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【PICK UP!在宅医療機関 002】大江戸江東クリニック 岡田章佑理事長 最終更新日:2024/12/04

【PICK UP!在宅医療機関 002】大江戸江東クリニック 岡田章佑理事長
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第2回目は2021年に東京都江東区にて「大江戸江東クリニック」を開業された岡田章佑理事長です。開業までの道のり、そして今後の在宅医療にかける思いを熱く語っていただきました。
地元江東区の在宅医療を発展させたい
— 大江戸江東クリニックの成り立ちについて教えてください。
2021年の3月に開業をしました。もともと僕が江東区出身なので、まずは地元の在宅医療をしっかり進めていきたいという想いでクリニックを立ち上げました。最初はここから数百メートル離れた場所にクリニックがあったのですが、現在の場所に移動をして、いまに至ります。
立ち上げ当初は知られていなかったので、しばらくはだいぶんのんびりと過ごしていました(笑)ただ、1件1件丁寧に診ていくことを通して、少しずつ信頼をいただき、夏くらいから忙しくなってきましたね。
— 最初は何人のスタッフで開業されたのですか?
スタッフは僕を含めて3人で開業しました。開業後1年で12人くらいになりましたね。おかげさまで現在(2024年11月)は、大江戸浦安クリニックも含めると90人ほど(非常勤も含む)の規模になっています。
開業当時
夜間も希望があったら必ず対応できるように
— 立ち上げから現在までとても順調に進んできている印象を受けたのですが、これは岡田先生が当初に計画していた通りだったのですか?
当初の計画というか予定よりも、予想を超える反響をいただいている感じはします。
その要因として、立ち上げ当初と現在では少し変わっている部分もあるのですが、眼科、耳鼻科、皮膚科、精神科など複数の診療科の医師がいること。それから、医師以外の多くの専門職、臨床心理士、管理栄養士、救急救命士、放射線技師、臨床検査技師がいることが考えられます。また、それによって、フットワーク軽く往診にも対応できますし、夜間も希望があったら必ず対応していることも要因の一つと感じています。
診療スタッフ
在宅医療に必要な医療デバイスを用意する
— クリニックの特徴を教えていただきましたが、他にもありましたら教えてください。
僕らの一つのテーマに「在宅医療でできるバリエーションを増やしていく」ということがあります。なんでもかんでも新しいことをやったらいいということではないのですが、希望がある患者さんには応えられるようにはしたいと思っています。そのために、「必要な医療デバイスを用意する」ということは心がけているところです。「医療デバイス」というのは、人も物(機械)もそうです。例えば専門科の先生につないだり、必要な治療の機械を揃えたりしています。
— 専門科の先生につないだり機械を揃えたり、在宅医療のニーズに応えたいという気持ちと、経済的な面のバランスは、現実的なこととして大変ではありませんか?
そこはなかなか厳しいところではあるんです(笑)。ですが、やはり求められたものに応えていくことを大事にしたい。なのでそこは度外視の部分もあります。
大事なのは、在宅医療をやっていくうえで、医療的に最も正しいと思う判断が、患者さんにとってはそうでないこともあるので、そこを患者さん本人やそのご家族と話して方向性のすり合わせをすることです。
あとは、うちのクリニックはACP(※)の取り組みもやっていますが、関係する事業所さんの想いも吸い上げながらやっていく、というところはクリニックの方針としてチーム全体で大切にしています。
(※ACPとは・・・Advance Care Planningの略。将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、 本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組みのこと。 日本医師会HPより引用)
「大江戸江東クリニック」外観
相互扶助をテーマとして
— 「大江戸江東クリニック」というネーミングに江戸情緒のようなものを感じました。そのあたり、何か想いがあるのでしょうか?
