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終末期外出支援「願いのくるま」|ターミナルケアに寄り添う付添い支援 最終更新日:2026/05/13

終末期を迎えた方にとって、「もう一度、思い出の場所へ行きたい」「大切な人と同じ景色を見たい」という願いは、人生の最期の時間をその人らしく過ごすための大切な希望です。「願いのくるま」は、ターミナルケアを受けている方を対象に、医療的な配慮と安全確認を行いながら、付添いのもとで外出を支援するボランティア活動です。一般社団法人 願いのくるまの柳谷朋伸さん、鈴木蓮さん、森重紗織さんに、活動が生まれた背景、終末期外出支援の具体的な内容、医療・介護との連携、そして一人ひとりの「願い」に寄り添う想いについて伺いました。

終末期外出支援「願いのくるま」誕生の背景と込められた想い

— まずは柳谷さんの経歴を教えてください。

柳谷 1986年に大学を卒業後、新卒で入社した企業に約14年間勤務し、その後2000年5月に大きな転機を迎え、ちょうどタウが仙台支店を開設するタイミングと重なり、ご縁をいただいて入社することになりました。
入社後は自動車の仕入れを担う営業からキャリアをスタートすることになり、国内外への販売部門など、車に関わる現場の最前線を経験した後、営業経験を活かして人事部へ異動し、約14年にわたり採用や社内研修の内製化、労務環境の整備といった組織基盤の構築に携わってきました。
2025年からは総務部へと移り、現在は終末期の方の外出を支援するボランティア活動「願いのくるま」の運営を担い、これまでの経験とは領域が異なるものの、会社の理念を体現する重要な役割だと感じながら取り組んでいます。
願いのくるまスタッフ
左から鈴木蓮さん、柳谷朋伸さん、森重紗織さん

— 株式会社タウの創設はいつごろなのでしょうか?

柳谷 当社は1996年に埼玉県浦和市で、わずか4名からスタートし、私が入社した当時もまだ小規模な組織でしたが、現在では海外を含め社員700名を超える企業へと成長しています。
事業の中心は自動車のリユース関連ですが、単なる売買にとどまらず、フォークリフトや建設機械といった産業用車両の取り扱い、タイヤや部品の販売、さらにはそれらを海外へ輸出するなど、幅広い領域を手がけています。
近年では板金修理工場を自社で運営し、車両を修理して再び活かす取り組みを強化するとともに、解体した車両から部品を再利用するリサイクル事業にも力を入れています。
自動車を「作る」工程以外のすべてに関わり、価値を最大限に引き出し続けている点が、当社ならではの強みです。
また、自動車業界全体で課題となっている人材不足に対しては、専門人材を現場へとつなぐサービスも展開しており、事業の幅は年々広がっています。
こうした成長の背景には、「社会貢献」と「社員の幸福」という理念が一貫して存在しており、この軸がぶれることなく受け継がれてきたことこそが、現在のタウを形づくっていると感じています。
株式会社タウ オフィス

— 株式会社タウはなぜ「願いのくるま」の活動を始めたのでしょうか。

柳谷 「願いのくるま」の原点は、2017年に当社の創業者である原田(現・名誉会長)が、オランダのボランティア活動「願いの救急車」を紹介する番組を目にしたことでした。
終末期の患者様が、最期に望む場所へ旅をする様子に感銘を受けた原田は、「車を扱う当社なら日本でも同じような活動ができるのではないか」と考えました。
そこで、2018年1月に終末期の方の「行きたい」「会いたい」という想いを実現するために、医療的な配慮を行いながら付添いで外出を支援する「願いのくるま」の活動が産声を上げました。
この取り組みには、利用者様の願いを叶えるだけでなく、関わる社員一人ひとりが命の尊さや生き方について向き合う機会になってほしいという想いも込められており、一時的な取り組みではなく、目の前の一人ひとりに丁寧に寄り添いながら継続していくことを何より大切にしています。
現在では願いのくるまを起点に、奨学生支援やシングルマザー支援、障がいのあるアーティストの活躍を支える取り組みなど、社会貢献の幅も広がっていますが、いずれも利益を目的とするものではなく、企業としての責任を果たすための活動として位置づけています。
一つひとつの願いに誠実に向き合い続ける姿勢こそが、利用者様や社会に対する私たちの約束であり、その積み重ねが信頼につながっていくのだと考えています。

