TC(トリートメントコーディネーター)が歯科クリニックを変える|歯科衛生士による売上アップと離職率改善 最終更新日:2025/12/29

歯科クリニックにおいて、患者との信頼関係づくりや治療内容の理解促進は、経営やチーム運営に直結する重要な要素です。歯科衛生士として臨床に携わる中で「伝えること」の重要性に気づき、TC(トリートメントコーディネーター)として多くの歯科クリニック支援を行ってきた和田奈美氏。
TCという役割が歯科クリニックにもたらす価値や、現場に入り込み仕組みを整えることで実現した売上アップ、スタッフの離職率改善の実例を紹介します。歯科衛生士の新たなキャリアの可能性や、持続可能な歯科医療のあり方を考えるヒントをお届けします。
TCという役割が歯科クリニックにもたらす価値や、現場に入り込み仕組みを整えることで実現した売上アップ、スタッフの離職率改善の実例を紹介します。歯科衛生士の新たなキャリアの可能性や、持続可能な歯科医療のあり方を考えるヒントをお届けします。
歯科衛生士として歩んだキャリアと、伝える力の重要性に気づいたきっかけ
— まずは、和田さんが歯科衛生士を目指されたきっかけから教えていただけますか?
正直にお話しすると、最初は「資格職なら食いっぱぐれないだろう」という現実的な理由でした(笑)。母子家庭で育ったこともあり、母の苦労を間近で見ていて、とにかく生活に困らない安定した仕事に就きたいという思いが強かったんです。

— 最初から歯科衛生士一本で考えていたのでしょうか?
いえ、実は当初、もっと簡単に取れそうな歯科助手の資格を取ろうと思っていました。当時の私にとっては「歯科助手さん」の方が馴染みのある言葉だったので。でも、進路について担任の先生に相談したところ、「歯科業界に進むなら国家資格である歯科衛生士の方が良いよ」とアドバイスをいただき、進路を変更して専門学校へ進むことに決めました。
— 専門学校時代はどのような学生生活でしたか?
一言で言うと、地獄のようでした(笑)。勉強さえしていれば良いというわけではなく、校則が非常に厳しかったんです。髪の色やスカートの丈など細かく指導されました。ただ、そんな厳しい環境でしたが、無事に国家試験に一発で合格し、歯科クリニックでのキャリアをスタートさせることができました。
— 実際に歯科衛生士として働き始めて、どのようなことに力を入れていましたか?
働き始めて1〜2年目の頃は、とにかく技術を磨くことに没頭していました。学会に参加したり、勉強会に行ったりして、技術があれば患者さんを治せると信じていました。最初は松戸の一般歯科で働き、その後埼玉県の歯科医院へ転職しステップアップしていきました。

— そこから考え方が変わる転機はありましたか?
はい。臨床経験を重ねる中で「技術だけでは治らない患者さんがいる」という現実に直面したんです。「治療」というと「手術をすれば治る」「薬を飲めば治る」というイメージがあるかもしれませんが、歯科治療は一度治して終わりではありません。患者さん自身の日々のセルフケアや、お口の中への意識が変わらなければ、せっかく治療してもまた悪くなってしまいます。そこから、技術と同じくらい、あるいはそれ以上に「患者さんに正しく伝えること」が重要だと気づき始めました。
TC(トリートメントコーディネーター)とは?歯科クリニック経営に不可欠な役割
— その後、キャリアの中でどのような変化がありましたか?
プライベートな話になりますが、結婚や引越しを機に働く場所を変えました。3件目に勤めた歯科クリニックが大きな転機になりましたね。そこは保険診療だけでなく自費診療も多いクリニックで、私はそこでドクターの説明を補足する役割を任されるようになったんです。

— それがTC(トリートメントコーディネーター)業務の始まりですね。
そうです。最初は院長先生から「やってみてほしい」と言われて始めたのですが、実際にやってみると患者さんと話す時間が格段に増えました。そして、私が介入することで患者さんの「デンタルIQ(歯に対する意識)」が明らかに向上するのを実感しました。
— そもそも「TC(トリートメントコーディネーター)」とはどういうお仕事なのか教えてください。
イメージとしては、歯科における「カウンセラー」のような存在だと思っていただければ分かりやすいです。ドクターと患者さんの間に立って、治療内容の相談に乗ったり、補足説明を行ったりする役割です。資格としては、「日本歯科TC協会」などが認定している民間資格になります。

