在宅看取り後の家族支援とは|家族に寄り添う葬儀と医療・介護・葬儀の連携を考える 最終更新日:2026/10/02

大切な人を在宅で看取ったあと、ご家族はどのような時間を過ごし、何に戸惑い、誰に支えられていくのでしょうか。医療・介護の現場では、「どこで、どのように最期を迎えるか」が語られる一方で、亡くなった後の流れや、ご家族が大切な人を送り出すまでの支援については、十分に共有されていないことがあります。
新連載「在宅で生きる、看取る、送る」では、医療・介護・看取り・葬儀に関わる専門職の対話を通じて、看取り後の家族支援を考えます。第1回は、株式会社太平洋企画の協力のもと、「家族に寄り添う、小回りの利くお葬式」をテーマに実施。
医療法人社団髙栄会 みさと中央クリニック 理事長・医師の髙橋公一先生と、一般社団法人 日本グリーフアカデミー 代表理事であり、看護師・看取り士としても活動する白瀧貴美子先生に、在宅看取りの後にご家族をどう支えるかを伺います。
新連載「在宅で生きる、看取る、送る」では、医療・介護・看取り・葬儀に関わる専門職の対話を通じて、看取り後の家族支援を考えます。第1回は、株式会社太平洋企画の協力のもと、「家族に寄り添う、小回りの利くお葬式」をテーマに実施。
医療法人社団髙栄会 みさと中央クリニック 理事長・医師の髙橋公一先生と、一般社団法人 日本グリーフアカデミー 代表理事であり、看護師・看取り士としても活動する白瀧貴美子先生に、在宅看取りの後にご家族をどう支えるかを伺います。
看取りが近づいた時、本人と家族は何を感じているのか
— 日頃、在宅医療や訪問看護の現場で患者さんと接していらっしゃいますが、看取りが近づいたとき、ご本人やご家族はどのような心情を感じていらっしゃるのでしょうか。
髙橋 がんなどで末期に直面するような大きな病気に至ったとき、ご本人はまず悲しみや絶望、そして「なぜ自分が」という怒りのような感情を経て、少しずつ自分の中で消化し、受容していくプロセスをた辿ると言われています。
私たちが在宅や施設への往診で診ている患者さんは、手術や抗がん剤などの治療を尽くし、これ以上の治療は難しいという段階の方々です。そのため、すでに病状を受容されているか、あるいは諦めて心がすさんでしまっている状態で出会うことも少なくありません。

— そのような状態の患者さんやご家族に対して、どのように寄り添っていらっしゃるのですか。
髙橋 患者さんの感情や状態を無理に揺り動かすようなことは、私たちにはできません。ですから、その人が今ある状態のままに寄り添い、サポートしていくことを基本としています。可能な限り、ご本人がやりたいことをやらせてあげるようにしています。
「あれを食べてはいけない」「これは飲んではいけない」といった制限は極力設けず、「お酒も飲んでいいですよ」とお伝えすることもあります。
ご家族に対しても同じで、なるべく穏やかな時間を過ごしていただけるよう私たちが全力でサポートするので、可能な限りやりたいことを叶えてあげましょう、とお話ししています。
— 白瀧さんは訪問看護師として、またグリーフケアの専門家として、ご本人やご家族の心理をどのように見ていらっしゃいますか。
白瀧 私も訪問看護の現場で、髙橋先生がおっしゃったような心理の変化を、ご本人だけでなくご家族も同じようにたどっていると感じています。大切なご家族が命に関わる病名を宣告されたとき、「この人を失ってしまうかもしれない」という予期悲嘆が始まり、喪失の悲しみも本人が命を見つめるときと同じようにスタートするのです。
看取りの時期が近づくと、ご本人は「家族に迷惑をかけないようにしたい」という想いを強く抱く一方で、ご家族は「できれば本人の思うようにしてあげたい」と願っていることが多いです。しかし、お互いを思いやるあまり、そこがちぐはぐになってしまうことも少なくありません。