— 「願いのくるま」の名前の由来を教えてください。

柳谷 ネーミングについては社内でさまざまな議論がありましたが、漢字を用いるとどうしても活動としての堅さや形式ばった印象が強くなってしまうため、あえて平仮名で「願いのくるま」と表記することにしました。
私たちが大切にしているのは、利用者様やご家族の想いにそっと寄り添う姿勢であり、そのやわらかさや温かさ、安心感を視覚的にも伝えたいと考え、この名前に想いを託しています。
GOOD DESIGN AWARD 2019
2019年度グッドデザイン賞を受賞

ターミナルケアに寄り添う「願いのくるま」の付添い外出支援

— 願いのくるまではどのようなサービスを提供しているのですか?

柳谷 願いのくるまでは、終末期にあり、外出が難しい方の「最期の願い」を叶えるため、付添いのもとでの外出支援を無償で提供しています。
一見すると「行きたい場所へお連れする」というシンプルな活動に見えるかもしれませんが、実際には医療的な配慮が欠かせないため、必要に応じて医師や看護師、介護職などの専門職が同行し、安全性を最優先にしながら、その方にとってかけがえのない時間を実現しています。
ここで、私がこの活動に加わる前のことですが、記念すべき「最初のご利用者様」との出会いについて、今でも事務局で大切に語り継がれているエピソードをご紹介します。
その方は、かつてライブに通うことを楽しみにされていましたが、病気の進行により何度も参加を断念せざるを得ず、「もうあの場所には行けない」と深い喪失感を抱えており、そうした中で「願いのくるま」の存在を知り、私たちにご相談をいただいたのです。
当時は現在のようにスタッフが揃っていたわけではありませんでしたが、「どうしてもこの願いを叶えたい」という想いから、経営陣自らが現場に立ち、試行錯誤を重ねながら実現へと導きました。
初めてターミナルケアの現場に深く身を置き、利用者様の魂の叫びや、ご家族の想いに触れた宮本(現・社長)は、「人生観、死生観が根底から覆されるような経験だった」と後に振り返っています。
その過程で、利用者様の切実な想いやご家族の深い愛情に触れた経験は、関わったメンバーの人生観や死生観を大きく変える出来事となり、この活動に向き合う覚悟と責任の原点となっています。
「願いのくるま」立ち上げ当時
「願いのくるま」立ち上げ当時(右:宮本明岳(現・社長))

— 次に、鈴木さんの経歴を教えてください。

鈴木 出産後、子育てをしながら働く中で、仕事と家庭の両立に悩み自分の働き方を模索していた時期があり、そのような時に出会ったのがタウのシングルマザー支援プログラムでした。縁があり2022年に入社し、願いのくるま事務局に配属されました。
シングルマザー支援プログラムをはじめ、会社が本気で誰かを支えようとしている姿勢を実感する機会が多くあり、その取り組みの一つが「願いのくるま」でした。
看護師をはじめとする専門職と連携しながら、主に運営や調整を担い、活動が円滑に進むよう全体を支える役割を担っています。
また、私は医療職ではありませんが、かつて支援を受けた当事者として、誰かに寄り添ってもらえることの心強さや、「諦めなくていい」と言われることの意味を実感してきたため、利用者様やご家族の不安や願いに、より近い距離で向き合えるのではないかと感じています。
これまで受け取ってきた支援の想いを、今度は「大切な思い出」という形に変えて届けていくことが、私にとっての大きなやりがいになっています。
鈴木蓮さん

終末期外出支援を全国で支える医療・介護との連携体制

— 願いのくるまはどのような運営体制で活動されているのですか?

鈴木 現在は8名の運営事務局を中心に活動しており、そのうち3名の看護師が常駐することで、医療的な視点からの判断やサポートが常に可能な体制を整えています。
現在の対象エリアは関東・東海・関西・九州で、遠方については出張を活用しながら活動しています。本取組みは、社員の人間的成長を後押しすることも目的の一つとしているため、事務局に限らず、各地域の営業拠点の社員にも積極的に参加してもらっています。
事務局という枠を超え、全国の社員が一つの想いで動く姿に触れるたびに、この活動が個人ではなく「組織の意思」として根付いていることを実感しており、タウという会社の大きな強みであると感じています。
運営事務局におけるミーティング

— 実際に願いのくるまで働かれている看護師の森重さんにお話をうかがいます。これまでにどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?