— その資格を持っている方は多いのでしょうか?
実は、資格を持っている方自体は結構多いんですよ。ただ、資格は持っていても、それを現場で実際に活用できているかというと、別問題なんです。「資格はあるけれど、活かせる環境や仕組みがない」という方が非常に多いのが現状です。
— 和田さんは、どのような方にTCをおすすめしていますか?
もちろん歯科衛生士も適任ですが、私はどちらかというと「歯科助手」の方におすすめしていますし、実際に私が教えているのも歯科助手の方が多いです。国家資格を持たない歯科助手さんにとって、患者さんと深く関わり、専門性を持って貢献できるTCという役割は、大きなキャリアの武器になると考えています。
— そこからフリーランスとして独立を決意された具体的な出来事はありますか?
決定的なきっかけは、メンテナンスで担当していたある患者さんの歯が割れてしまった出来事です。その方は定期的に通ってくださっていた健康意識の高い方でした。しかし、過去に入れた被せ物が硬すぎたことが原因で、結果的に歯を失うことになってしまったんです。「もし、もっと若い時に適切な素材やリスクについて説明できていれば、この歯は守れたのではないか」と強く後悔しました。
この経験から、専任のTCがしっかり時間をとって説明する環境が不可欠だと確信したんです。ただ、一人のスタッフとして勤務しながらでは、クリニックの「仕組み」を変えることに本気で取り組むには限界があるとも感じました。そこで、組織の外から関わるフリーランスの立場の方がしがらみなく改革を進められると考え、2022年に独立する道を選ぶことにしました。

現場で仕組み化するTC導入が実現する売上アップと経営改善
— 現在提供されている「補綴コンサル仕組み化研修」の概要を教えてください。
この研修は、全4回(約4ヶ月間)のプログラムです。1回3時間程度の研修を、1〜2ヶ月おきに実施します。対象は歯科クリニックの院長先生と全スタッフです。単発のセミナーではなく、期間をかけて現場に定着させることを目的としています。
— 具体的な研修プログラムはどのような流れですか?
1回目は「なぜ補綴コンサルの仕組み化が必要なのか」という目的共有とマインドセットを行います。2回目はKJ法などを用いて現状の課題を洗い出し、目標設定と仕組みの設計を行います。ここまでで土台を作り、3回目では具体的なトークスクリプトの作成やロールプレイングを行います。
そして最終回となる4回目では、より実践的な内容に入ります。患者さんのタイプに合わせた「プロファイリング」や、「こういう時はどう対応すればいいか」といったトラブルケースへの対策、クロージングの実践などを行い、現場で自信を持って対応できる状態に仕上げていきます。

— 他のコンサルタントとの違い、和田さんならではの強みは何ですか?
一般的なコンサルタントやセミナーは、カウンセリングの「やり方」や「話法」を教えて、「はい、今日の練習ではうまくできましたね」と終わってしまうことが多いんです。でも、それだけではクリニックに戻った翌日から、「それで、具体的に誰がいつやるの?」となってしまい、結局実行されません。
私の最大の違いは、現場に入り込んで「仕組み(運用フロー)」そのものを構築する点です。「誰が、いつ、どのタイミングでアプローチするのか」という具体的な動線を、現場のスタッフと一緒に作り上げます。
— 「一緒に作る」という点が重要なのですね。
とても重要です。院内だけで新しいことを始めようとすると、どうしても院長先生からのトップダウンになりがちです。「これをやる」と指示だけが降りてくると、スタッフは「なんで忙しいのに新しいことやらなきゃいけないの?」と反発心を抱いてしまいます。
私の研修では、スタッフ全員で「なぜやるのか(目的)」や「どういう方向性で進めるか」を議論し、納得した上でルールを決めます。外部の私が間に入ってチーム全体で合意形成をするからこそ、「やらされ仕事」ではなくなり、無理なく現場に定着するのです。