— 思いがすれ違ってしまうとき、医療や介護のスタッフはどのように関わっていくべきなのでしょうか。
白瀧 そこには、ご本人とご家族の想いをつなぐ「橋渡し」の役割が必要になります。本人が「好きなように過ごしていいんだ」と思えるように、そして家族もそれを支えられるように、間に入って丁寧にお話を伺うことが大切です。
大きな病院であれば心理士さんが入ることもありますが、在宅看取りの現場では、医師や看護師、ケアマネジャーさん、ヘルパーさんなどがその役割を担います。
ご家族の歴史や背景はケースバイケースで、例えば親との関係性に苦しみ「もう連絡しないでほしい」とおっしゃるご家族もいれば、深い愛情を持って献身的に介護されるご家族もいらっしゃいます。だからこそ、チームで状況を分かち合いながらケアを進める必要があります。
— 医療側として、ご家族が延命治療などを強く望まれるようなケースでは、どのように対応されていますか。
髙橋 ご本人は自分の体調の悪さを実感しているのに、ご家族が「もっといろいろな治療をやってほしい」と望まれることは確かにあります。その際、「これ以上の処置はご本人を苦しめることになるかもしれませんよ」と丁寧にお話しするようにしています。
例えば「先生、せめて点滴だけでもしてくれないと何もしていないようで心苦しいです」とご家族から言われることがあります。しかし、心臓の機能が低下しているときに点滴を入れると、体がむくんでご本人が辛くなるだけです。そうした医療行為を本当にやっていいのかどうか、少しずつ会話を重ねながら寄り添っていきます。
私一人から説明するのではなく、ケアマネジャーさんやソーシャルワーカーさん、訪問看護師さんたちと連携し、チーム全体で説明を統一していくことが大切です。

生前から「亡くなった後」を考える意味とは
— 生前準備として、医療者が「亡くなった後」のことまで考える必要はあるとお考えですか。
髙橋 私たちが手を差し伸べられるのは患者さんが生きている間だけで、亡くなってからは何もできません。だからこそ、その人らしい姿で最期を迎えていただくために、生きている間にできる限りのことをするしかないのです。
例えば、ギリギリまで点滴をした結果、お顔がむくんだ状態で最期を迎えてしまったら、その人らしいお顔立ちが変わってしまうかもしれません。また、ご飯を食べられなくなった患者さんへの口腔ケアも同じです。
「もう食べないから」とケアをやめてしまうのではなく、お口を綺麗にして最後に入れ歯をしっかりと入れてあげる。そうすることで、ふくよかな、その人らしいお顔のままでいられます。
自分がどう最期を迎えたいか、そのために今どう生きていくか。それこそがACP(アドバンス・ケア・プランニング)に繋がっていくのだと、私は考えています。
つまり最も美しい状態で最期を迎えていただくことも、私たちのような終末期医療を支える者の仕事であり宿命だと考えてるのです。
少し驚かれるかもしれませんが、私は介護や医療の究極の目的は「美しい遺体を作ること」だと思っています。

— 「美しい状態を保つ」という視点は、医療の現場ではどのように受け止められているのでしょうか。
髙橋 私は医療従事者向けにACPの講義をする際、よくこのお話をします。医療の現場では「治す」「機能回復する」という意識が基本にあるため、「もう食べることのない口に、なぜ口腔ケアをするのか」を学校で習う機会はほとんどありません。
「肺炎を防ぐ」という医学的な理由だけでなく、「その人が最も美しい状態であるためにケアをしてあげることで、その人らしさが守られるんだ」と伝えます。そうしたお話をすると皆さん少し驚かれますが、終末期に向かっていく患者さんへどう寄り添っていくべきか、ご自身のケアのあり方を考え直してくださる方はとても多いですね。
— 白瀧さんは、事前に亡くなった後のことを準備することについて、どのようにお考えですか。
白瀧 元気なうちから、どんなお葬式にしたいか、誰に連絡をしてほしいか、あるいは意識がなくなったときの延命治療をどうするかなどを、ご家族と話しておけるのはとても理想的なことだと思います。
いざ具合が悪くなって、本当に最期が見えてきた時にそういったお話をするのは、ご本人もご家族もやはり難しいですからね。 ただ、そうやって事前に想いを聞いていたとしても、いざその時になると「人は気が変わるもの」だということも忘れてはいけないと思っています。