はい。僕らは「都市型の在宅医療の一つの形」というものを作っていきたいと考えています。在宅医療をやっていくうえでいろいろ考えたときに、江戸時代の長屋の文化が思い浮かびました。狭いところに人がたくさんいて、でも困ったときには隣人が助けるという。そういう相互扶助のような考え方は、在宅医療と親和性がすごく良いものなのではないかと思い、クリニックの名前に「大江戸」と入れました。
— なるほど。いわゆる現在の「地域包括ケア」のようなものが江戸には自然にあったのですね。
そうですね。いまもあるにはあると思うのですが、やはり少しずつ形は変わってきていて。これからの時代で、もしかしたらデジタル機器を活用したものになるかもしれない。いろいろな形があると思うのですが、新しい形というのは僕らが探していくものだと考えています。ただ、相互扶助という考え方は大事にしていきたいと思っています。
「医療法人社団Plexus」ロゴマーク
「この選択をしてよかった」と思ってもらえるように
— ここまでにもお伺いした部分はありますが、クリニックの取り組みや概要を改めて教えてください。
はい。診療地域は江東区、このクリニックを拠点として半径16㎞圏内です。患者さんはやはり江東区の方が多いですね。医師一人あたり、一日で10から12件を訪問して診療しています。患者さんの人数としては月に700人ほどになります。
多いのは在宅医療の中でも重症度の高い患者さんですね。もちろん、慢性疾患の方もいらっしゃるのですが、癌の末期でいろんな医療機器がついている方であったり、輸血が必要な方であったり。中には、「他の病院にかかっていたけれど、在宅医療を受けるのが難しいと言われた。」とうちのクリニックに来られる方もいます。
直近の看取りの件数は、220~230人くらいですね。よりよい最期の形というのをお手伝いしたいといつも思っています。
— お看取りにあたって心掛けていることについて教えてください。
クリニックを開業して当初は全部僕一人でお看取りをしていました。ですので、多いときは僕一人で年間200人くらい。やはり、お看取りをするときに大事なことの一つは、遺された家族が「この選択をして良かったな。」と思ってもらうことだと思っています。そのために必要な声掛けやIC(※)を重ねていくというところはいつも気を付けていますね。
(※ICとは・・・Informed Consentの略。医療用語で「インフォームド・コンセント」を意味し、「説明を受け納得したうえでの同意」という意味がある。GoogleAIより引用)
診察時の様子(左が私)
在宅医療を喜んでもらえるサービスに
— 時代が遡りますが、先生が「医者」を目指したきっかけを教えてください。
はい。小学5、6年生くらいの頃だったと思います。漠然と「家族や友達がいなくなるのは嫌だな」と思って、「それじゃあ自分が医者になればいい」と思ったのがきっかけです。
誰か身近な人の「死」があったわけではなく、子どもの頃って、例えば夜に電気が消えて暗くなると「自分が死ぬのが怖くなる」とか「死」についての漠然とした恐怖を感じることがあると思うのですが、僕の場合はそれが「周りの人がいなくなるのが怖いな」でした。だから、身の回りの人に何かできたらいいなと思って、そこで医者になろうと決めました。
— それで医学部に入られて卒業されて。実際に医者になってからは、どのような診療科目を担当されたのですか?
最初は消化器外科を担当しました。救急救命の道に進もうかなと思ったこともあったのですが、自分の専門を持って手術などに取り組んでみたい、その中で汎用性が高い領域を学びたいという思いがあり、初めに消化器外科を選びました。
— 在宅医療の道に進まれた経緯を教えてください。
医者になって7年目くらいのときだったと思います。消化器外科で様々な手術を担当させてもらったり、抗がん剤治療をしている中で、どういった医療がその人にとって最適なのかを悩んだ時期がありました。そのような時期に、たまたま大学の先輩のクリニックが在宅医療を行っていて、非常勤として携わることになり、そこで学ばせてもらいました。
そこでは自分が手術をした患者さんや、抗がん剤治療をしていた患者さんを自分が非常勤で携わっていたクリニックへ紹介して、自分で患者さんの自宅へ診察に行っていました。入院時だけではなく退院後も診ていく、そういうことをしていたら、外科医が在宅医療で果たす役割というものが割とあるのではないかと思うようになりました。
— では、そこからすぐに在宅医療の道に進まれたのですか?