森重 私が看護師を志したきっかけは、「誰かの役に立ちたい」「ありがとうと言ってもらえる仕事がしたい」という想いと、祖父母と過ごす時間が好きだった原体験にあり、ご高齢の方と関わる中で、その方々の力になりたいと考えるようになったためでした。
2024年6月にタウへ入社するまでの約11年間、看護師として勤務してまいりました。
最初は大学病院の救命救急科に配属され、次々と搬送されてくる患者さんに対応しながら、命をつなぐための技術と判断力を磨いてきました。その後は生活環境の変化に伴い総合病院へ転職し、急性期外科病棟での勤務を経験しました。
しかしコロナ禍を機に状況は大きく変わり、病院内にとどまらず宿泊療養施設など院外での対応にも関わる中で、「看護師や保健師の資格をもっと広いフィールドで活かせるのではないか」と実感するようになりました。
そうした中で、保健師資格を活かした仕事にチャレンジしたいという思いが強まり、産業保健師を目指すようになりました。
病院という枠を越えて一人ひとりの人生に寄り添う支援の在り方を模索する中で出会ったのが、タウと、タウが取り組む「願いのくるま」の活動でした。
森重紗織さん

— 他の企業も検討されたと思いますが?

森重 企業への転職を考えた際、「ここなら自分の経験と保健師資格を活かしながら新しい支援に挑戦できる」と直感したため、応募したのはタウのみでした。
一般的に産業保健師は経験者が求められることが多い中で、タウは未経験であっても挑戦したいという想いを受け止めてくださったことが大きく、今こうして働かせていただいていることを大変ありがたく感じております。
これまでの救急医療では「命を救うこと」が最優先でしたが、現在はその先にある「その人らしい最期の願い」を支える役割へと変わり、同じ看護でありながらも、向き合う価値の広がりを実感しています。
病院では実現が難しかった「最期に叶えたい想い」に寄り添い、それを形にできたときに見られるご利用者様の笑顔は、今の私にとってやりがいにつながっています。
利用者さんからいただいたフォトブック
利用者さんからいただいたフォトブック

— 株式会社タウで働き始めてからどのようなやりがいを感じましたか?

森重 入社してまず感じたのは、積極的に挑戦の機会を与えてもらえる環境であり、企業での働き方や産業保健師としての役割についても、一から学びながら実践できる機会を多くいただきました。
ビジネスの視点と医療の視点の両方を経験することで、これまでの看護観に新たな気づきが加わり、自分自身の価値観が更新されている実感があります。
願いのくるまの運営においても、前例にとらわれず「どうすれば実現できるか」をチームで考え続ける文化があり、そのプロセス自体が学びであり成長につながっています。
会社に育てていただいているという感謝を、社員の健康支援や「願いのくるま」を利用される方々の笑顔へと還元していきたいという想いで、日々この仕事に向き合っています。
森重紗織さん

— 柳谷さんと鈴木さんは介護職員初心者研修を取得されたと伺ったのですが、どのような目的や背景で取得されたのでしょうか?

柳谷 私と鈴木は、運営者であると同時に現場を理解する立場でありたいという考えから、2022年頃に会社として介護領域への貢献を模索する中で、介護タクシー事業に取り組んだ経験があります。
「車を通じて何ができるか」を追求する中で、実務に必要な知識と技術を身につけるために介護職員初任者研修を修了し、実際にドライバーとして現場に立ちました。
資格を取ってから活動を始めるのが本来の順序かもしれませんが、私たちはまず「最期の願いを叶えたい」という一心で走り出し、実際に利用者様に寄り添い、現場の難しさや責任の重さを肌で感じたからこそ、介護職員初任者研修は私や鈴木にとって、血の通った学びになりました。
「あの時、もっとこうして差し上げられたのではないか」「この介助方法を知っていれば、もっと楽に移動させてあげられたはずだ」など、活動を通じて抱いていた問いへの答え合わせをするように、140時間の講習を受けました。
その後の3年間で約300件の送迎を担当し、病院から療養施設への長距離移動なども経験しましたが、その中で学んだのは単なる運転技術ではなく、利用者様の状態に応じた介助や安全への徹底した配慮の重要性でした。
現在は事業としての介護タクシーは終了していますが、そこで培った「介助力」と「安全に対する意識」は、願いのくるまにおける付添い支援に活かされています。
私たちは単なるボランティアとして活動しているのではなく、現場を知る者としての責任と経験をもとに、一人ひとりの願いに誠実に向き合いながら、安全に目的地までお連れする体制を築いています。
柳谷さんと鈴木さん

