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【管理栄養士執筆】100歳を見据えた食支援とは?管理栄養士が考える超高齢期の「食」と生き方 最終更新日:2026/01/05

【管理栄養士執筆】「人生100年時代」を越えて ― 超高齢期(100歳以上)を見据えた食支援の必要性
人生100年時代と言われる今、「100歳まで生きること」は決して特別なことではなくなりつつあります。一方で、100歳を超える超高齢期は、身体機能や生活環境、心理状態が大きく変化する時期でもあります。なかでも「食」は、単なる栄養摂取ではなく、日々の楽しみや生きがい、尊厳と深く結びついています。
超高齢期の食支援では、カロリーや栄養素の充足だけを目的とするのではなく、「その人がどう生きてきたか」「これからどのように生きたいか」を踏まえた視点が欠かせません。
管理栄養士の立場から、100歳を超えることで生じる身体・生活・心理面の変化を整理し、超高齢期に求められる食支援のあり方について考えていきます。

はじめに:100歳時代の食支援の意義 — 管理栄養士が考える超高齢期の価値

人生100年時代は、もはや珍しいものではなく“通過点”になりつつあります。老年福祉法が制定された1963年から100歳以上の人口は62年間で約652倍に増加しました。これまで75歳以上を後期高齢者として支援が行われてきましたが、100歳以上の高齢者には、さらに“超高齢期”として別の支援方法が必要だと言えます。
【管理栄養士執筆】100歳を見据えた食支援とは?管理栄養士が考える超高齢期の「食」と生き方
100歳は「長生き」という価値観から、「最後まで自分らしく食べること」、そして「自分らしく生きること」へと価値観が変化する節目でもあります。管理栄養士においても、100歳の食を考える重要性が高まっています。

100歳を超えることの変化(身体・生活・心理)と食支援の課題

身体機能の変化

100歳を超えると、咀嚼力・嚥下力のさらなる低下が起こります。味覚・嗅覚の鈍化も進み、食事摂取量の低下につながります。消化吸収能力も低下し、摂取した栄養を十分に吸収できない場合もあります。
例えば、低体重で低栄養が疑われる方に対し、食事量を増やしても体重が改善しにくいケースがあります。筋肉量や骨密度も低下し、サルコペニア・フレイルが進行します。骨折リスクが高まり、寝たきりにつながる可能性もあります。

生活環境、心理面の変化

疾患や骨折により介護度が上昇し、食事の自立度が大きく低下します。介護者の支援が必要となる一方で、独居や老老介護の増加により、介護サービスの介入が不可欠になります。
こうした状況は心理的ストレスを生み、孤独感や喪失感が食欲に影響することもあります。
以上のことから、食支援は食事内容だけでなく、身体・生活面を含めた総合的な支援が重要だと言えます。

超高齢期の食支援に必要な視点:安全性・望ましさ・意志を支える支援

「食べられるもの」と「食べたいもの」のバランス

糖尿病の血糖コントロールや、誤嚥性肺炎の予防など、食事は内容によってはその方の生命予後に大きく作用するものだと言えます。その一方で食事をコントロールすることで本来食べたいものを食べられなくなっているケースも見受けられます。
例えば、骨折で入院した方が義歯が合わなくなってしまったという理由でミキサー食やきざみ食が提供され、退院後には嚥下機能が低下して常食が食べられなくなるケースがあります。実際は入院前の自宅では常食を召し上がっていたという話も耳にします。
ここで重要なのは義歯の調整などももちろんのこと、安全に食べられるものとその方が食べたいもののバランスをとっていくということです。食べたい気持ちを大切にし、必要に応じてVE(嚥下内視鏡検査)などの嚥下評価の実施を行い、安全に食上げをしていく必要があります。
【管理栄養士執筆】100歳を見据えた食支援とは?管理栄養士が考える超高齢期の「食」と生き方
また「食べたい」という気持ちを大切にするという点で、終末期などの場合、時には誤嚥のリスクを取りながら、吸引を併用しつつ食事を行う場合などもあります。この場合、その方の予後とQOL(生活の質)を優先される場面が増えます。
食形態の工夫だけではなく、味付け、食事量の工夫も必要となってきます。味を感じにくい場合には、調理の工夫を行います。煮物は炒め煮にして味を感じやすくしたり、調味料はかけるのではなくつけるように小皿に入れたり、少量しか食事が食べられない場合には油脂をうまく料理に取り入れることも必要です。

多職種連携で守る“食べる力” — 管理栄養士・医療・介護の役割

「食べる力」を守るためには、多職種との連携が欠かせません。嚥下機能の維持・評価や口腔ケアは歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士と連携して行います。食事姿勢・環境調整については、理学療法士と福祉用具専門相談員の力が必要です。食事内容においては、医師の指示のもと、管理栄養士が中心となって食事量の調整や食事回数の工夫、間食内容の工夫などを行っていきましょう。

