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第2回日本在宅医療コングレス 参加レポート! 最終更新日:2025/02/17

第2回日本在宅医療コングレス 参加レポート!
在宅医療の未来を見据え、全国の在宅医療従事者が一堂に会する「第2回 日本在宅医療コングレス」が開催されました。本イベントでは、医療・介護・福祉の各分野の専門家が集い、最新の在宅医療の動向や課題、地域ごとの取り組みについて活発な議論が行われました。
基調講演では厚生労働省の佐々木昌弘氏が「危機管理としての在宅医療―医療介護連携は地域力―」をテーマに登壇し、今後の医療体制の展望や災害時の在宅医療の役割について語りました。また、多職種によるパネルディスカッションでは、実際の現場で直面する課題や、在宅医療の質を向上させるためのアイデアが共有され、参加者にとって大きな学びの場となりました。
第一部 基調講演
「危機管理としての在宅医療―医療介護連携は地域力―」
第一部では、佐々木昌弘氏(厚生労働省 危機管理・医務技術総括審議官)が登壇し、「危機管理としての在宅医療―医療介護連携は地域力―」をテーマに講演を行った。
講演では、① 今後の医療の展望、② 在宅医療の未来、③ 危機管理の視点の3点について言及された。
外来診療については、日本全国でほぼピークアウト(供給が需要を超えている状態)しており、入院診療も都市部を除いて同様の傾向にある。一方、在宅医療の患者数は今後も増加が見込まれる。
ただし、在宅医療においては全国一律の政策では対応しきれず、地域ごとの特性に応じた独自の施策が求められる。佐々木氏は、「自分たちの地域をどのようにしたいのかを考え、在宅医療に関わる皆さんには知恵袋として進めてほしい」と述べた。
また、在宅医療では、医療従事者が患者と関わる時間は1日のうちごくわずかであり、患者本人の意思決定が重要となる。
「患者を中心とした医療を実現するために、本人が意思決定を重ねられるよう支援してほしい」と呼びかけた。
佐々木昌弘氏(厚生労働省 危機管理・医務技術総括審議官)
危機管理の視点
危機管理の観点からは、令和6年能登半島地震の教訓を踏まえ、世界的な潮流は「オールハザード(あらゆる災害に備える)」の方向へ進んでいると指摘。
政府としても、保健・医療・福祉の支援チームを統一した言語で再構築する取り組みを強化していくと述べた。
また、災害時の情報収集と発信の重要性にも触れ、「どのような情報を収集し、どのように発信するかを、在宅医療に従事する皆さんとともに詰めていきたい。災害が発生しても強い日本を目指す」と講演を締めくくった。
第二部:2024年度ブロックフォーラム報告会
第二部では、2024年度ブロックフォーラム報告会として、北海道から沖縄まで全国15地域で開催されたブロックフォーラムの成果報告が行われた。各地域の代表者が登壇し、それぞれの取り組みや得られた知見を共有した。
北海道:医療的ケア児の理解を広げるフォーラム
北海道札幌市からは川村健太郎氏(医療法人稲生会 生涯医療クリニックさっぽろ)が登壇し、2025年1月11日に開催された第13回北海道在宅医療推進フォーラムについて報告した。
本フォーラムは、昨年に続き「イオンモール札幌平岡」を会場とし、「みんなに知ってほしい、子どもの在宅医療のこと。」をテーマに、展示と発表の二部構成で実施。
展示企画:「みんな、とくべつなひとり」(医療的ケア児と家族の日常をテーマにした写真展)
絵本展示:「ぼくのおとうとは機械の鼻」から象徴的なシーンを解説付きで紹介
プレゼンテーション:医療的ケア児支援に関心のある女子中高生による発表
当日は199名が参加し、ボランティアも66名(医療的ケア児、家族、学生など)が携わる大規模なイベントとなった。
川村氏は「医療的ケア児も外で活動できることを知ってもらい、ボランティア同士も新たな気づきを得られた」と振り返り、今後も地域での理解を広げる重要性を強調した。
川村健太郎氏(医療法人稲生会生涯医療クリニックさっぽろ)
山梨県:「やまなし在宅医療の日」の創設へ
山梨県からは高添明日香氏(医療法人桜花会 あすか在宅クリニック)が、2024年11月3日に開催された第1回山梨県在宅医療推進フォーラムの報告を行った。
フォーラムは二部構成で実施。
第1部:グループワーク
・在宅療養を支える多職種(一般市民も参加)がテーブルを囲み、「認知症の独居高齢者の支援に何が必要か?」をテーマに議論。
・その手法や利用すべきサービスについて意見を出し合い、全体発表を行った。
第2部:講演会
・山梨県の在宅医療・介護サービスの紹介
・在宅療養の相談窓口に関する情報提供
アンケートでは「グループワーク→講演会の流れが非常に効果的だった」「楽しかったので年2回開催してほしい」などの声が寄せられた。
高添氏は「記念すべき第1回開催となった本フォーラムを契機に、11月3日を『やまなし在宅医療の日』として、誰でも参加しやすい形で今後も継続していきたい」と語った。
岡山県:中国地方5県が連携した広域フォーラム
岡山県からは小森栄作氏(医療法人ザイタック ももたろう往診クリニック)が、2024年11月3日に開催された中国ブロック在宅医療推進フォーラムと日本在宅医療連合学会中国地方支部会発足記念大会について報告。
開催の経緯や、会場選び・広報活動について語られた。
当日は100名が参加し、以下の多彩な職種が集結した。
・医師、歯科医師、看護師、薬剤師
・行政職員、ケアマネジャー、介護職、医療ソーシャルワーカー、栄養士
・遺品整理業者、商社など、幅広い業種の参加者
小森氏は「都道府県単位での開催が主流だが、中国地方5県は在宅医療支援協議会のメンバーが少ないため、今回のような広域フォーラムが今後の在宅医療推進に向けた良いきっかけになればと思う」と述べた。
発表資料
大分県:「コンパッション(思いやり)」を軸にした在宅医療の推進
大分県からは山岡憲夫氏(やまおか在宅クリニック院長)が、2024年9月28日に開催された在宅医療推進フォーラム in 大分 2024について報告した。
本フォーラムは「コンパッション(思いやり)のある在宅医療・地域を目指して」をテーマに、以下の三部構成で実施。
シンポジウム1:「多職種連携の構築と継続の重要性」
特別講演:「コンパッションに支えられたコミュニティーとポジティブヘルス」(講師:堀田聡子氏)
シンポジウム2:「地域に根差した思いやりのある在宅医療の取り組み」
特別講演では、コンパッションの概念や今後の展望が詳しく述べられ、「もっと話を聞きたかった」という声が多く寄せられた。
また、参加者からは「在宅医療の現場で働く人々のリアルな声を聴くことができて良かった」「今後も継続開催してほしい」といった意見が集まった。
山岡氏は「本フォーラムを通じて、多職種が顔見知りとなり、課題や悩みを共有できたことは大きな収穫。これをエネルギーにして、来年以降も継続開催を誓い合った」と締めくくった。
第三部:シンポジウム ~あるべき在宅医療の姿を求めて~
第三部では、「シンポジウム~あるべき在宅医療の姿を求めて~」と題し、鶴岡優子氏(全国在宅療養支援医協会 監事)の進行のもと、各専門職による在宅医療の質についての議論が交わされた。
パネリストとして登壇したのは、以下の3名の専門家:
・歯科医:大友文雄氏(全国在宅療養支援歯科診療所連絡会)
・薬剤師:小林輝信氏(全国薬剤師・在宅療養支援連絡会)
・看護師:平原優美氏(日本訪問看護財団)
それぞれの立場から、質の高い在宅医療機関とは何かについて意見を述べた。
左から平原優美氏、小林輝信氏、大友文雄氏
質の高い在宅医療機関とは? 各専門家の視点
・看護の視点(平原氏)
「質の高い訪問看護ステーションは、看取り後も家族へのケアを行い、地域住民への活動が活発で、どんな患者も断らない姿勢を持っている」と述べた。