「願いのくるま」の活動内容|付添い外出支援の流れと対象者

— 願いのくるまのサービスはどのような流れで利用できるのでしょうか?

鈴木 ご利用のきっかけは医療従事者からのご紹介が多く、ホームページに掲載しているクリニックは、これまで実際に連携しながら「願い」を叶えてきたパートナーであり、信頼関係の中でつながってきた大切な存在です。
公式サイトのフォームからお申し込みいただいたのち、その内容をもとに事前面談を実施し、現在のご体調や生活状況を丁寧に確認します。その後、事務局内でのブリーフィングを通じて、安全面を含めた実施可否をチームで慎重に判断し、対応可能と判断した場合には旅程の作成など具体的な準備を進めていきます。移動手段の確保だけでなく、目的地のバリアフリー状況の確認や医療面の調整を含めて一貫してサポートを行い、当日のお迎えから帰宅までサポートしています。
この一連のプロセスすべてを含めて、利用者様にとってかけがえのない一日となるよう、丁寧にコーディネートしています。
一般社団法人 願いのくるま

— サービスの対象者はどのような方なのでしょうか?

鈴木 まずは終末期(ターミナルケア)という人生の貴重な時間を過ごされている方であることです。
移動の安全を守るために、通常の車椅子やリクライニング車椅子を使用して、しっかりと座った姿勢(端座位)が保てる方であることを前提としています。
また、医療との連携も欠かせず、主治医の先生から外出の許可をいただいていること、そして私たちが準備している「医療情報確認書」という書面に、専門的な観点からの助言をいただけることをお願いしています。
そして、私たちが何よりも、一番大切にしているのが「ご本人の意思確認ができること」です。たとえ体が不自由であっても、たとえ声に出すことが難しくても、ご本人が「あそこへ行きたい」「これが見たい」という確かな想いを持っていることこそが、私たちを動かす原動力であり、この活動が「医療」ではなく「人生の輝き」になるための最も重要な鍵だと考えています。
鈴木蓮さん

— 願いのくるまはこれまでに何名ほど利用されたのですか?

鈴木 2018年に始まった本活動も、おかげさまで9年目を迎え、これまでに107名の方の「願い」に寄り添ってきました。
この数字は単なる回数ではなく、それだけ多くの方の人生の節目に関わらせていただいた証であり、私たちにとっては何よりの財産だと考えています。
活動の中では、コロナ禍による移動制限など、思うようにいかない時期もありましたが、そのような状況下でも感染対策を徹底し、「どうすれば安全に願いを叶えられるか」を模索し続けてきました。
その結果、以前は月1回だった運行頻度も、現在では月2回へと拡大しており、回数を増やすこと自体が目的ではありませんが、このサービスを必要としている方がいる限り、できる限り多くの願いに応えていきたいと考えています。
利用者の家族から寄せられたお手紙
利用者の家族から寄せられたお手紙

— 鈴木さんが初めてこの活動に関わったのはどのような方だったのでしょうか?

鈴木 私が初めてご一緒したのは、脳腫瘍を患う6歳の女の子で、顔に麻痺があり、言葉も一語ずつ絞り出すように話される状態だったため、初めてお会いした時はほとんど表情の変化が見られませんでした。
彼女の願いは「遊園地に行きたい」というもので、現地で「楽しい?」と声をかけたとき、彼女は私を見つめて、ゆっくりと笑顔を見せ頷いてくれ、写真を撮る際にも、一生懸命に口角を上げようとする姿がとても印象的でした。
私自身、同じ年頃の子どもを育てていることもあり、その笑顔の裏にある日々の治療や苦しさを思うと、胸が締め付けられるような思いでした。
限られた時間ではありましたが、その一日はご本人にとっても、ご家族にとってもかけがえのない時間となり、ご両親が涙ながらに喜ばれていた姿は今でも忘れらず、私はこの経験を通して、「笑顔が持つ力」と、その一瞬を支えることの価値を、改めて強く実感しました。

