【PICK UP!在宅医療機関 016】ヴィラ・コモンズ訪問看護ステーション佐藤克弘代表 最終更新日:2025/03/15

注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第16回目は札幌市手稲区にて「ヴィラ・コモンズ訪問看護ステーション」を運営されている理学療法士佐藤克弘代表です。これまでの歩み、訪問看護・訪問リハビリテーションの現状やこれからに向ける思いを熱く語っていただきました。
兄の姿を見て鍼灸師の道へ
— 鍼灸師を目指された経緯と針鍼灸師の学校時代の話をお聞かせください。
私の実家はもともと北海道当別町というところで代々農家を営んでいました。両親は畑仕事が重労働で、よく私に「背中を押してくれ」や「腰を押してくれ」と体の不調を訴えていたんです。幼い頃から、たまに両親のマッサージをしていたのが原体験としてあります。
鍼灸師を目指す直接のきっかけは、兄の存在でした。兄が小児麻痺を患っており、家を継ぐことが難しかったのです。それで、高校卒業後の進路を考えた時に、親から「鍼灸師なら手に職をつけられるし、開業もできるからいいんじゃないか」と勧められ、先に鍼灸師になっていた兄の姿を見ていたので決心しました。当時は減反政策で農業の将来性も厳しくなってきていた時期でしたから、家を継ぐことを諦め、鍼灸師の道に進むことにしました。
鍼灸師の学校は夜間だったので、昼間は兄の治療院で手伝いをしながら、学校に通っていました。1年ほど経った頃、学校の先輩に札幌慈啓会病院でリハビリの助手をしないかと誘われたんです。実は、その先輩も夜間は学校に通っていて、昼間は札幌慈啓会病院で理学療法士として働いていました。助手を探していた先輩と、昼間の仕事を探していた私が、たまたまタイミング良く出会ったというわけです。専門学校時代から、病院で助手をさせていただき、リハビリの現場で、上司の方から様々なことを教えていただきながら、患者さんの移動や訓練のサポートをしていました。

理学療法士としてリハビリテーション科の立上げに邁進
— 理学療法士を目指したきっかけを教えて下さい。
鍼灸師の免許取得後、病院で助手をしていた時に、理学療法士の先輩から「これからは理学療法士の学校が増えるから、受けてみないか」と勧められました。当時は北海道内に理学療法士の養成校がなく、将来性を感じて挑戦してみようと思いました。
ただ、当時は本州にしか学校がなく、倍率も高かったので、一度職を辞めて予備校に通い、一年間勉強しました。そして、1979年に高知医療学院に入学し、3年間学びました。理学療法士として働き始めてからは、学問的に知らなかったことを学び、理論に基づいて治療を行うことで、一定の効果を感じることができました。しかし、従来の理学療法は残存能力を利用した社会復帰を目的としていたため、重度の患者さんには限界があると感じていました。
例えば、痛みの強い患者さんには、従来の理学療法だけでは十分な効果が得られないことがありました。そこで、鍼灸師の免許も持っていた私は、鍼灸を併用することで、痛みを緩和しながらリハビリを進めるなど工夫していました。
— 病院勤務時代はどのような仕事をされていましたか?
札幌慈啓会病院、江仁会病院、北都病院、南小樽病院で働きました。基本的にはリハビリ部門の管理者としてスカウトされました。江仁会病院は療養型の病院で、寝たきりの患者さんが多く、病棟でのリハビリが中心でした。北都病院も同様の療養型病院でしたが、整形外来も行っていました。南小樽病院では、医療技術部長として、薬局、レントゲン、リハビリ部門を統括しながら、リハビリテーションの発展に尽力しました。
札幌慈啓会病院で主任を任された頃は、私もまだ若く、周りの鍼灸師や柔道整復師と同じくらいの年齢でした。当時あまりいなかった理学療法士に反発もあったのか、適切にマネジメントできず、人間関係に悩み転職をし江仁会病院に行きました。江仁会病院と北都病院はリハビリテーション科の立ち上げから関わりました。南小樽病院は病院の開業から始まりました。江仁会病院時代の副院長から声がかかりました。副院長とは仲良くさせて頂いていたので直接お電話で依頼があり、お話を受けることにしました。

— ご専門である関節ファシリテーション(SJF)について詳しくお聞かせ下さい。
南小樽病院では、患者さんを増やしたいという思いから、様々な治療法を模索していました。そんな時、知り合いの理学療法士から、関節ファシリテーション(以下、SJF)という治療法を紹介されました。本当に衝撃的な出会いでした。宇都宮初夫先生の治療を見学させていただいた時、まるで魔法を見ているようでした。パーキンソン病で動けなかった患者さんが、治療後にはスムーズに動けるようになる。その光景を目の当たりにして、この治療法を学び、広めなければならないと強く感じました。
私はすぐに宇都宮先生を南小樽病院にお招きし、患者さんへの治療と勉強会を開催しました。すると、全ての患者さんの動作が目に見えて改善したんです。これは北海道内に広めなければならないと確信し、私が中心となって年2回のペースで宇都宮先生をお招きし、講習会を開催するようになりました。
そのうちに、宇都宮先生から北海道理事を任されることになり、2000年から2006年まで務めさせていただきました。北海道内の理学療法士に向けた講習会も、年2回から3回のペースで開催しました。会場は、最初は南小樽病院でしたが、その後は北海道大学病院や札幌医科大学病院の理学療法室をお借りして開催していました。
この5年間は、本当に忙しかったですが、充実した日々でした。年に2回は大阪で開催される理事会や講習会に参加し、10月にはSJF研究会の学会にも参加していました。2005年には、SJF研究会北海道大会の学会長を務めさせていただき、全国から300名もの参加者が集まりました。