いいえ、そこからすぐに在宅医療の道に飛び込んだわけではありません。まずは研修が終わって、そこから3年間、別の病院で外科医として働きながら、肺炎などの内科疾患について学びました。入院している患者さんの内科疾患を診るという形で内科にも携わりつつ、準備をしました。その後、在宅医療のクリニックの院長を3年近く務めて、「大江戸江東クリニック」を開業しました。開業までの準備に6~7年はかけていると思います。
— 少し漠然とした質問になりますが、開業されてから現在までの約4年間でどのようなことを感じてこられましたか?
在宅医療を始めた時は、在宅でもできることを少しずつ増やしていきたいと思っていました。せっかく在宅で医療を行うのであれば、患者さんやご家族、関係する事業所が喜んでくれるように、喜んでもらえるサービスになっていく必要があると感じました。「ただ行って、ちらっと診て帰ってくる。」では、そこにコミュニケーションは生まれませんし、やはり喜ばれはしませんよね。
「面」の医療を目指して
— 先生の考える在宅医療の課題についてお話をお聞かせください。
在宅医療って、なんとなくやってしまうと、「点」の医療になってしまうと思っています。1か月に2回訪問して、ちょっと診て、その患者さんのことがわかったような気分になってしまう。けれど、その間の時間というものもあって、そこに隠れた想いや困り事などが必ずあって、そういうものを他の事業所さんたちと連携をとって診ていくことで、「点」から「線」、「線」から「面」の医療へと知見をあげていくようにしていく必要があると感じています。
— なるほど。「点」から「線」、「線」から「面」ですね。そこに対して具体的にされていることなどはありますか?
例えば、訪問診療の後、患者さんの具合が悪くなりました。そのことを患者さんが訪問ヘルパーさんが訪ねているときに話をしました。そこで、ヘルパーさんが看護師に相談をする。そこで看護師が患者さんのもとに行ってみて、「これは先生に診てもらった方が良い。」と判断をする。こういう、「点」が埋まって行くことで「線」の医療になっていくのかなと。それで、そこに対してそれぞれの立場から「介護的な側面でこういう問題があるね」とか「社会的な背景にこういうものがあるよ」とか、「家族の問題があるよね」などを出し合って、そういったところも埋めていくことで平らになって、「面」の医療になるのかなと思います。
また、ACP(※前述)といって、その患者さんの死に対する想いやどのような形で医療を進めていきたいかというところにみんなで向き合っていこうということをやっています。これは国をあげての取り組みだと思いますが、うちのクリニックでも積極的にやっていきたいなと思っていて、そこで臨床心理士さんに入ってもらっています。そういうことをやっていくと、さらに深みのある在宅医療になるのではないかと思っています。
— 他にも先生の考える在宅医療の課題はありますか?
さきほど述べた「点」の医療になりやすいということのほかに、地方の在宅医療にはまた難しさがあると思います。本当は、都市型の在宅医療と地方の在宅医療って形が違うのですが、そこがうまくリンクするようになって、相互補完できるようになることが理想系ではありますね。そこは、またゆっくりやっていこうと思っています。
— ありがとうございました。最後に、地域住民へのメッセージをお願いします。
私たち大江戸江東クリニックは、在宅医療のクリニックとして複数の科の医師がいて、在宅でもいろんなことができるような体制をとっています。病気を患いながら過ごしていく場所として、病院もあるし、施設もあるし、自宅もあるし、どれを選んでも間違いということはないと思います。その中で、在宅を希望された方に対して、我々ができることを積極的にやっていきたいと思っています。いつでもご相談ください。

大江戸江東クリニック
〒135-0042
東京都江東区木場6丁目4番16号 バウムプラッツ201号
TEL:03-6666-2253/FAX:03-6666-2254
診療時間
平日  9:00~18:00
休診日 土曜・日曜・祝日
※土日・夜間も往診対応は可能です

WEB:https://oedo-koto.com/
岡田章佑理事長のプロフィール
経歴:
2008年 山形大学医学部卒業
2008-2013年 国際医療福祉大学三田病院
2013-2016年 国際医療福祉大学市川病院
2016-2019年 町田病院
2019-2021年 旗の台ライフクリニック院長