— 事前に決めていても、お気持ちが変わることもあるのですね。
白瀧 そうなんです。実は去年の2月に私の父が亡くなったのですが、パーキンソン病を15年ほど患い、最期は誤嚥性肺炎を繰り返していました。父は元気な頃、「管を入れるような延命治療はしたくない」と言っていたので、私もそのつもりでいたんです。
ところが、入院先から施設へ帰るためには胃ろうを造る必要が出てきました。ぼんやりとした意識の父に、「前は管を入れたくないと言っていたけれど、どうしたい? 胃ろうを造りますか?」とはっきり聞いてみたんです。
すると父は、「施設に帰りたいから胃ろうをする」と自分で選択しました。 もうほとんど話ができないような状態であっても、人は最後まで自分で決めることができるのだと、この時父から教えられましたね。
— いざという時だからこそ、ご本人の意思をその都度確認することが大切なのですね。
白瀧 まさにその通りです。現場でも、ご家族がどうすべきかすごく迷っている時は、「はっきりとご本人に聞いてみましょう」と提案しています。わずかな反応であっても、お返事をしてくださる可能性はありますからね。
一方で、「亡くなった後の葬儀やお墓のことは、自分がすべて決めるより家族に任せた方がうまくいくから、好きにしていいよ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
いろんなお考えの方がいますので、ご家族が迷われた時は「お父さんだったらどんな風に決められたと思いますか?」と問いかけながら、一緒にお見送りの形を進めていくようにしています。

在宅看取りの直前・直後に、家族には何が起こるのか
— 大切な方が亡くなる直前やその直後、ご家族はどのような精神状態にあることが多いのでしょうか。
白瀧 在宅で看取りをされるご家族には、故人を大切に思う気持ちが深く、愛情をもって最期まで共に過ごされる方が本当に多いと感じます。ただ、人が亡くなっていく経過を在宅で目の当たりにするのは、初めてという方がほとんどなんですね。
そのため、いざその時が来ると、亡くなったことを受け止めきれずにパニックになってしまう方もいらっしゃいます。 私たち医療者が事前に「今後はこういう経過をたどりますよ」とご説明していても、やはり目の前で起きる衝撃をご自身の中で受け止めるのは難しいものです。
じっくりと受け止めていく方もいれば、激しく動揺される方もいらっしゃいます。だからこそ、看取りの経験がないご家族に対しては、丁寧な説明とお話をしっかり聞いていくことが非常に大切になります。
— 現状を受け入れるのが難しい中で、お見送りの準備を進めるのはご家族にとっても大変なことですね。
白瀧 そうですね。昔のように、亡くなった時にご近所の方やご親戚が大勢集まるということは少なくなりました。今は身近な親族の方だけでお見送りすることが多いです。
人数が少ないからこそ、ご親戚の間で意見がぶつかって、もめごとが起きることも実はよくあります。でも、その話し合いの中で「あの時はこんな風に話していたね」といった様々な物語や、故人の違う一面が出てきながら物事が進んでいくこともあります。良くも悪くも、そういった家族模様が色濃く出てくる時期だと言えますね。
— 医師の立場から、看取りの直前直後のご家族のご様子をどのようにご覧になっていますか。
髙橋 在宅医療の現場では、生前から熱心に介護をされ、最期の時にもぜひ立ち会いたいとおっしゃるご家族がたくさんいらっしゃいます。
しかし、ご家族ご自身の身体が辛かったり、ご高齢であったりすると、夜中の2時や3時のお看取りにはどうしても立ち会えないということもあります。 それはもう仕方のないことなんです。最期は突然訪れるものですからね。そういった場合は、私たちが夜中に訪問して死亡確認を行い、翌朝になってからご家族が対面されるということも、ごく普通にあります。

— ご家族の中には、最期に立ち会えなかったことを後悔される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
白瀧 日本には昔から「死に目に会う」という言葉があって、「亡くなる瞬間を見届けなければいけない」と思い込んでいる方もいらっしゃいます。私たちは「そんな必要はないですから、寝る時にはしっかり寝て、起きる時には起きてくださいね」とお伝えするのですが、それでも「死に目に会えなかった」と後悔される方は少なくありません。
そうしたご家族の様々な思いや葛藤にも、私たちはしっかりと寄り添っていく必要がありますね。
看取り後すぐに、家族は葬儀を決められるのか
— 大切な方が亡くなった直後、ご家族はどのようなお葬式にしたいか、すぐに決められるものなのでしょうか。
白瀧 最近はメディアなどの影響で「家族葬」という言葉が一人歩きしているような印象があり、「家族だけで」とすぐにおっしゃるご家族も多いです。ただ、それが本当にご本人の希望だったかどうかは分からないことも少なくありません。
私たち看護師が葬儀の詳細に深く関わることはあまりないのですが、女性だけのご家族などから「お葬式はどうしたらいいですか」とご相談を受けることは時折あります。
髙橋 私たち医師が直接お葬式に関わることもあまりないのですが、ご本人の意志とは関係なく、遺されたご家族の事情でお葬式の形が決まることは今の時代でもあります。
例えば数年前、私の同級生の奥様が若くして亡くなった際、東京でお葬式をした後、ご主人のご実家がある九州でもう一度お葬式をしました。ご主人が大きな事業をされていたため、社会的な立場としてきちんとお香典などを受け取る場を設ける必要があったのです。
ご家族の構成や立場によって、考え方が変わることは大いにあります。