地域へ貢献したい、強い思いのもと、独立開業
— その後、株式会社トゥルーを設立されます。
南小樽病院に9年ほど勤務する中で、病院の方針が徐々に変化してきたことがきっかけの一つです。それまでSJFに対して寛容だった病院側から、他の治療法にも目を向けるよう言われるようになったんです。私は、SJFを習得し、広めることで集客にも繋がると考えていました。しかし、病院側との考え方の違いが大きくなり、それならば自分の技術で開業し、地域に貢献したいという思いが強くなりました。
病院に来られる患者さんは比較的状態が良い方が多く、本当に困っているのは通院が難しい方々だと感じていました。訪問リハビリを通じて、そのような方々を助けたいという思いもありました。
— まず、ヴィラ・コモンズ治療院を設立されます。開業当初の状況はいかがでしたか?
妻が看護師であり、訪問看護の経験もあったことから、夫婦で治療院と訪問看護ステーションを立ち上げたいという思いがありました。
そして、治療院と訪問看護ステーションを併設するため、自宅を新築することにしました。駅に近い場所を選び、1階を治療院と訪問看護ステーション、2階を自宅とする設計にしました。2006年に会社を設立し、治療院と訪問看護ステーションをほぼ同時に開設しました。
治療院は、スタート時から比較的順調でした。南小樽病院時代の患者さんが20人ほど来てくれたので、最初の数年間は安定していました。しかし、徐々に患者さんは減っていきました。病院の外来では保険が適用されていたため、患者さんの負担は少なかったのですが、治療院では自費診療となるため、患者さんの負担が大きくなってしまったんです。それでも、SJFの効果を実感した患者さんたちは、治療を続けてくださいました。

ヴィラ・コモンズ訪問看護ステーション
— スタート当時の事を教えてください。
開業当初、まず、訪問看護ステーションの看護師集めに苦労しました。妻と准看護師の方、パートの方の2.5人でスタートしました。訪問件数も最初は少なく、軌道に乗るまでには時間がかかりました。ケアマネージャーの方々にご挨拶に伺ったり、ケアマネージャーの集まりに参加したりと、地道な営業活動を続けました。ケアマネージャーの飲み会にも参加し、顔を覚えてもらうように努めました。
ケアマネージャー連絡会という集まりにも参加し、自己紹介やSJFのデモンストレーションを行いました。すると、ケアマネージャーが治療院に治療を受けに来てくれるようになり、SJFを知ってもらうきっかけになりました。
軌道に乗るまでに3年ほどかかりました。根気強く営業活動を続けた結果、徐々に訪問件数が増えていきました。

— 現在はどのような体制ですか?
現在、看護師は常勤3名、非常勤1名の計4名体制で運営しています。10年以上勤務している職員が2名おり、長く勤めていただいています。パートから正社員になった職員がおり、愛着を持って働いてくれているのだと思います。
理学療法士は2名です。息子と親子で働いています。2年後には息子に社長を譲りたいと考えています。リハビリを提供することで、看護だけでは改善が難しい動作の改善が期待できます。座位保持や寝返り、おむつ交換などがスムーズになることで、利用者の生活の質が向上します。
通常は別々に訪問しますが、月に1回は看護師が利用者の状況を確認し、連携を図っています。週に1回が一般的ですが、パーキンソン病などの特定疾患を持つ利用者の場合は、週に2回から3回訪問することもあります。
あと事務職員が1名います。請求業務や総務などを担当しています。
看護師4名、理学療法士2名、事務1名の計7名で運営しています。利用者数を増やし、地域の方々が安心して在宅生活を送れるよう、質の高い訪問看護を提供していきたいと考えています。

— 訪問看護・訪問リハビリの取り組みについて教えてください。
当ステーションの最大の特色は、SJFという運動療法を提供していることです。これは、他の訪問リハビリではなかなか受けられない、当ステーションならではの強みだと考えています。脳血管疾患の後遺症やパーキンソン病など、様々な疾患の方に効果が期待できます。関節の動きを改善することで、痛みの緩和や動作の改善に繋がります。
また、小児のリハビリにも力を入れています。脳性麻痺などの後遺症で体が硬くなってしまったお子さんに対して、SJFを行うことで体の柔軟性を保ち、動きを改善するサポートをしています。7歳の時に関わり始めて、今年20歳になる利用者もいて、小児の方とは長いお付き合いになることが多いです。
対応地域は札幌市手稲区、西区を中心に、中央区、北区、石狩市、小樽市にも対応しています。
利用者の疾患は、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患や、パーキンソン病などの神経疾患の方が多いです。慢性期の方も多く、10年以上継続して利用されている方もいらっしゃいます。
新しいことを始めるというよりは、現状を維持し、質の高いサービスを提供していくことを目標としています。2年後には息子に事業を承継する予定ですので、それまでに事業を安定させ、安心してバトンタッチできるよう準備を進めています。

