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【PICK UP!若手経営者 008】株式会社oncall 符毅欣代表取締役 最終更新日:2025/01/28

【PICK UP!若手経営者 008】株式会社oncall 符毅欣代表取締役
在宅医療界の若手経営者へのインタビュー企画「PICK UP!在宅医療界の若手経営者」。第8回目は夜間・休日のオンコール代行(往診代行)サービスとして2021年4月に「株式会社oncall」を創業された医師符毅欣社長です。サービス構築へのきっかけ、現状、そして今後の展開への思いを熱く語っていただきました。
病気を治す研究への憧れから医師の道へ
— まずは、医師を目指したきっかけについて教えてください。
元々、医学研究に興味があったんです。子どもの頃、漠然と死への恐怖のようなものを感じていました。医学によって病気を治すような研究をしたいと思ったことが、医師を志したきっかけですね。医学研究に強い大学ということで京都大学へ進学し、医学全般を学びつつ、研究なども経験させていただきました。
— 研究に興味をお持ちだったけれども、一旦は医療現場へ進むことにしたという感じですか。
そうですね。大学時代に研究室留学で2ヶ月ほどアメリカに行き、海外の研究現場を目にする機会がありました。そこで、医学研究における日本と海外環境の差を感じまして。医師として現場に出た方が、自分のやりたいことに注力できるのかなと思い、医療現場の道を選びました。
— 研修医の期間を終えられた後は、泌尿器科医としてのキャリアを積まれていたということで、泌尿器科を選択したのには、何か理由がおありだったのでしょうか。
学生時代から、多岐に渡る医療行為に関心があったんです。泌尿器科は内科的なことから外科的なことまで、幅広く網羅しているといいますか。一つの臓器を一つの科で見続けるというところに魅力を感じたというところですね。
地方で感じた在宅医療の必要性
— 株式会社on callを立ち上げるまでのキャリアを、簡単に教えていただけますか。
研修医の期間が終了した後、虎の門病院で1年、長野市民病院で2年、江戸川病院で1年の勤務を経験しました。
on cal事業のはじまりは、長野市民病院で勤務していた時なんです。
— はじまりは長野だったのですね。その理由は何だったのでしょうか。
研修医のときの地域医療研修において訪問診療の現場に触れた時から、在宅医療に関心を持ってはいたんです。患者さんの立場に立った医療を提供できるところに魅力を感じ、将来的には何らかの形で在宅医療に関わっていきたいという思いがありました。長野に赴任する以前には、実際にオンコールの受け手側としてアルバイトを経験したこともあります。
そのような感じで少しずつ在宅医療に携わっていた頃、長野市民病院へ赴任することになりました。当時、長野市の在宅医療では夜間や休日の体制が主治医の院長先生に依存していて、課題感を感じたんです。東京で自分が経験してきたような非常勤のオンコールの仕組みを導入できたらというところから、on callの立ち上げに向かっていったという経緯ですね。2021年に株式会社on callを設立して、長野市でテストマーケティングをしました。
長野市民病院での勤務時代
当初に感じた難しさ
— 最初はどのように始められたのですか。スタートは順調でしたか。
長野市にも在宅医療に興味を持つ医師が何名かいたので、その先生方と協力し合って、当番制で診療に行くというようなところから始めました。ただ、スタートに関しては少し苦労もありましたね。在宅医療を専門で行っている医療機関さんも少なく、在宅医療のためのサポートサービスへのニーズは医療機関にとって、あまりなかったのかもしれません。。
結果的に、長野市ではほとんど事業を展開できなかったというのが正直なところです。まずは東京で事業展開していこうということ、そして長野市民病院での勤務を終えて、2022年に東京へ移りました。
— そうだったのですね。東京での事業展開は最初どのような感じでしたか。
元々自分が勤務していた時の同僚や、大学時代の知り合いなどに声をかけてメンバーを集めました。ただ、協力してくれる人を集めるのはなかなか大変でしたね。医師以外にも、患者さんからの電話を受けるコールスタッフ、担当する医師を迎えに行く往診ディレクターがいます。多くの多職種の方々で体制を構築していますので、今でも人集めには力をいれています。
初めの頃は、地域の訪問看護事業者さんなどに協力してもらうこともありました。色々な方々の助けがあって今があるといった感じです。
on call スタッフ
質の高い医療を提供することへのこだわり
— 今後の課題としては、何が挙げられますか。
やはり人材の確保ですね。私たちのこだわりでもあるのですが、医師に同行するスタッフも、看護師さんや介護士さんなど、在宅医療を知っているような人にお願いしたいという思いがあるんです。スタッフ全員が在宅医療の知識を持っていることで、医療の質の担保にも繋がってくるという理由があります。