— ご家族の事情がある一方で、ご本人の意思が強く反映されたオーダーメイドのようなお葬式もあるのでしょうか。
白瀧 はい、手作り感のあるオーダーメイドのご葬儀もあります。50代で亡くなった私の友人は、お付き合いしていた方と結婚式を挙げたいという強い想いがありました。
しかし病状から結婚式には間に合わないと悟り、自分の好きなデザイナーさんにウェディングドレスをオーダーして、「もし間に合わなければ、この衣装を着せてほしい」と私に託したのです。
死について一緒に語り合える関係性があったからこそ、彼女自身で最期の衣装を決断できたのだと思います。
髙橋 私が、ある病院で外科部長をしていた頃、高齢の女性をお看取りした時の忘れられないエピソードがあります。
ご家族が揃う病室で死亡確認をして、ナースステーションに戻り死亡診断書を書いて、ご家族に説明をするために病室へと戻りました。死亡診断書の説明をして、ふとその方に目を向けると真っ白いウェディングドレスを着ていらっしゃったではないですか。
するとご家族はこうおっしゃいました。
「先生、ありがとうございました。これで母は神様のところにお嫁に行けます」
— そうしたご本人の意思やご家族の想いを、実際の葬儀の現場ではどのように形にされているのでしょうか。株式会社太平洋企画の鈴木さんにお取り組みをお聞きします。
鈴木 ご本人やご家族の「こんな風に送りたい」というお気持ちを第一に、どのような形が可能かを打ち合わせで探っていきます。
その際、先祖代々のお墓を管理するお寺様の決まりなど、後々トラブルにならないよう繋がりをしっかり確認した上で、臨機応変にできる限りの対応をさせていただいております。

— 具体的にはどのようなご要望を実現されてきたのでしょうか。
鈴木 例えば、サッカーのサポーターの楽団をされていた方のご葬儀では、宗教観にとらわれない自由葬として、応援歌やレゲエの音楽を大音量で流しながら楽しくお別れ会をしたことがありました。
ご家族と故人様が決めたお見送りの形が、最も正解なのだと考え、そこへ導けるようにお手伝いをさせていただいています。
— ご本人の希望やご家族の想いが変化していく中で、最終的に何が「正解」になるのでしょうか。
髙橋 ACPは常に「ING」、つまり進行形であり、ご本人の気持ちも変わっていっていいものなのです。「どんなお葬式にしたいか」と元気なうちから考えることもACPですし、ご家族の想いと合わせながら悩んで決めたことが、すべて最善だったと受容することが大切だと思います。
白瀧 ご家族の中には、自分たちの判断に自信が持てない方もいらっしゃいます。ですから、私たちは「大丈夫ですよ、そう思ったらそうしていきましょう」と背中を押すようにしています。
ご本人は家族に迷惑をかけたくない、ご家族は本人のためにできることをしたいという思いが交差する中で、最期の時間を通じて少しずつ折り合いをつけていくことが大切ですね。
「家族に寄り添う葬儀」とは何か
— 生前のうちから、亡くなった後のことまで話しておくことには、どのような意味があるのでしょうか。
髙橋 私たち医療従事者が直接的に関わることができるのは、患者さんが生きている間だけです。だからこそ、その時その時が最もその人らしく、美しくあるために、私たちは持てる力を尽くして最大限のサポートをします。
そして、お亡くなりになった瞬間が最も美しくなり、お葬式が結婚式と同じくらい尊いセレモニーになるように最高の「演出」をして、ご家族を葬儀社の方へとおつなぎする。私たちは、そのように最期の時まで寄り添う伴走者でありたいと強く思っています。
— 葬儀や送り方を考えることは、ご家族が深い悲しみを乗り越える過程で、どのような意味を持つとお考えですか。
白瀧 私たちは看取りの段階からご家族とご一緒していますので、生前からのご本人の思いやご家族の願いを大切にしながら、スムーズに葬儀へとつなげていく流れを作ることが理想だと思っています。
明るく賑やかに送りたいというご家族もいれば、若くして大切な方を亡くされ、底知れぬ悲しみの中にいらっしゃるご家族もいます。そうした深いグリーフを抱えたご家族が、お葬式という儀式を通じて悲しみを少しずつケアされ、やがて再びご自身の人生を歩み出せるようなつながりを持てること。
それこそが「家族に寄り添うお葬式」なのだと考えています。

