拠点を広げています。
薬剤師にはコミュニケーション能力が不可欠
— 貴社が抱えている課題などはありますか。
当社の課題は、薬剤師の教育にあります。特に在宅医療では、医療機関との円滑なコミュニケーション力が不可欠です。専門的な知識や技術はもちろんのこと、医療チームの一員として適切に情報を共有し、提案できる力を育てることに力を入れています。
また、この学びの機会を社内だけでなく、広く共有したいという思いから「ファーマシストキャンパス」という勉強会を主催しています。YouTubeチャンネルを通じて、様々な症例への対応方法や在宅医療のノウハウなど、実践的な内容を発信しています。多くの薬剤師の方々と知見を共有することで、在宅医療全体の質の向上につなげていきたいと考えています。
病気の子どもさんが自宅で過ごせる環境づくり
— 小児在宅医療にも注力されているのですね。
小児在宅医療は、日頃から連携している医師からの要望がきっかけでした。当初は私にとって未知の領域でしたので、制度を一から学び、クリニックの相談員さんから実践的なアドバイスをいただきながら、理解を深めていきました。
調べていく中で、小児在宅医療には大きな可能性があると感じました。特に重い病気を抱えたお子さんやご家族にとって、通院による負担は想像以上に大きいものです。在宅医療という形でサポートすることで、少しでもその負担を軽減できないかと考え、この分野にも挑戦することを決めました。
何より、お子さんとご家族が一緒に自宅で過ごせる時間を作れることに、大きなやりがいを感じています。つい先日も、生後すぐに入院していたお子さんの1歳の誕生日を、ご自宅でお祝いしたいというご家族の願いを叶えることができました。そういった瞬間に立ち会えることが、私たちの喜びでもあります。
専門性を備えた薬局でありたい
— 地域薬学ケア専門薬剤師認定制度について、教えてください。
地域薬学ケア専門薬剤師認定制度は、地域医療に必要となる広範な薬物療法に一定水準以上の実力を有し、現に地域医療・介護等の現場において活躍している薬局薬剤師を「地域薬学ケア専門薬剤師」として認定する目的で、2020年1月に発足しました。さらに、副領域として「がん」の専門性を有する「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」も認定します。
併せて、地域薬学ケア専門薬剤師の養成に必要な研修を実施するための「地域薬学ケア専門薬剤師研修施設(基幹施設と連携施設)」ならびに指導者資格である「地域薬学ケア指導薬剤師」を認定しています。
この資格を取得したい薬剤師さんが研修を行う研修施設となっています。認定を受けるためには症例報告や学会発表などが必要であり、簡単な道のりではないですが、将来を見据えると専門性が強みとなり、患者さんも安心して私たちの薬局を選んでくださると思います。現在、二名の者が認定を受けていますが、今後もっと伸ばしていきたいところであります。
— 今後の展望や夢についてお聞かせください。
「つなぐ」という名前に込めた想いをさらに広げていきたいと考えています。地域の薬局の皆さんと手を携え、在宅医療の輪を大きく育てていくことが私たちの夢です。
在宅医療を始めてみたいけれど、一歩を踏み出せない薬局さんも多いと聞きます。開始までの手順や、実際の運営方法など、私たちのノウハウを惜しみなく共有させていただきます。在宅医療に関する悩みや疑問点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に地域の在宅医療を支えていけたらと思います。
つなぐ薬局
[在宅訪問強化型薬局]
つなぐ薬局 柏
〒277-0014
千葉県柏市東1丁目2-45 サンライズイシド302号室
TEL:04-7136-1680
営業時間 平日 9:00~18:00 土曜 11:00~13:00
休日:日曜
〒277-0014
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休日:日曜
つなぐ薬局 足立
〒121-0816
東京都足立区梅島2丁目11-6 モリタコーポ東側1階
TEL:03-4285-6717
営業時間:平日 9:00~18:00 土曜 9:00~13:00
休日:日曜
〒121-0816
東京都足立区梅島2丁目11-6 モリタコーポ東側1階
TEL:03-4285-6717
営業時間:平日 9:00~18:00 土曜 9:00~13:00
休日:日曜
つなぐ薬局 我孫子
〒270-1143
千葉県我孫子市天王台1-5-3 千修ビル2階
TEL:04-7192-7328
営業時間:月・水:9:00~13:00
休日:上記以外の曜日・祝日
〒270-1143
千葉県我孫子市天王台1-5-3 千修ビル2階
TEL:04-7192-7328
営業時間:月・水:9:00~13:00
休日:上記以外の曜日・祝日
[薬局]
つなぐ薬局 柏さくら台
〒277-0012
千葉県柏市桜台2−1
TEL:04-7103-1312
営業時間:平日 9:00~12:00、14:00~17:00
休日:土曜・日曜・祝日・年末年始
〒277-0012
千葉県柏市桜台2−1
TEL:04-7103-1312
営業時間:平日 9:00~12:00、14:00~17:00
休日:土曜・日曜・祝日・年末年始
ながれやま薬局
〒270-0163
千葉県流山市南流山3-16-3
TEL:04-7158-8878
営業時間:月、火、金 09:00~17:30
木 09:00~16:00 土 09:00~12:30
休日:日曜・祝日・年末年始
〒270-0163
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TEL:04-7158-8878
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木 09:00~16:00 土 09:00~12:30
休日:日曜・祝日・年末年始
山口峻平代表のプロフィール
経歴:
2007年 帝京大学薬学部卒業
2007年 社会福祉法人 中江古田病院
2010年 社会医療法人 河北総合病院
2016年 ワイズ株式会社設立 つなぐ薬局柏さくら台(旧柏店)開局
2017年 つなぐ薬局足立 開局
2020年 つなぐ薬局柏 移転
2024年 つなぐ薬局我孫子 開局
2024年 ながれやま薬局 事業譲渡
2007年 帝京大学薬学部卒業
2007年 社会福祉法人 中江古田病院
2010年 社会医療法人 河北総合病院
2016年 ワイズ株式会社設立 つなぐ薬局柏さくら台(旧柏店)開局
2017年 つなぐ薬局足立 開局
2020年 つなぐ薬局柏 移転
2024年 つなぐ薬局我孫子 開局
2024年 ながれやま薬局 事業譲渡