— この「伝える技術」や「仕組み」は、外来だけでなく訪問歯科の領域でも通用するのでしょうか?
もちろんです。訪問歯科専門で完全に設備が異なる場合は少し工夫が必要ですが、「患者さんやご家族に治療の必要性を正しく伝え、信頼関係を築く」というTCのメソッドは、訪問歯科医にとっても間違いなく必要なスキルです。
特に、外来と訪問の両方を行っているクリニックであれば、院内全体の意識統一や経営改善という点で、このノウハウは大いに役立つはずです。
— 導入にあたって、具体的な費用感も教えていただけますか?
基本となる全4回の研修プログラムは、総額で40万円(税抜)です。1回あたり10万円という設定ですね。
また、研修終了後3ヶ月間の運用サポートがついた「フォロー付きプラン」もあり、こちらは総額44万円(税抜)となっています。現場に定着させるまでしっかり伴走させていただく内容としては、導入しやすい価格設定にしています。

— 導入されたクリニックでは、どのような成果が出ていますか?
最も分かりやすい成果は、売上アップです。補綴の自費率が導入前の200%(2〜3倍)に伸びた事例もあります。これまで説明不足で取りこぼしていたニーズを拾い上げることができるため、やっていなかったクリニックほど伸びしろは大きいです。
— 売上以外の面で、スタッフや組織にはどんな変化がありますか?
数字以外の変化も非常に大きいです。特にスタッフの定着率向上(離職防止)ですね。
例えば、歯科助手さんや受付の方は、普段の業務では患者さんと深く関わる機会が少なく、やりがいを感じにくい側面があります。しかし、TCとして患者さんの健康に向き合うことで、「あなたのおかげで決心できた」と感謝されるようになり、仕事へのモチベーションが劇的に変わるんです。

— チーム全体の雰囲気も変わりますか?
ガラッと変わりますね。院長先生のトップダウンではなく、全員で「なぜやるのか」を共有してから進めるため、スタッフ間に「自分たちのプロジェクトだ」という一体感が生まれます。
そうすると不思議なもので、以前は協力的でなかったドクターが自分から協力してくれるようになったり、患者さんとの対話時間が増えたことで信頼関係が深まり、「無断キャンセルの患者さんが減った」という嬉しい報告もいただいています。組織としての質が底上げされるのが、この研修のもう一つの大きな価値だと思っています。
— この研修に申し込みたい場合、どのような方法がありますか?
現在は、私のSNS(InstagramまたはFacebook)のダイレクトメッセージ(DM)から直接お問い合わせを受け付けています。興味をお持ちいただけた場合は、まずはお気軽にメッセージを送っていただければと思います。
すべての歯科クリニックにTCを。未来の医療と子供たちが育ちやすい社会へ
— 和田さんが掲げるミッションについて詳しく教えてください。
私のミッションは「日本国民の健康意識の向上」です。それを「歯」を通して実現したいと考えています。お口の健康は全身の健康に直結しますから、歯科からのアプローチで国民全体の健康意識を底上げしていきたいんです。
— その先にある「ビジョン」とはどのようなものでしょうか?
ビジョンは「子供が育ちやすい未来をつくること」です。今、日本の医療費問題は深刻で、将来的には「子供一人で4人の高齢者を支えなければならない時代」が来ると言われています。でも、もしお年寄りの健康寿命が延びて、いつまでも元気に働ける社会になれば、子供たちの負担は減りますよね。
— 歯科医療が社会課題の解決につながるのですね。
そうです。口の中の健康を守ることで全身の健康を維持し、結果として医療費を削減する。そうやって「次世代の子供たちが苦しまなくて済むような土台作り」をすることが、私の最終的な目標であり、ビジョンです。そのためには、患者さんに健康の価値を正しく伝えるTCの存在が欠かせません。

— 今後、成し遂げていきたいことは何ですか?
将来的には、レントゲンを撮るのが当たり前であるように、どこの歯科クリニックに行ってもTCがいて、当たり前に丁寧な説明が受けられる世の中にしたいですね。1クリニックに1人、専任のTCがいる状態がスタンダードになればいいなと思っています。
— 最後に、全国の歯科クリニック院長先生、そして現場で働く歯科衛生士や助手の方へメッセージをお願いします。
まず院長先生へお伝えしたいのは、仕組み化は単なる売上アップの手段ではないということです。スタッフ全員で同じ課題に取り組み、成果を上げることで、クリニック全体のチーム力が格段に向上します。それは結果として「三方よし(クリニック・スタッフ・患者さん)」の経営につながります。
そして、現場のスタッフの方々。特に歯科助手の方は、これまで患者さんと深く話す機会が少なかったかもしれません。ですが、TCとしてのスキルを身につけることで、患者さんの健康と未来に直接貢献できるようになります。それは皆さん自身の大きなやりがいになり、モチベーションにもつながるはずです。
ぜひ、院長先生もスタッフの皆さんも一緒に、患者さんのための仕組みを作り、新しい可能性にチャレンジしていってほしいと思います。
和田奈美TC(トリートメントコーディネーター)