— 森重さんはいかがでしょうか?特に印象に残っている利用者様を教えてください

森重 特に印象に残っているのは20代で白血病を患い、在宅で療養されていたご利用者様で、日々輸血や治療を続けながら、「家族とテーマパークへ行きたい」という願いを持っておられました。
出発前には訪問看護師の方から「徐々に状態が悪化している」と伺っており、まさに最後の機会とも言える状況でのサポートでした。
しかし、現地に到着した瞬間、それまでのご様子からは想像できないほどの力が湧き上がり、表情が一気に明るくなったのです。大好きなキャラクターに会ったときには自ら手を挙げて喜ばれ、食べ歩きまで楽しまれていました。
事前に車椅子のまま利用できるアトラクションを細かく調整していたこともあり、その時間の中で彼女は「患者」ではなく、一人の「女の子」として過ごすことができたのだと思います。
医療従事者として命をつなぐことは重要ですが、その命を「どう輝かせるか」も同じくらい大切です。この経験を通して、人の内側にある力を引き出すこの活動の価値を、改めて強く実感しました。
運営事務局におけるミーティング

— 願いのくるまの活動のアピールポイントについて教えてください。

鈴木 私たちがこの活動において大切にしているのは、ご本人の「今、この瞬間の気持ち」であり、安全な移動ルートの設計やバリアフリーの確認、医療職との連携など、準備には多くの工程があり、通常は2週間ほどの期間をいただいています。
一方で、終末期の方々にとって時間は非常に限られており、「2週間後では間に合わないかもしれない」というケースも少なくないため、状況に応じて最短3日、平均でも1週間程度で活動できるよう、事務局全体で迅速に対応しています。
身体状況の確認から移動先の受け入れ体制まで、一つひとつの課題を丁寧にクリアしていく必要があるため決して簡単ではありませんが、「できる限り願いを形にしたい」という想いで取り組んでいます。
実際に「行けると決まった瞬間から表情が明るくなった」という声をいただくことも多く、この準備期間そのものが、すでに大切な時間の一部であると感じています。
利用者さんとの写真
森重 看護には「終末期看護」という分野があり、人生の最期をどう過ごすかに寄り添うことは非常に重要な役割を果たしているのですが、これまで病棟で患者様と向き合う中で、「あの景色を見たい」「思い出の場所に行きたい」といった願いを耳にしても、制度や安全面の制約から実現できず、ただ共感することしかできない場面が多くありました。
もちろん医療現場における安全管理は不可欠ですが、その一方で「命を守るために、人生の最後の願いを諦めてもらう」という状況に、葛藤を感じていたのも事実です。
しかし、願いのくるまの活動に関わるようになってからは、医療的なリスクや制約を前提にしながらも、準備や連携、専門性によって一つずつ乗り越えていくことで、「難しい」とされていた願いが現実の体験へと変わっていく瞬間に立ち会えました。
私たちの役割は単なる外出支援ではなく、「行きたい」という想いを「行けた」という事実に変えることにあり、医療の枠を補完しながら、その人らしさに寄り添う看護を実現できていると感じています。
願いのくるま

ターミナルケアにおける外出支援の可能性と「願いのくるま」が目指す未来

— 願いのくるまの将来的なビジョンを教えてください。

柳谷 願いのくるまの原点である「人生の最期に寄り添い、願いを形にする」という純粋な想いや軸は、今後も何があっても変えずに、利用者様の一つひとつの願いを丁寧に、誠実に叶え続けていきたいと考えています。
利用者様の願いは十人十色ですが、「今の体制では難しい」と決めつけるのではなく、どうすれば実現できるかを考え、「対応できる幅」をもっと広げていきたいと考えます。
時には自動車部品の商材や輸出を手掛ける私たちのネットワークを活かし、時には新たな介助の工夫を取り入れながら、「叶え方のバリエーション」を増やすことで、より多様な願いに応えられる組織へと進化していきたいと思っています。
そして、私たちは本活動を一部の担当者だけのものにせず、組織全体で共有することで、利用者様の想いに直接寄り添う機会を作り、社員の心がより豊かになるような環境作りを心掛けています。
願いのくるまが、そうした精神を象徴する存在として、これからも全国の道を、そして多くの人の心の中を走り続けていくことこそが、私たちの描く未来の姿だと思っています。
柳谷朋伸さん