・歯科の視点(大友氏)
「患者満足度が高いことが重要であり、他の職種と連携しているかが評価の指標となる。スタッフに聞いてみるとその医療機関の質が分かる」と提案。

・薬剤師の視点(小林氏)
「薬剤師が行う業務は患者の状態によって異なるが、幅広いネットワークを持ち、自身だけでなく他の機関と連携できることが重要」と述べた。
さらに、医師の視点として、高添明日香氏と小森栄作氏が参加。
・医師の視点(高添氏・小森氏)
「往診数や看取り件数が多いことも一つの指標だが、患者の思いに寄り添い、それに応えられることが最も重要。また、そのためのネットワークを持っていることが求められる」と強調した。
また、「リピート率の高さ」も、患者や家族に信頼されている医療機関の一つの指標になりうると述べた。
シンポジウムの総括
議論の最後に、進行役の鶴岡優子氏は、「在宅医療の質については、すぐに結論が出るものではなく、今後も引き続き議論を重ねていく必要がある」と総括し、シンポジウムを締めくくった。
本シンポジウムを通じて、質の高い在宅医療とは単なる数値や指標では測れないものであり、多職種の連携、患者の思いに寄り添う姿勢、そして地域社会とのつながりが不可欠であることが改めて確認された。
参加して
本フォーラムを通じて、在宅医療が今後ますます重要性を増していくことが改めて確認された。
第1部では、基調講演を通じて、在宅医療の拡大と地域ごとの柔軟な対応の必要性が強調された。医療・介護・福祉が連携し、患者を中心に支える仕組みの構築が求められている。
第2部では、全国15地域のブロックフォーラムの成果報告が行われ、それぞれの地域が独自の取り組みを通じて、在宅医療の発展に貢献していることが共有された。地域の特性を活かしながら、在宅医療の質の向上と多職種連携の強化が進められていることが明らかとなった。
第3部では、シンポジウムを通じて、在宅医療の「質」とは何かという議論が深められた。訪問看護、歯科、薬剤師、医師といった各職種が、それぞれの視点から在宅医療に求められる役割を再認識し、患者の思いに寄り添いながら、多職種が協力して支えていくことが不可欠であるとの共通認識が生まれた。
これらの議論を踏まえ、在宅医療をさらに充実させるためには、多職種連携の強化、地域特性に応じた施策の推進、そして患者・家族への継続的な支援が鍵となる。
在宅医療の未来を創るのは、現場で支える一人ひとりの医療・介護従事者の力である。本フォーラムが、その一歩となり、今後の在宅医療の発展につながることを願いながら、閉会としたい。