— 貴社のホームページからも、「質の担保」を大切にされていることが伝わってきました。
医療の質に関しては、最もこだわっている部分と言ってもいいかもしれません。サービスの向上のためにも、クリニックさんや患者さんからの評価に対しても、真摯に向き合っていくことを心がけています。
例えば数値目標として、クレーム率の指標も設けており、0.5%以下に抑えることを目標としていまして。現在のところ、ほぼ達成できている状況です。
地方に向けても充実した在宅医療体制を広げていきたい
— 今後の事業展開についてはどのようにお考えですか。
現在は東京、神奈川、千葉、埼玉といった首都圏で事業を展開していますが、ゆくゆくは全国的に事業展開していくことを目指しています。地方と首都圏では、まだまだ在宅医療の認知度や期待値に差があると感じているので、今後、地方にも充実した在宅医療体制を広げていきたいというところですね。
— 地方の医師も高齢化が進んで、どんどん大変になっていきそうですよね。
そうですね。そういった意味で、地方における在宅医療の体制サポートのニーズはますます高まってくると思います。私たちの事業によって、患者さんだけでなく、医療現場で働く方々の負担軽減も実現していけたらいいなと思っています。
医師のマッチングサービスに注力
— 今後注力していきたいポイントなどはありますか。
医療機関と医師のマッチングサービスの構築ですね。休日や夜間だけでなく、日中の診療に関しても、人材サポートをしていく取り組みを始めています。医師が空き時間を活用して、患者さんのもとへ診療にいけるような仕組みを、普及させていきたいですね。この取り組みによって、医師の働きやすさにも貢献することができるかなと思っています。
こちらの取り組みについては、『RESIDENT BANK』というサービスを自社開発し、昨年末にβ版をリリースしました。
開発チームでのミーティング
これからの在宅医療に期待すること
— 在宅医療全体に関して感じられている課題などは、何かおありですか。
在宅医療がどのようなものなのか、まだまだ世間ではあまり知られていないことが課題なのではないでしょうか。患者さんはもちろんですが、医師の方々にも、もっと普及啓発が必要なのではないかと感じています。まずは医師が在宅医療について知識を深めることで、患者さんにも療養生活の選択肢の一つとして、在宅医療の提案をすることができると思うんです。
そのためにも医師の方には、若いうちから在宅医療の現場を、ぜひ経験していただきたいですね。それによって在宅医療を志す医師が増えていくことが期待できますし、そうでなかったとしても、患者さん本位の医療を学ぶことは、キャリア形成にも大きく寄与する部分があると思います。
— 先生が目指す在宅医療の未来像はどのようなものですか。
医師や看護師、介護士など多職種がフラットに連携してそれぞれの専門性を最大限活かして患者さんの望む療養生活を実現していくことですかね。地域によっては医師の数が不足しているようなところもありますから。そういったエリアでは、訪問看護さんなどに求められるニーズも高まってくるのではないかと思います。
私たちの法人においても、看護師さんや介護士さんの業務の幅を、今よりももっと広げていけたらいいなと感じているところです。ただ、そのためにはその働きに見合うだけの報酬も与えられないといけないかなとは思いますね。これに関しては、根本的な課題は日本における診療報酬の設計と考えています。
— たくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました。では、在宅医の方へのメッセージをお願いできますか。
当法人では医療の質を重視した、きめ細やかなサービスを提供することを心がけています。on callを利用していただくことで、先生方の負担の軽減や、医療の質の向上のサポートができればと考えております。夜間や休日の対応など、安心してお任せいただけると嬉しいです。
— 最後に、患者さんへもメッセージをいただけますか。
在宅医療は、住み慣れたご自宅で病院と同じようなサポートを受けられる、患者様に寄り添った医療です。治療を受けながらも、ご家族の近くで過ごせることも魅力の一つと言えます。ご興味のある方は、いつでもお気軽にお問い合わせください。(在宅医療の提供をご希望の方はお近くの医療機関様へご相談ください)
on call member
 
プロフィール:
符毅欣(ふうたかよし)
株式会社on call代表取締役
経歴:
2017年 京都大学医学部卒
2017年 虎の門病院 泌尿器科初期研修
2020年 長野市民病院 泌尿器科
2022年 江戸川病院 泌尿器科
2021年 株式会社on call創業
資格:
日本泌尿器科学会専門医