— 医療従事者の方に向けてメッセージをお願いします。

鈴木 活動の中で強く心に残っているのが、お食事の場面での利用者様の変化でして、普段はご自宅では流動食が中心で、なかなか思うように食事が進まないという方でも、いざ外へ出て、ずっと食べたかったもの、その場所でしか味わえないものを目の前にしたとき、信じられないような笑顔を見せてくださることがあります。
外に美味しいものを食べに行くという行為は、在宅で終末期を迎えられている方にとって、単なる食事以上の「大きな希望」になるのだと痛感しました。
五感で外の空気を感じながら、自分の意思で「美味しい」と味わう。その瞬間、利用者様の中に生きる活力が満ち溢れるのを、私たちは目の当たりにしてきました。
こうした感動の瞬間に立ち会うたびに、この活動の意義を再確認できるからこそ、先日参加した学会などを通じてもっと多くのドクターや看護師さん、そして地域のケアマネジャーさんたちに「願いのくるま」を知っていただきたいと強く願っています。
現場の皆さんが支えている利用者様の「最期の願い」を、食の喜びや思い出の景色という形にするために、私たちはこれからも走り続けます。
鈴木蓮さん、柳谷朋伸さん、森重紗織さん

— 療養中の方やそのご家族へ、伝えたい思いをお聞かせください。

森重 日々、ご利用者様と向き合う中で強く感じているのは、人が自分の「本当の願い」を一番話しやすいのは、やはり、いつも側にいるご家族や、住み慣れた家で支えてくれる在宅療養のスタッフの方々だということです。
「もう一度あの場所に行きたい」「あの景色をみんなで一緒に見たい」など、普段は周りに気を使って胸にしまっている本音も、ふとした瞬間に、大切な人の前ではこぼれることがあります。
そんな時、ご家族は「叶えてあげたい」と心から思う一方で、「でも、この体調では無理だ」「何かあったらどうしよう」と、一歩立ち止まってしまうかもしれません。
しかし、その願いを「難しい」と決めつけてしまう前に、一度私たちに聞かせていただきたいと思っています。
私たちは、その方の人生観や価値観を何よりも大切にしており、病院のベッドの上だけでは完結しない、その人らしい「最後の一歩」をどうすれば形にできるか、看護師として、そして事務局のチームとして、医療と安全の観点から全力で知恵を絞ります。
私たちが共に叶える「願い」は、ご利用者様本人のためだけのものではなく、共に旅をし、笑い、同じ景色を眺めたその時間は、見送った後のご家族にとっても、一生消えない「心の支え」になると信じています。
「あの時、本当に行けてよかった」という想いが、いつか悲しみを温かな思い出に変えてくれるはずです。
どんなに小さな、ささやかな願いでも構いませんので、希望の選択肢があることをどうか忘れず、まずは気軽にお話しいただけることを、私たちは心からお待ちしています。
鈴木蓮さん、柳谷朋伸さん、森重紗織さん
おうちde医療 in 立川 に出演!

一般社団法人 願いのくるま|終末期外出支援の概要

一般社団法人 願いのくるま

願いのくるまとは

願いのくるまとは、ターミナルケアを受けている方を対象に、
その方が望む場所へと無料でお連れするボランティア活動です。
株式会社タウを中心とする協賛企業の支援を受けて運営しています。

ご利用方法

 ご利用対象者 
・ターミナルケアを受けられている方
・行きたい場所があるがひとりではその実現が困難な方
・利用者自身が願いの実現を希望されている方

 ご利用条件 
・目的地が関東・東海・関西にあること
・日帰り旅行であること
・ご本人に行きたい場所を確認できること
・ご本人より安定的に体調の変化や意思表示が確認できること
・集団発生の可能性がある感染症を患っていないこと
・ご本人、ご家族、医師の同意があること
・旅行中に発生した不測の事態に自費で対処できること
※詳細なご利用条件につきましては事務局までお問い合わせ下さい。

