ウィーブ訪問看護ステーション 石松彩乃代表(訪問看護ステーション:北九州市八幡西区・八幡東区・若松区) 最終更新日:2025/06/30

注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第20回目は2025年4月、北九州市八幡西区にて「ウィーブ訪問看護ステーション」を創業された石松彩乃代表/看護師です。これまでの看護師としての歩み、創業、そして今後への展望について思いを熱く語っていただきました。
看護師を目指したきっかけ
— 看護師を目指したきっかけを教えてください。
私が看護師を目指したのは、看護師の母の影響でした。幼いころから、母が看護師として働いている姿を見て育ったのですが、大変だったことやつらかったことなどはあまり聞いたことがなく、楽しそうに働いていた印象が残っているんです。
もしかしたら母が面倒見の良い性格だったからなのかもしれません。しかし、誰かのために働く母の姿への憧れが、看護師を目指したきっかけかなと思っています。
— 何歳くらいから看護師になりたいと思い始めたんですか?
何歳くらいからなのかはっきりとは覚えていないのですが、小学生くらいにはもう看護師になりたいと思っていた気がします。
元々、人とお喋りするのが好きなので、「学校の先生になりたい」と考えていた時期がありました。しかし、最終的には地元の福岡県立大学看護学部に進学し、看護師になる道を選びました。
— 大学で訪問看護の実習はありましたか?
私が学生だったころはすでに地域医療の重要性が注目されており、訪問看護の実習も取り入れられていました。当時から「訪問看護は面白い」と思っていましたが、「いきなり新卒で訪問看護は難しい」というイメージを抱いていて、脳神経外科や循環器科のようなあえて複雑な領域で働いてみたいと考えていました。

東京の病院での挑戦と成長の日々
— 大学卒業後の就職先についてはどのように考えていましたか?
私が大学を卒業するころは母が現役の看護師として働いていたため、母が勤める病院に就職しようと思っていたんです。
ただ、たまたま参加した就職説明会で、NTT東日本関東病院に興味を抱き、就職するつもりがあったわけではないのですが、興味本位でインターンシップに行ってみたんです。
すると、東京はこれまで生活してきた地元の環境とはまったく違っていることに気付き、こんな世界もあるんだと驚きました。もっと広い世界を知りたい、視野を広げたいと考えるようになり、母の勤めていた病院と、NTT東日本関東病院の両方の採用試験を受けました。
— NTT東日本関東病院への就職を選んだのには決め手があったのですか?
内定をいただく前の時点では、正直これといって決め手があったわけではありませんでした。ただ、両親から東京の病院は遠いからと就職することを反対されていたんです。
私自身も、NTT東日本関東病院への興味もあるし、母と同じ病院で働いてみたいという思いも捨てきれなくて、最終的には「先に内定通知を受け取った病院に就職する」と賭けのような形で両親を説得しました。
そして、NTT東日本関東病院のほうが内定通知が1日早く届き、これも縁だと思ってNTT東日本関東病院に就職することにしました。
— NTT東日本関東病院で働き始めてからはどうでしたか?
見るもの全てが新しかったですね。同期にも恵まれましたし、病棟の雰囲気もすごく良くて。
脳神経外科・脳血管内科・神経内科の混合病棟に配属されてとても忙しかったのですが、先輩たちは丁寧に指導してくださいました。
ただ、入職1年目は毎日勉強していても知識不足を痛感することが多く、特に大変でした。