— 鈴木さんは葬儀社の立場として、「家族に寄り添う葬儀」をどのように捉え、実践されていますか。
鈴木 大切な方を亡くされた直後、ご家族は「家族葬にするか」「直葬にするか」「お通夜はやるのか」「誰に声をかけるべきか」など、決断の連続に迫られて非常に深く悩まれます。
その中で、残されたご家族と故人様のお気持ちを第一に考えながら、皆様で話し合い、決めたことこそが正解であり、最善の形なのだと思います。
「あの時、ああしておけばよかった」という後悔を少しでも残さないように。
私たちがご家族を良い方向へと導き、しっかりと寄り添ってお手伝いしていくこと。それが家族に寄り添う葬儀だと信じて、日々ご家族に向き合っております。

医療・介護・葬儀の連携で、看取り後の不安を減らす
— 医療側として、「安心して葬儀社へバトンをつなげる状態」とはどのようなものだとお考えですか。
髙橋 私たち医師は、普段どうしても「目の前の命を助けたい」「少しでも状態を良くしたい」という思いが強いため、亡くなった後の葬儀のことまで常に考えている医療者は少ないかもしれません。
しかし、在宅診療で終末期に関わる以上、最終的にはお看取りになる現実を受け止め、その方の最期のセレモニーまでつながっていくことを意識すべきだと私は考えています。 ご家族が納得してその方らしい最期を迎えられ、「あとはよろしくお願いします」と多職種から葬儀社さんへスムーズにバトンを渡せる状態が、一番の安心なのだと思います。
医療の手が離れたあとも、その方らしさが大切に守られ、残されたご家族が少しでも前を向いていける。そんなあたたかいお見送りへとつなぐことこそが、命に関わる我々にとっても一番の願いですね。

— 訪問看護師の立場からは、いかがでしょうか。
白瀧 在宅で看取られたご家族から、「今まで対応が良かった葬儀社さんはありますか?」と率直にご相談を受けることがあります。ご家族にとっては必ず通る道ですが、初めてのことで戸惑われる方がほとんどです。
私たちは普段からグリーフケアを大切にしていますが、医療や介護の現場から、ご家族の思いを丁寧に汲み取ってくれる葬儀社さんへつなぐことができれば、ご家族の不安は大きく軽減されます。
「ここなら安心して任せられる」と思える関係性が地域で築けていることが、ご家族のグリーフを和らげる上でも非常に重要だと感じています。
看取りの瞬間で終わりにするのではなく、大切な人を失ったご家族が決して独りぼっちにならないよう、地域全体で温かく寄り添い続ける。そんな途切れないケアの輪を、これからも広げていきたいですね。

「在宅で生きる、看取る、送る」では、今後も在宅医療・介護、看取り、葬儀・納棺、グリーフケアに関わる専門職の対話を通じて、亡くなる前だけでなく、亡くなった後のご家族支援について考えていきます。大切な人をどのように見送り、残されたご家族をどのように支えるのか。医療・介護・葬儀がそれぞれの役割を理解し、地域の中でつながることで、看取り後の不安を少しでも安心に変えていくことを目指します。今後の連載にもぜひご注目ください。

※ 本インタビュー記事は、2026年9月25日(金)放送のラジオ番組「おうちde医療 in 立川」の内容をもとに、再構成・編集したものです。掲載写真は収録時に撮影したものです。
髙橋公一氏のプロフィール