 ご利用の流れ 
① お申込み
・電話またはメールの場合
住所、氏名、電話番号、ご利用者様の年齢、願いの内容を事務局へご連絡ください。
・申込みフォームの場合
こちらのフォームに必要事項をご記入のうえお申込みください。

② 旅程作成
ご利用者様を安全に願いの場所へとお連れするため、願いを叶えるための旅程を作成いたします。

③ ご面談
ご利用者様・ご家族・スタッフで面談を行い、ご利用条件を確認します。

④ ご出発
当日は、スタッフがご利用者様の元へお迎えに上がります。
一生の思い出と素敵な旅になるよう精一杯サポートさせていただきます。

お問い合わせ

願いのくるま事務局
〒330-6010 埼玉県さいたま市中央区新都心11-2LAタワー10F
TEL:048-601-0852
WEB:https://www.negai.org/

柳谷朋伸さんのプロフィール

柳谷朋伸さんのプロフィール

経歴:

1986年 仙台大学卒
2000年 株式会社タウ入社 仙台支店営業課配属
2002年 札幌支店営業課配属
2003年 販売部販売課配属
2009年 埼玉支店営業課配属
2001年 人事部人事課配属
2025年 総務部総務課配属
2026年 CSR推進課兼任
現在に至る

資格・学会:

介護職員初任者研修修了
普通自動車第二種免許取得

鈴木蓮さんのプロフィール

鈴木蓮さんのプロフィール

経歴:

2022年 株式会社タウ入社 人事部配属
2024年 総務部CSR推進課配属
現在に至る

資格・学会:

介護職員初任者研修修了
普通自動車第二種免許取得

森重紗織さんのプロフィール

森重紗織さんのプロフィール

経歴:

2013年 看護大学卒業
2013年 大学病院 救命救急科配属
2020年 総合病院 急性期外科配属 コロナ流行により、コロナ病棟へ異動
2024年 株式会社タウ入社 総務部健康管理課配属
現在に至る

資格・学会:

看護師
保健師

FAQ|終末期外出支援・付添い・ターミナルケアに関するよくある質問

Q1. 終末期外出支援とは何ですか?
A. 終末期外出支援とは、病気や身体機能の低下により自力で外出することが難しい方に対して、「もう一度行きたい場所へ行きたい」「大切な人に会いたい」といった願いを実現するために行う外出サポートです。医療・介護の状況を確認しながら、必要に応じて看護師や介護職などが付添い、安全に配慮して外出を支援します。
Q2. ターミナルケアを受けている人でも外出できますか?
A. ターミナルケアを受けている方でも、本人の体調や主治医の判断、移動中の安全確保が可能であれば外出できる場合があります。終末期外出支援では、病状や医療的ケアの有無、移動時間、目的地の環境などを事前に確認し、無理のない範囲で外出計画を立てます。本人の希望を尊重しながら、安全性とのバランスを考えることが大切です。
Q3. 終末期外出支援では、どのような場所へ行くことができますか?
A. 行き先は、本人が希望する場所に応じて検討されます。たとえば、自宅、思い出の場所、家族との食事場所、海や公園、お墓参り、結婚式や家族行事などが考えられます。ただし、移動距離、体調、医療的ケアの必要性、目的地のバリアフリー環境などによって対応可否が変わるため、事前の相談と調整が重要です。
Q4. 終末期外出支援には誰が付添いますか?
A. 終末期外出支援では、本人の状態に応じて、家族、看護師、介護職、医療・介護に関わる専門職、支援団体のスタッフなどが付添います。酸素吸入、点滴、車いす移動、体位変換などの配慮が必要な場合は、医療的な知識を持つ人の同行が望ましいこともあります。安心して外出するためには、本人の状態に合った付添い体制を整えることが大切です。
Q5. 終末期外出支援を利用する際に、家族が準備すべきことはありますか?
A. 家族は、本人の希望する行き先や目的、体調、普段のケア内容、必要な医療機器や薬、移動時に不安な点などを整理しておくと相談がスムーズです。また、主治医や訪問看護師、ケアマネジャーなどに外出の可否や注意点を確認しておくことも重要です。終末期外出支援は、本人の願いを叶えるために、家族と支援者が一緒に計画を立てることから始まります。