介護する人・される人を支える訪問看護|白玉点滴や美容医療で心と体をケア 最終更新日:2025/08/26

合同会社SiaPlaceは、保険外の訪問看護と美容医療を組み合わせた新しいサービスを提供しています。救命救急やICUで経験を積んだ看護師の中野早記さん・高橋明代さんが、自費の訪問看護で利用者と家族を支える一方、白玉点滴やビタミンC点滴に加え、肌のピーリング治療・薄毛治療・幹細胞の再生医療など多様な施術を実施。在宅医療と美容医療の両面から、心身の健康と生活の質向上を目指しています。
看護師を目指したそれぞれの歩み
— まずは中野さんが看護師を目指したきっかけを教えてください。
中野 私が看護師という職業に興味を持ったきっかけは、母が現役の看護師で、中学生のころ、母から「手に職をつけなさい」「あなたの性格は看護師に向いている」と言われ、その言葉が心に残ったためです。

当時は具体的にどのような仕事なのか詳しくは分かっていませんでしたが、人の役に立てる専門職という響きに惹かれ、少しずつ将来の選択肢として意識するようになりました。
高校3年生に進路選択の時期が訪れ、看護系の大学を目指せる理系クラスを選択しましたが、当時の私は生命の仕組みや科学的な探究にも魅力を感じていたため、「研究職にも就いてみたい」という思いも抱えていました。
生命倫理や遺伝子学について学べる大学への進学も視野に入れていたのですが、家族や担任の先生から「看護師の方があなたに向いている」と助言を受け、最終的に看護系の大学への進学を決めました。
それでも大学在学中は、「本当に自分は看護師に向いているだろうか」「このまま看護師を目指してよいのだろうか」と迷いが消えず、ほかの大学への編入まで考えた時期がありました。
しかし、実際に看護実習で患者様に寄り添いながらケアを行う看護師の姿を目にしたとき、これまでイメージしていた看護師像とは異なり、患者様に深く関われる看護師ならではの魅力に気付き、看護師を目指す決心を固める大きな転機になったのです。

— 大学卒業後はどのような職場に就職されたのですか?
中野 「医療・看護についてできるだけ幅広く、かつ深く学びたい」という気持ちが強く、救命救急センターに強い関心を持っており、入職後1年目から救命救急センターに配属させてもらえる大学病院へ就職しました。
実は当初、自分がどのようなフィールドでキャリアを重ねていけば良いのか迷っており、配属希望を決める前に大学の先生へ相談したところ、「内科は比較的落ち着いているから働きやすい一方、急性期のようにスピード感や緊迫感のある職場への異動や転職は難しくなる可能性がある」というアドバイスをいただきました。
その先生は、人と関わるのが得意ではなかったため、患者様と直接会話する機会が少ない手術室での勤務を選んだそうで、自分が手術室で働く姿を想像してみたのですが、閉鎖的な空間働くのは物足りなく感じ、「自分にはあまり合わないかもしれない」と思いました。
また、循環器科や消化器科のように、特定の部位や疾患を専門とする診療科目では、得られる知識・スキルが限られてしまうので、内科・外科を問わず多様な症例に出会える救命救急センターが良いのではないかと思いました。
当時の私は今のように人前で積極的に話すタイプではなく、友人からは「救命救急センターはあなたには向いていないのでは」と言われたこともありましたが、結果として8年間勤め続け、緊迫した現場の中で看護師として大きく成長できました。

— 大学病院の救命救急センターに勤めた後は、どのようなキャリアを歩まれたのですか?
中野 8年間の勤務で「やりきった」という達成感を得られたこともあり、退職後は半年ほどハローワークに通いながら、これからの働き方や人生設計についてゆっくり考える時間を取りました。
大学時代から先生の話を聞いていたこともあり、手術室勤務にも関心はあったのですが、総合病院の手術室看護師は独り立ちまでに5年以上を要するケースも多く、習得すべき技術や知識の幅広さを考えると、自分にはややハードルが高いと感じました。
そこで、より早く手術看護の経験を積める環境として、整形手術に関われる美容外科クリニックへの転職したのですが、骨を切る「輪郭矯正」といった大規模な手術も多く、想定以上に長時間かかるオペもあり、体力的にも精神的にも大変さを実感しました。
美容外科クリニックは2024年11月に退職し、12月から訪問看護ステーションで週3日働きながら、SiaPlaceの開業に向けて本格的に取り組むようになりました。