医療法人社団高栄会 みさと中央クリニック 理事長・医師
1996年に埼玉医科大学医学部を卒業後、埼玉医科大学附属病院第一外科に勤務。消化器・一般外科をはじめ、心臓血管外科、呼吸器外科、移植外科など幅広い領域を経験。2001年から米国ジョンズ・ホプキンズ大学外科へ留学し、帰国後は埼玉医科大学第一外科へ復職。2008年にみさと中央クリニックを開院し髙、現在は外来診療と在宅医療の双方に取り組みながら、地域に根ざした医療を実践している。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)や多職種連携にも力を入れ、患者本人だけでなく家族も含めて「最期まで生きていこうと思える医療」を目指している。
❏ 医療法人社団髙栄会 みさと中央クリニック
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)や多職種連携にも力を入れ、患者本人だけでなく家族も含めて「最期まで生きていこうと思える医療」を目指している。
❏ 医療法人社団髙栄会 みさと中央クリニック
白瀧貴美子氏のプロフィール

一般社団法人 日本グリーフアカデミー 代表理事/看護師・看取り士
看護師として27年間、総合病院の外科・整形外科に勤務。その後、訪問看護での在宅支援や地域包括支援センターでの地域包括ケアに従事し、病院・在宅双方で多くの看取りに関わってきた。2016年に日本看取り士会と出会い、看取り士としての活動を開始。現在は、看取り前から臨終時、納棺まで本人・家族に寄り添う支援に取り組んでいる。
また、一般社団法人日本グリーフアカデミー代表として、大切な人を失った後の悲しみや喪失に向き合うグリーフケアの普及・啓発にも取り組んでいる。
❏ 一般社団法人 日本グリーフアカデミー
また、一般社団法人日本グリーフアカデミー代表として、大切な人を失った後の悲しみや喪失に向き合うグリーフケアの普及・啓発にも取り組んでいる。
❏ 一般社団法人 日本グリーフアカデミー
専門家コメント