サービス内容
「補綴コンサル仕組み化研修」
・対象:歯科クリニックの院長先生と全スタッフ
・期間:約4か月間に4回実施。1回あたり約3時間
・内容:
1回目:目的共有とマインドセット
2回目:現状の課題を洗い出し、目標設定と仕組みの設計
3回目:トークスクリプトの作成やロールプレイング
4回目:患者さんに合わせたプロファイリング、トラブルケースへの対策、クロージングの実践
・期待できる効果:
補綴の自費率の増加
スタッフの定着率向上
患者さんとの信頼関係の醸成
・料金:40万円(税抜)
※研修終了後、3か月間の「フォロー付きプラン」(別途4万円(税抜))あり
・お申込み方法:以下からDMにてお受けします。お気軽に相談ください。
Instagram:https://www.instagram.com/nami.dh8tc/
・対象:歯科クリニックの院長先生と全スタッフ
・期間:約4か月間に4回実施。1回あたり約3時間
・内容:
1回目:目的共有とマインドセット
2回目:現状の課題を洗い出し、目標設定と仕組みの設計
3回目:トークスクリプトの作成やロールプレイング
4回目:患者さんに合わせたプロファイリング、トラブルケースへの対策、クロージングの実践
・期待できる効果:
補綴の自費率の増加
スタッフの定着率向上
患者さんとの信頼関係の醸成
・料金:40万円(税抜)
※研修終了後、3か月間の「フォロー付きプラン」(別途4万円(税抜))あり
・お申込み方法:以下からDMにてお受けします。お気軽に相談ください。
Instagram:https://www.instagram.com/nami.dh8tc/
経歴:
2008年 北原学院歯科衛生士専門学校 卒業
2008年 一般歯科医院にて歯科衛生士業務に従事
2019年 一般歯科医院にてTC業務に従事
2022年 フリーランスとして独立
現在に至る
2008年 一般歯科医院にて歯科衛生士業務に従事
2019年 一般歯科医院にてTC業務に従事
2022年 フリーランスとして独立
現在に至る
資格・学会:
資格:歯科衛生士 /TC master
所属機関:日本歯科TC協会 日本臨床歯科CADCAM学会 中原まさひろの医療物販学ラボ
所属機関:日本歯科TC協会 日本臨床歯科CADCAM学会 中原まさひろの医療物販学ラボ
TC(トリートメントコーディネーター)についてQ&A
Q1. TC(トリートメントコーディネーター)とはどのような役割ですか?
A. TCは、歯科医師と患者の間に立ち、治療内容や費用、選択肢をわかりやすく伝える役割を担います。患者の理解と納得を深めることで、信頼関係の構築や治療の質向上につながります。
Q2. TCを導入すると歯科クリニックの売上アップにつながるのはなぜですか?
A. 治療内容を正しく伝え、患者が納得した上で選択できる環境を整えることで、自費診療の理解が進みます。結果として治療キャンセルの減少や単価向上につながり、安定した売上形成が可能になります。
Q3. TCは歯科衛生士の経験を活かせる仕事ですか?
A. はい。歯科衛生士として培った専門知識や患者対応力は、TCとしての業務に直結します。臨床経験を活かしながら、説明力や調整力を発揮できる点が大きな強みです。
Q4. TCの導入はスタッフの離職率改善にも効果がありますか?
A. TCが説明業務を担うことで、歯科医師や歯科衛生士の負担が軽減されます。役割分担が明確になり、スタッフが本来の業務に集中できることで、働きやすさや定着率向上につながります。
Q5. すべての歯科クリニックにTCは必要なのでしょうか?
A. 規模や診療方針によって導入方法は異なりますが、患者満足度やチーム運営を重視する歯科クリニックにとって、TCは大きな価値を発揮します。今後の歯科医療において、重要性はさらに高まると考えられます。