— 高橋さんはどういうきっかけで看護師を目指したのですか?
高橋 私は看護系ではない大学に進学し、在学中に国際紛争や貧困問題など国際関係論に強い興味があったのですが、世界規模の問題を学んでいると、まずはもっと身近で規模の小さな課題に直面している現場を知りたいと考えるようになりました。
そこで、大学卒業後に3年制の看護学校へ通い、大学とは違う厳しい規律や実習の連続で苦労を重ねながら看護師を目指しました。

— 看護学校卒業後はどのような職場で働きましたか?
高橋 大学病院のICU(集中治療室)に常勤看護師として入職し、20年勤務した後、2年前からはパート勤務に切り替えて現在も働いています。
私がICUを選んだのは、患者様の救命を最優先に考え、迅速かつ的確な対応が求められる環境に強く魅力を感じたからです。
しかし、ICUで長く働くうちに、患者様の退院後の生活や、疾患の背景にある生活習慣、さらには在宅での療養の様子など、病院外での患者様の暮らしに関心を持つようになりました。

— 中野さんと高橋さんはどこで出会ったのですか?
高橋 私たちが出会ったのは10人ほどの看護師による交流会で、月に1度程度の頻度で開催されていて、東京から参加していたのは私と中野の2人だけでした。
会話を重ねるうちに、お互いが目指す方向性が似ていると感じ、自然と将来のビジョンについて語り合うようになりました。
その中で、「訪問看護をするなら、個人事業主よりも法人として事業を行ったほうが信頼性が高く、サービスの幅も広がるのではないか」という考えが芽生え、起業を意識し始めました。
中野 私は当時、個人事業主として美容医療サービスの提供を視野に動き始めていたのですが、最終的には「在宅療養者やご家族を支える訪問看護の自費サービスも提供したい」という思いもありました。
すると、今年の5月ごろに高橋から訪問看護の自費サービスに関する事業提案を受け、2人で具体的に構想を練っていくと、あっという間にビジネスモデルが完成し、6月の私の誕生日に法人登記を行い、企業として正式にスタートを切りました。

合同会社SiaPlaceの設立へ
— 企業名の「SiaPlace」の由来はなんですか?
中野 「SiaPlace(シアプレイス)」は元々私が考えていた造語で、「Share」が語源となっており、「サービスに関わる全ての人が幸せを共有できる空間をつくりたい」という願いを込めました。
在宅医療は利用者様やご家族、医療従事者が心地よく過ごせる関係性や環境があってこそ成り立つものだと考えており、その思いを短く覚えやすい形で表現しています。
高橋 名前の由来を聞いたとき、他にはないオリジナリティと温かみがあり、事業の理念にも合っていると感じたので、「SiaPlace」にしようと決めました。

— 訪問看護の自費サービスを通じて、目指す理想の世界を教えてください。
中野 以前の話になるのですが、私は寮生活を送りながら叔父・叔母と同居する祖母の介護を手伝っていた時期がありました。
認知症が進行した祖母は意思決定を確認できなかったため、私たち家族は延命処置や胃ろうの造設など祖母の命に関わる重要な決断を迫られました。
私は看護師として医師の説明内容を理解でき、母とも意見を共有できたのですが、同居していた叔父や叔母にとって苦渋の決断だったようで、母と叔母の意見が対立し、家族間の関係が険悪になってしまいました。
その時、気軽に相談できる医療従事者がそばにいれば、医師から提示された治療をそのまま受け入れるのではなく、本人の希望や価値観に沿った最期を迎えられたのではないかと痛感しました。
そこで、SiaPlaceでは、要介護者の方だけでなく、介護を担うご家族も含めて、納得のいく選択ができるように、意思決定支援と心の支えになるサービスを提供していきたいと考えました。
高橋 私も病院で長く勤務する中で、「生活習慣を見直す」「早めに受診する」といった行動変容があれば、命を落とさずに済んだのではと思う患者様を何人も見てきました。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング:人生の最終段階に受ける医療やケアについて、患者本人・家族・医療者が話し合うプロセス)が事前に行われておらず、重篤な状態で搬送され、ご本人の希望についてご家族に尋ねても、「聞いたことがない」と返答するケースも少なくありません。
もし疾患を発症する前、あるいはリスクのある段階から医療従事者が関わり、価値観や希望について話し合う機会を持てれば、本人らしい人生の最終段階を支える意思決定につなげられるのではないかと思い、SiaPlaceのサービスを通じて在宅医療を支えていきたいです。