地域の方々が安心して在宅生活を送れるように
— 「訪問看護・訪問リハビリ」にはどのような課題や悩みがありますか?
厚生労働省が訪問看護・訪問リハビリの報酬を削減する方向へ進めているため、今後の動向が懸念されます。訪問看護においても、加算の条件が厳しくなり、経営が厳しくなってきています。訪問時間の短縮や、加算取得の難しさなど、様々な面で影響が出ています。訪問リハビリのニーズは高いにも関わらず、国が推奨していないため、訪問看護ステーションがリハビリを提供せざるを得ない状況になっています。
かつては訪問リハビリの独立開業を推進する動きもありましたが、現在は訪問看護ステーションからのリハビリ提供が主流となっています。訪問看護ステーションにおけるリハビリの割合が増え、より専門的なリハビリが提供されるようになるかもしれません。しかし、報酬の削減や人材不足など、課題も山積しています。
SJFなどの専門的な技術を習得した理学療法士が不足しており、育成が急務です。かつては当ステーションで人材育成も行っていましたが、意欲のある人材を見つけるのが難しい状況です。新しい技術を積極的に取り入れ、利用者さんに質の高いサービスを提供していきたいです。そのためにも、SJFのような効果的な治療法を広め、地域の方々に活用していただきたいと考えています。また、ケアマネージャーさんへの情報提供などを通して、SJFの認知度を高めていきたいです。

— 最後に地域のみなさんにメッセージをお願いします。
当ステーションでは、関節ファシリテーション(SJF)という優れた技術を提供しています。ぜひ、多くの方にこの技術を知っていただき、活用していただきたいです。また、経験豊富なベテラン看護師が在籍しており、質の高い在宅支援を提供できる体制が整っています。看護の力で、地域の方々の健康をサポートしたいと考えています。
感染症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺などの特定疾患、高次脳機能障害、人工呼吸器管理、点滴対応、糖尿病など、多岐にわたる疾患に対応しています。
看護師のやりがいは、看護を通して利用者さんの体調が安定したり、不安が軽減されたりした時に、笑顔や安堵の表情を見ることができることです。訪問看護では特にそれらを身近に感じられます。
今後も、地域の方々が安心して在宅生活を送れるよう、質の高い訪問看護と訪問リハビリを提供し続けていきたいと考えています。
ヴィラ・コモンズ訪問看護ステーション

〒006-0021
北海道札幌市手稲区手稲本町1条1丁目4-22
TEL:011-694-3776/FAX:011-213-7886
北海道札幌市手稲区手稲本町1条1丁目4-22
TEL:011-694-3776/FAX:011-213-7886
佐藤克弘代表のプロフィール
経歴:
1976年 札幌慈啓会 理学療法室 助手
1977年 北海道鍼灸専門学校卒業
1977年 はり師・鍼灸師免許取得
1983年 高知医療学院理学療法学科卒業
1983年 理学療法士免許取得
1983年 社会福祉法人 札幌慈啓会 理学療法室
1987年 社会福祉法人 札幌慈啓会 理学療法室 主任
1990年 医療法人 札幌江仁会病院リハビリテーション科 科長
1994年 医療法人 北都病院 リハビリテーション科 科長
1997年 南小樽病院医療技術部 部長
2000年 南小樽病院リハビテリテーション部長
2006年 株式会社トゥルー 設立
2000~2006年 SJF東北・北海道理事
2005年 第6回関節ファシリテーション研修会(札幌医大) 北海道大会 学会長
1976年 札幌慈啓会 理学療法室 助手
1977年 北海道鍼灸専門学校卒業
1977年 はり師・鍼灸師免許取得
1983年 高知医療学院理学療法学科卒業
1983年 理学療法士免許取得
1983年 社会福祉法人 札幌慈啓会 理学療法室
1987年 社会福祉法人 札幌慈啓会 理学療法室 主任
1990年 医療法人 札幌江仁会病院リハビリテーション科 科長
1994年 医療法人 北都病院 リハビリテーション科 科長
1997年 南小樽病院医療技術部 部長
2000年 南小樽病院リハビテリテーション部長
2006年 株式会社トゥルー 設立
2000~2006年 SJF東北・北海道理事
2005年 第6回関節ファシリテーション研修会(札幌医大) 北海道大会 学会長
商標:
関節ファシリテーション(登録番号:第5418692号)
SJF(登録番号:第5355847号)
関節ファシリテーション(登録番号:第5418692号)
SJF(登録番号:第5355847号)
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