— 訪問看護ステーションで働きたいと考えるようになったきっかけはありますか?
上京した段階でいつか地元に戻ろうとは思っていたのですが、訪問看護についてはあまりイメージしていませんでした。
しかし、私が勤めていた病棟では脳血管疾患や神経難病などの患者さんが多く、介護負担や在宅での生活環境などから退院が難しいケースもたくさんありました。
日々、退院支援の難しさを目の当たりにしていると、「安心して過ごせる場所を患者さんに支援できる看護師になりたい」と考え方が変わってきたんです。
「暮らしに焦点を当てたケアや退院後の生活支援をするなら訪問看護だ」という思いから、病院を3年ほど勤めた後、同じく東京のウィル訪問看護ステーションに転職しました。
訪問看護師としてのキャリアの始まり
— 転職先の訪問看護ステーションはどのように選んだのですか?
インターネットで訪問看護ステーションを検索すると、小児や精神など年齢や疾患を問わず幅広く対応されているところが多くあることを知りました。中でもウィル訪問看護ステーションはホームページの雰囲気がとても良く、温かみのある印象を受けました。
まずは実際の現場を見てみたいと思い、見学を兼ねて訪問に同行させていただきました。そこで出会った訪問看護師の雰囲気や、利用者さんとの丁寧であたたかい関わり方が印象的で。すごく「良いな」と感じたので、2020年7月から働き始めることにしました。
こちらの事業所では訪問看護の基礎を教えていただき、訪問看護の魅力だけでなく、現場で判断することの難しさについても学べました。
最初はプリセプター(指導担当の先輩看護師)や他の先輩看護師に同行する形で訪問させていただいて、毎日必死でした。健康管理を目的とした利用者さんであれば3回くらいの同行訪問で独り立ちできましたが、医療依存度が高い利用者さんの場合、3回以上同行訪問させてもらっていました。
高齢の方や小児の利用者さんと関わることが多かったのですが、私自身は特定の分野にこだわりがあるわけではなく、どの世代、どの疾患の方とも関わっていきたいという思いが強くありました。訪問看護の奥深さにどんどん惹かれていき、気付けばすっかりのめりこんでいました。

— 訪問看護師として独立したいと考えたのはいつ頃なのですか?
入職から1年ほど経ったころ、新設サテライトの立ち上げに関わらせていただき、「私もいつかやってみたいな」という気持ちが芽生えたんですよね。もちろんそのときはまだまだ先の話だと思っていて。「地元に帰ったらいつか自分のステーションを持ちたい」くらいの気持ちでした。
東京での経験を経て、そろそろ両親の近くで過ごしたいなという気持ちもあり、2022年に地元へ帰ることにしたんです。
— 地元に帰ってからはどのように働かれたのですか?
「東京での生活はとても楽しいけれど長く住み続けるには少し大変そうだな」というイメージがあって、やはり長く住むなら地元の北九州だと思っていました。しかし、北九州がいくら住み慣れている大好きな街でも、看護師として働いたことがなかったので、東京とは違う地域柄があるのではないかと。
そこで、まずは北九州で働いて地域について知ろうと思い、近所の病院に併設されている訪問看護ステーションで働き始めました。

入職当初は、自分が看護師として地域住民の方の支えになれているということにやりがいを感じていました。
ただ、現場に出ながら東京での学びを深めていくうちに「この利用者さんにはもっとこういう看護がしたい、こうすればもっと良くなるかもしれない」と感じることも増えてきて、私の看護観はより明確なものとなっていきました。
その中で、そんな思いを共有できる同僚たちと出会い、お互いの看護観を語り合い、信頼関係を深め合っていきました。
スタッフ同士で意見を伝え合う機会もありましたが、私たちの想いとステーションの方向性が少しずつすれ違っていることに気付きました。
2024年12月ごろ、志を同じくする3名の看護師とともに退職し、ステーション立ち上げの準備を始めました。
今の素晴らしいメンバーと出会えたのは、この職場があったからこそだと心から思っています。
ウィーブ訪問看護ステーションの開設へ
— 実際にウィーブ訪問看護ステーションの開設はどのように進んでいきましたか?
開設の準備は、必要なものを一から調べていく段階から始まりました。約3か月間にわたって準備を進め、当初の予定通り2025年4月の開設が実現しました。
今では私の母も一緒に働いており、現場に出ながら、事務の仕事も兼務してもらっています。長年の経験があるので、困ったときにはいつも的確なアドバイスをくれて、とても心強い存在です。
ありがたいことに開設前から数名の利用者さんからご依頼をいただいていましたので、ステーションを開いたその日から訪問看護を始めることができました。ただ、現在は利用者さんの数が伸び悩んでおり、積極的に営業活動を行っています。
近年、訪問看護ステーションが増えていることもあり、新規のご依頼をスムーズにいただくのは難しいと感じています。まずは居宅介護支援事業所や病院の地域連携室、クリニックなどに「ウィーブ訪問看護ステーション」を知ってもらうことが重要だと考えています。