— SiaPlaceで提供するサービスの強みは何ですか?
高橋 SiaPlaceは自費による訪問看護サービスなので、保険適用の訪問看護にある利用できる時間や回数などの時間的な制約がなく、利用者様やご家族の希望に合わせて、必要な時間だけ医療やケアを提供できるのが大きな特徴です。
また、介護は心身の大きな負担を伴うため、私たちは要介護者ご本人へのケアにとどまらず、介護を担うご家族へのサポートにも力を入れています。
介護者が少しでも安心し、前向きな気持ちで日々を過ごせるよう支えることも、SiaPlaceの重要な役割だと考えています。
中野 介護者向けのサービスとして訪問型の美容医療を提供しており、美容クリニックのように白玉点滴やニンニク注射、ビタミンCの点滴のほか、肌のピーリング治療、薄毛治療、幹細胞の再生医療など多様な施術が可能です。
もちろん、看護師の判断で医療行為はできないため、提携先である「銀座こもれびクリニック」の医師によるオンライン診療もしくは対面診察を経たうえで、自宅やオフィスなど希望する場所で施術を受けられる仕組みになっています。
私たちが美容医療に取り組む理由は、単なる見た目の改善ではなく、アンチエイジングや予防医学を通じて健康に年を重ねることをサポートし、健康寿命の延伸につなげるためです。
SiaPlaceの美容医療サービスに似たサービスに「介護美容」があるのですが、メイクやネイルなどの施術を通じて、自尊心やQOLの向上、認知機能の刺激などを目的としており、主に高齢者を対象としています。
SiaPlaceの美容医療は年齢や性別に関係なく、幅広い層を対象に健康と美容の両面を支援している点が異なります。

— SiaPlaceのサービスで注力しているポイントは何ですか?
中野 カジュアルな感覚で息抜きや疲労回復を目的とした美容医療の施術を受けていただくことで、介護者が心身ともに追い詰められてしまうのを防げるのではないかと考えています。
美容医療は1回あたりの料金がエステより高く、「気軽に試せない」と感じられがちですが、実際のところエステに高額な費用をかけ続けるよりも、数万円の美容医療を1回受けたほうが、長期的にはコストを抑えられる場合もあります。
また、施術はエビデンスに基づいており、国家資格を持つ看護師が、クリニックと提携して提供することで安心感も高まります。
一方で、医師と連携せず、看護師だけで美容医療を行う事業者も存在するため、信頼できる企業を選んでほしいと考えています。
— サービスの認知度拡大のためにどのような活動をされていますか?
高橋 「おうちde医療」のようなインターネット上のサービスに登録や、病院、居宅介護支援事業所などへの営業活動を行い、少しずつ認知を広げています。
中野 とはいえ、SiaPlaceで提供しているサービスはまだ広く知られておらず、特に訪問型の美容医療は介護美容と混同されることも多いため、ラジオ出演やセミナー登壇を通じて宣伝活動に取り組んでいます。