孤食・社会参加と食支援の仕組みづくり

誰かと一緒に食べる時間は、食事量の改善につながります。食事は“社会参加”の入り口であり、人とのつながりを生む場です。
近年、こども食堂から発展した地域食堂が年齢を問わず参加できる場として広がっています。ボランティア団体が社会福祉協議会や専門職と連携して食事会を開催したり、地域のカフェがコミュニティーハブとして活用される例もあります。
こうした取り組みは高齢者の社会参加を促し、孤独を防ぎ、地域全体で高齢者を支える仕組みとして重要です。

日常と非日常をつなぐ食体験 — 100歳以上の豊かな食支援

近年、食事の場面で注目されているのは医療や介護の場面以外で提供される、嚥下食に対応した食事やスイーツなどの提供です。調理人の方が嚥下食を作り、お店で提供していたり、出張で自宅に来てくれるサービスがあったり、またどんな人が食べてもおいしいと感じられるインクルーシブスイーツも注目を集めています。
これらは日常というより、人生の中での“食の体験”として感動を与えるものであり、100歳以上の方が「食べられるもの」と「食べたいもの」を両立するための大切な選択肢です。医療・介護は日常を支え、それ以外の選択肢は非日常の喜びを提供する。どちらも超高齢期には欠かせないものです。

終わりに:100歳の食は“生き方そのもの” — 管理栄養士の視座で未来を描く

食べることは、最期まで自分らしさを保つ営みです。生まれてから最期まで、食事は毎日の時間の中にあります。
私たち管理栄養士は100歳の方に寄り添い、支える覚悟が求められます。それは管理栄養士一人で行うものではなく、医療・介護・福祉、そして地域や多様なサービスを巻き込みながら、共に超高齢化社会を歩む取り組みです。
100歳を迎えることが特別ではなくなる時代において、食支援は人の尊厳を守る営みへと変わっていくでしょう。
「人生100年時代を越えて、食の未来をどう描くか」——これからも一緒に考えていきましょう。
【管理栄養士執筆】100歳を見据えた食支援とは?管理栄養士が考える超高齢期の「食」と生き方

100歳を見据えた食支援に関するよくある質問(管理栄養士が解説)

Q1. 100歳を超えると、食事量が減るのは自然なことなのでしょうか?
A.  はい、ある程度は自然な変化です。超高齢期では基礎代謝の低下や活動量の減少により、若い頃と同じ量を食べる必要はありません。一方で、食事量の減少が低栄養や体力低下につながっていないかを見極めることが重要です。管理栄養士は体重変化、食事内容、間食や補食の状況を総合的に確認し、「量が少なくても必要な栄養が確保できているか」という視点で支援を行います。
Q2. 100歳以上の食支援では、栄養バランスと食べたい気持ちのどちらを優先すべきですか?
A.  管理栄養士としては、どちらか一方を優先するのではなく、両立を目指すことが重要だと考えます。超高齢期では「完璧な栄養バランス」よりも、「食べる楽しみを保ち、食事を続けられること」が生活の質に直結します。栄養価の高い食品を少量取り入れたり、好物を活かした献立に工夫することで、本人の意欲を尊重しながら必要栄養量の確保を図ります。
Q3. 超高齢期の食支援で管理栄養士が特に重視するポイントは何ですか?
A.  管理栄養士が重視するのは、①低栄養の予防、②食事の継続性、③生活リズムとの調和です。食事内容だけでなく、食べる時間帯、食事にかかる負担、介助のしやすさなども含めて評価します。また、体調や嚥下状態の変化に応じて、献立や食形態を柔軟に調整することも重要な役割です。
Q4. 100歳以上の食支援は、管理栄養士だけで完結できるものですか?
A.  いいえ、超高齢期の食支援は多職種連携が不可欠です。言語聴覚士による嚥下評価、歯科医師による口腔環境の管理、看護師による体調・服薬管理、介護職による日常的な食事介助など、それぞれの専門性が合わさることで安全で継続的な食支援が可能になります。管理栄養士は、その中心で栄養面から全体を調整する役割を担います。
Q5. 家族が100歳以上の食支援で気をつけるべきことは何ですか?
A.  「しっかり食べさせなければ」と無理をさせないことが大切です。超高齢期では、食事が負担になることも多く、疲労や体調変化が食事量に影響します。量にこだわりすぎず、食べやすい形や時間帯を選ぶこと、完食できなくても責めないことが重要です。困ったときは管理栄養士に相談し、家庭で続けられる食支援の形を一緒に考えることをおすすめします。
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この記事を執筆した管理栄養士


井上美穂(いのうえみほ)
井上美穂(いのうえみほ)
ふれあい歯科ごとう 管理栄養士
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