— ウィーブ訪問看護ステーションにこめる思いを教えてください。
一緒に退職したメンバーとご飯に行った際に、ステーション名を考えました。ステーション名には、「利用者さんの思いや人生に寄り添い、その人らしい生活をつないでいきたい」という想いを込めたかったんですよね。
そこで、「織る」「編む」「紡ぐ」といった意味がある「ウィーブ(weave)」をステーション名にしようと決めました。
— ウィーブ訪問看護ステーションの魅力はどこだと思いますか?
ウィーブ訪問看護ステーションは、志を同じくして立ち上げたメンバーが在籍しており、利用者さんに寄り添った丁寧なケアの提供を心がけています。
利用者さん一人ひとりの個別性に富んだ対応で、利用者さんやご家族と共に歩んでいきたいと考えています。
また、ベテラン看護師が多く、看護師としての長年のキャリアを活かして幅広い疾患に対応できるのもウィーブ訪問看護ステーションの強みです。

— 外部発信はどのように行っていますか?
外部への発信は気持ちのこもったものを作りたいので、営業用のチラシやリーフレット、ホームページは自分たちで作っています。特にホームページはステーションの顔にあたる大事なものですし、ご依頼いただく際の信頼にもつながると思っています。
ウィーブ訪問看護ステーションの未来に向けて
— 事業規模の拡大は視野に入れていますか?
現在のところ、そういったことはまだ考えていません。今はまず自分についてきてくれたメンバーが楽しく仕事ができるように、働くスタッフの満足度を維持したいです。
また、利用者さんやご家族をはじめ、地域の他職種の方に「やっぱりウィーブさんに頼んでよかったね」って思っていただけるような質の高いケアの提供が目標なので、近々、スタッフの看護スキル向上のための勉強会をステーション内で企画しています。
— 未来に向けて訪問看護の課題や悩みはありますか?
訪問看護では利用者さん一人ひとりの考え方や人生、生活に深く関わります。その分、看護のかたちに1つの答えがあるわけではないので、関わり方に悩むことが多いですね。
もちろん、ウィーブ訪問看護ステーションではスタッフで話し合う場を設けているので、自分一人で判断しなければならないわけではありません。意見を出し合いながら、とことん追求していけるのは、ウィーブ訪問看護ステーションの強みです。
あと、医療の知識・技術以外に、コミュニケーションの方法や制度の理解、多職種との連携、地域とのつながりなど幅広い学びが求められるのは、訪問看護ならではの難しさですね。

— ウィーブ訪問看護ステーションで目指している看護について教えてください。
ウィーブ訪問看護ステーションでは、「想いをつなぎ、人生を紡ぐ」というコンセプトに基づいて、利用者さんやご家族の人生そのものや不安、迷いに寄り添い、その人らしい生活を一緒に支えることを目指しています。
多くの事業所の中から、ウィーブ訪問看護ステーションを選んでくださった方に対して、責任や誇りを持って、丁寧な訪問を積み重ねていきたいと思っています。
— 最後に地域住民の方へメッセージをお願いします。
私たちは地域住民の方が自分らしく暮らせることを大切にしたいと思い、日々訪問させていただいています。病気や障がいがあっても、普段の暮らしをその人らしく続けられるように、看護の力で支えられる存在を目指しています。
ウィーブ訪問看護ステーションでは八幡西区を中心とした周辺エリアで、訪問に対応しております。遠すぎるエリアですと訪問が難しい場合もありますが、「行けるところには行きたい」という気持ちで動いていますので、エリアについてはお気軽にご相談いただけたらと思います。
ウィーブ訪問看護ステーション

石松彩乃代表のプロフィール
経歴:
2017年 福岡県立大学看護学部卒業 看護師・保健師資格取得
2017年 NTT東日本関東病院 脳神経外科・脳血管内科・神経内科勤務
2020年 ウィル訪問看護ステーション江東サテライト・大島サテライト勤務
2022年 地元北九州に戻り、近所の病院の訪問看護ステーションに勤務
2024年 訪問看護ステーションを退職し、株式会社F-weave設立
2025年 ウィーブ訪問看護ステーション開設
2017年 福岡県立大学看護学部卒業 看護師・保健師資格取得
2017年 NTT東日本関東病院 脳神経外科・脳血管内科・神経内科勤務
2020年 ウィル訪問看護ステーション江東サテライト・大島サテライト勤務
2022年 地元北九州に戻り、近所の病院の訪問看護ステーションに勤務
2024年 訪問看護ステーションを退職し、株式会社F-weave設立
2025年 ウィーブ訪問看護ステーション開設
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