若い世代にも興味を持ってもらえるように、Instagramでも情報を発信もしており、今後はSNSでの発信も強化していく予定です。
また、医療従事者からも、訪問看護の自費サービスについて十分な理解を得られていない現状もあり、「お金儲けのためではなく、利用者様やご家族を支援するためのサービスである」ということを今後のセミナーで積極的に伝えていきたいです。
今年の9月21日には、ACPに関する看護師向けのセミナーにも参加する予定で、「もし自分の死期が迫ったら、どんなことを望むのか」というテーマについて、参加者が改めて考えるきっかけになればと思っています。
今後の在宅医療・介護の現場に向けたメッセージ
— 在宅医療や介護などに関する課題や悩みはありますか?
高橋 寿命の延伸と高齢化の進行により、在宅医療の現場では介護する側もされる側も高齢化してきており、今後は介護者の負担がますます増えるのではないかと懸念しています。
その中で、利用者様とご家族の双方が「幸せだ」と感じられる時間を増やす支援をしていきたいです。
中野 仕事には休日や有休がありますが、介護や育児をしている方が自分に時間やお金をかけて息抜きをしていると、周囲から批判されたり、陰口を言われたりすることがあります。
少子高齢化で介護の担い手は減り、医療依存度が高い方でも病院にも入院できず、在宅医療が当たり前となる中、介護者の負担ばかり増している現状に危機感があります。

— 目指している在宅医療・介護について教えてください。
高橋 病院で看護師に相談したいことがあっても、「話しかけにくい」「忙しそう」と感じ、ためらってしまう方は多いと思うので、心身が健康な時から気軽に相談できるパーソナルナースのような存在を目指しています。
長年にわたって各家庭に関わることで、心身の状態や家族背景などを把握しやすくなり、利用者様やご家族が幸せに過ごせるような支援につながると考えています。
中野 保険適用の訪問看護を利用している方は、オンコールや相談窓口で不安や悩みをすぐに相談できますが、訪問看護を利用していない方だと不安や悩みの解決につながりにくいのが現状です。
SiaPlaceでは、在宅医療に取り組む方が必要とする支援を、それぞれの状況に合わせて提供し、安心できる存在でありたいと考えています。
— 地域住民の方へのメッセージをお願いします。
高橋 ちょっとした体調の変化やご家族の介護の悩みも、早めに相談できれば安心につながりますし、大きな問題を防ぐことにもなります。
「もしもの時」だけでなく、「いつもの暮らし」にも看護師が寄り添う社会を一緒に作っていきましょう。
中野 SiaPlaceは単なる医療サービスではなく、地域の皆様の生活に寄り添うパートナーでありたいと考えています。
心の余裕を持ちながら、より安心で豊かな日常を続けられるようなお手伝いをさせていただきたいので、相談したいことや心配ごとがあるとき、どんな小さなことでも遠慮せず、お気軽にお電話ください。
SiaPlace

〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-10-8渋谷道玄坂東急ビル2F-C
TEL:080-5197-5952
MAIL:siaplace2025@gmail.com
TEL:080-5197-5952
MAIL:siaplace2025@gmail.com
中野早記代表のプロフィール
経歴:
2015年 大学病院救命救急センターに配属され、ICU・CCUでの急性期医療などに従事
2023年 銀座の美容外科クリニックに勤務し、手術中の管理やホスピタリティ、自費診療での対応を経験
2024年 訪問看護ステーションにて在宅看護に携わる
2025年6月 合同会社SiaPlaceを設立。訪問型美容医療や保険外看護のサービスを展開中
2015年 大学病院救命救急センターに配属され、ICU・CCUでの急性期医療などに従事
2023年 銀座の美容外科クリニックに勤務し、手術中の管理やホスピタリティ、自費診療での対応を経験
2024年 訪問看護ステーションにて在宅看護に携わる
2025年6月 合同会社SiaPlaceを設立。訪問型美容医療や保険外看護のサービスを展開中
保有資格:
看護師・保健師・養護教諭2種免許
血糖コントロールアドバイザー
ICLSインストラクター
看護師・保健師・養護教諭2種免許
血糖コントロールアドバイザー
ICLSインストラクター
高橋明代代表のプロフィール
経歴:
2003年 都内大学病院Iに入職し急性期〜慢性期に従事
2024年 訪問看護、美容クリニックに携わる
2025年6月 合同会社SiaPlaceを設立。訪問型美容医療や保険外看護のサービスを展開中
2003年 都内大学病院Iに入職し急性期〜慢性期に従事
2024年 訪問看護、美容クリニックに携わる
2025年6月 合同会社SiaPlaceを設立。訪問型美容医療や保険外看護のサービスを展開中
保有資格:
看護師
NST療法士
看護師
NST療法士
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