— 実際に在宅で亡くなられた方のご家族からは、どのようなご相談が多いのでしょうか。
最も多いのは、「この後、どうしたらいいんでしょうか」「私たちは何をすればいいですか」という、漠然としたご不安からのご相談です。事前に細かく内容を決めている方は少なく、初めてのことで呆然とされている方がほとんどです。
例えば「いつまで自宅に寝かせておいていいのか」といった具体的な疑問に対しても、「お体の状態や季節を考えると、2、3日くらいで御安置施設へご移動することをお勧めします」と一つひとつ丁寧にお答えし、ご家族が何を一番大切にされたいかをじっくりと伺うことからスタートします。
— 大切な方を亡くした直後のご家族に接する際、特に大切にされていることは何ですか。
徹底して「寄り添う」ことを大切にしています。そしてそれは、私たちが過剰に悲しんだり、一緒になって深刻になったりすることではありません。
悲しみの淵にいらっしゃるご家族を支える裏方の存在として、冷静でありながらも「しっかりとそばにいますよ」という距離感を保ち安心感を提供する事。自然体でのサポートを心がけています。
— 太平洋企画さんでは担当者が一貫して対応されているとのことですが、それはご家族にとってどのような意味があるのでしょうか。
ご葬儀の打ち合わせが終わった後も、ご家族には「親戚からこう言われたけどどうしよう」「お寺のしきたりが分からない」など、当日までに次々と不安や疑問が湧いてきます。
そんな時、毎回違う人が電話の窓口に出るのではなく、担当者に直接つながり、すぐに疑問を解決できることが大きな安心を生むと考えています。
小回りの利く葬儀社だからこそ、四十九日や一周忌などの法事も含め、ご不安に対して一貫して伴走できることが私たちの強みだと思います。
— 「こんなふうに送りたい」という家族の想いを、実際の葬儀ではどのように形にしているのでしょうか。
しきたりやルールをしっかり確認した上で、ご家族の想いを最大限に叶える臨機応変なご提案を行っています。
例えば、ロックミュージシャンの関係者の方の時は、ロックな感じで派手にお見送りしたこともあります。また、最近の首都圏では少し珍しい「自宅葬」のお手伝いもしました。
ご自宅とご家族が大好きだったお母さまのご葬儀で、ご家族と一緒にタンスなどを片付けてお部屋に祭壇を組みました。現代の家屋でご葬儀をするのはとても大変だったのですが、送る準備をご自身たちで行うことで、ご家族も非常に満足され、未来に向けて少し前を向く力になっていくのを感じました。
— 最後に、医療介護職と葬儀社が早い段階からつながることについて、どうお考えですか。
愛情深くお看取りをされたご家族ほど、亡くなった直後は尽き果てたように呆然とされてしまいます。もし、訪問医療や訪問看護の段階で私たち葬儀社と少しでもつながりがあり、状況を共有できていれば、最期の時を迎えた際に最も迅速に対応できます。
「この後は私たちがサポートしますから大丈夫ですよ」とすぐにお手伝いを開始することで、ご家族が少しでも早く未来に向かえるよう、医療介護職の皆様とスムーズな連携が取れればと願っております。
「その人らしい最期」を医療や介護の力で支えることと、「ご家族が納得できるお見送り」を葬儀の力で形にすること。これらは決して別々の出来事ではなく、本来、ゆるやかに地続きになっている「ひとつの物語」なのだと感じます。
かけがえのない人が旅立つ前後、ご家族は数えきれないほどの不安や迷い、そして深い悲しみに直面します。ですが、その重荷をご家族だけで抱え込む必要はありません。
在宅医療や看取りのケア、そしてお別れを支える葬儀。
それぞれの現場に立つプロフェッショナルたちが、少しだけ垣根を越えて、ご家族への「思いやりのバトン」を丁寧につないでいく。
そうやって専門家同士があたたかく手を取り合うことで、ご本人にとっても、残されたご家族にとっても、不安がやわらぎ、心おだやかに過ごせる時間をもっと増やしていけるのではないでしょうか。
鈴木一誠
❏ 株式会社太平洋企画
❏ 株式会社太平洋企画
※ 本インタビュー記事は、“在宅での看取りから葬儀まで、ご本人とご家族の思いに寄り添う” 株式会社太平洋企画 の協力により制作しました。
在宅看取り後の家族支援に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 在宅で家族を看取った後、まず何をすればよいのでしょうか?
A. 在宅で看取りを迎えた後は、まず訪問診療医や訪問看護師など、関わっている医療者へ連絡することが一般的です。死亡確認後、葬儀社への連絡やご安置、お見送りの準備へと進みます。突然すべてを家族だけで判断する必要はありません。医療・介護の関係者に相談しながら、落ち着いて一つひとつ進めることが大切です。
Q2. 在宅看取りの後、家族が不安を感じやすいのはどのような場面ですか?
A. 大切な人が亡くなった直後は、悲しみの中で「何をすればよいのか」「誰に連絡すればよいのか」「この後どのように送り出せばよいのか」と戸惑うご家族も少なくありません。医療者が帰った後の時間や、葬儀社へ連絡するまでの流れに不安を感じることもあります。そのため、亡くなる前から看取り後の流れを少し知っておくことが、ご家族の安心につながります。
Q3. 医療・介護職は、看取り後の家族にどのような支援ができますか?
A. 医療・介護職が葬儀の専門知識まですべて持つ必要はありません。ただ、看取り後にご家族がどのような流れをたどるのかを理解しておくことで、「この後はこういう流れになります」「困ったら相談して大丈夫です」と声をかけることができます。ご家族が孤立せず、次の支援につながれるようにすることも、看取り後の大切な家族支援の一つです。
Q4. 在宅看取りと葬儀・お見送りは、どのようにつながっていますか?
A. 在宅看取りは、死亡確認で終わるものではなく、その後にご家族が大切な人をどう送り出すかという時間へ続いていきます。ご本人らしい暮らしや価値観を知る医療・介護職と、葬儀やお見送りに関わる専門職がつながることで、ご家族が後悔なく見送るための支援につながります。看取り後の時間も、家族にとって大切な記憶として残ります。
Q5. 「家族に寄り添うお葬式」とは、どのような考え方ですか?
A. 「家族に寄り添うお葬式」とは、形式や規模だけで決めるのではなく、ご本人らしさやご家族の想いを大切にしながら、無理のない形でお見送りを考えることです。大きな葬儀でなくても、家族が納得して「きちんと見送ることができた」と感じられる時間をつくることが重要です。看取り後の不安を減らし、ご家族の気持ちに寄り添うことが、その後の安心にもつながります。
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