大間病院の地域医療と訪問診療|大間町・風間浦村・佐井村の暮らしを支える医師と看護師の挑戦 最終更新日:2026/10/20

本州最北端、津軽海峡に面した青森県下北郡大間町。マグロ漁で知られるこの町には、豊かな自然と人々の温かなつながりが息づいています。一方、大間町・風間浦村・佐井村では人口減少と高齢化が進み、地域医療の維持が大きな課題となっています。そんな地域で、外来診療や入院医療に加え、訪問診療・訪問看護、在宅看取りまで担っているのが国民健康保険大間病院です。今回は、津軽地方出身の工藤稜顕病院長と、大間町出身の吉田美穂子総看護師長にインタビュー。医師・看護師としての歩みから、患者さんの暮らしに寄り添う在宅医療の実際、へき地医療が抱える課題、そして地域医療の未来への想いまで伺いました。
「住み慣れた町で、最期まで安心して暮らす」。その願いを支える医療の姿をお届けします。
「住み慣れた町で、最期まで安心して暮らす」。その願いを支える医療の姿をお届けします。
津軽から大間町の地域医療へ|工藤稜顕病院長が歩んだ総合診療医への道
— 工藤先生が医師を志したきっかけを教えてください。
工藤 青森県の津軽地方にある弘前市で生まれ育ちました。両親と弟の4人家族で、小学校から高校まではずっと野球に打ち込む野球少年だったんです。実は当初、医師になることは全く考えていなくて。中学校の同級生がプロ野球に進むほどレベルが高かったので、自分は学校の先生になって野球の指導者になれたらいいな、くらいに思っていたんです。
でも、高校1年の時に好きだった人が「医学部に行く」と言っているのを聞いて。当時は医学部がどれほど難しい学部かも分からないぐらい世間知らずだったので、「じゃあ俺も行こう」と軽い気持ちで思ったのが最初のきっかけでした。もちろん、学校の先生には「お前の成績じゃ無理だよ」と一蹴されましたが、それがかえって悔しくて。「絶対に合格して先生をびっくりさせてやろう!」と心に火がついたんです。

— そこから自宅浪人を経て合格されたそうですが、どのように勉強へのモチベーションを保ったのでしょうか?
工藤 やはり「予備校に行かない限り医学部なんて無理だ」と言われた悔しさが一番の原動力でしたね。負け惜しみかもしれませんが、予備校にも行かず、津軽の実家での自宅浪人で合格できたら、先生たちを驚かせることができるんじゃないかと思ったんです。
浪人生活が始まった最初の2週間は漫画ばかり読んで全然勉強しなかったんですが、「さすがにこのままではやばい」と焦り出して。そこからは毎日、朝起きてすぐベッド横の机に向かい、1日13時間から16時間くらい猛勉強しました。勉強していくうちにだんだんと成績も上がってきて、親も応援してくれたので、いい循環の中で頑張り抜くことができ、無事に自治医科大学に合格できました。

— 医学の道へ進む後押しとして、ご自身の吃音症の経験もあったそうですね。
工藤 そうなんです。小学校から高校まで野球部のキャプテンをやっていたんですが、人前で挨拶したり号令をかけたりする機会が多いのに、言葉を発することができない吃音症に悩んでいました。高校時代は特に症状がひどくて、号令がかけられずにチームメイトにからかわれることもありました。そのせいで、人と話すことに強いコンプレックスを抱えていたんです。
当時は「吃音症」という言葉も知らず、周りに同じような人もいなかったので、「自分は世界で一人だけの奇病なんじゃないか」と思い詰めていました。自分の身体に何が起きているのか知りたい、治すための研究がしてみたい。そんな強い思いが芽生えたことも、医学部に興味を持ち、医師を目指すもう一つの大きなモチベーションになりました。

— 大学時代には海外にも行かれたそうですが、当時の経験は今の診療に役立っていると感じますか?
工藤 はい、今の自分にとって大事な経験だったなと感じています。大学時代は留学サークルに入って、タイやインドネシア、デンマークなどに行きました。ずっとコミュニケーションに苦手意識があったんですが、初めて訪れたタイは日本と全然違う文化で。「いろんな人がいていいんだ」「ありのままの自分で話しかけてもいいんだ」と、すごく心が軽くなったのを覚えています。
また、大学6年生の春休みにデンマークへ1ヶ月間医療研修に行った際は、現地の先生方が仕事とプライベートを上手に両立して、とても楽しく人生を送っている姿に感銘を受けました。日本の病院しか知らない状態から視野が大きく広がり、色々な価値観を受け入れられるようになったことは、現在の地域医療で患者さんと向き合う上での大切な土台になっています。

— 最終的に総合診療医という道を選ばれた理由を教えてください。
工藤 大学卒業後、青森県立中央病院で2年間の初期研修を行いました。整形外科や救急にも興味はあったんですが、ストレートに専門医を取得する同年代の医師たちに対して、自分は少し遅れをとってしまうのではないかという想いがあったんです。それならば、他の人があまり進まないような道を切り拓いてみたいと考え、救急初期対応から看取りまで幅広く診る総合診療の道を選びました。
その後は大間病院に赴任して、毎日目の前にある仕事をひたすらこなして経験を積んできました。2023年には東京ベイ・浦安市川医療センターで救急やICUを中心に後期研修をさせていただき、ショックや心不全、透析などの循環管理の面白さにも気づくことができました。今は大間病院に戻り、色々な疾患に対応できる医師として日々やりがいを感じながら診療にあたっています。

大間町の地域医療を支えて30年|吉田美穂子総看護師長が語る看護への想い
— 吉田さんのご出身は大間町とのことですが、幼少期はどのように過ごされましたか?
吉田 はい、大間町で生まれ、歳の離れた3人兄弟の末っ子として、地元の豊かな自然の中で育ちました。すぐそばに海があり、よく石投げ遊びなどをして過ごしていましたね。ただ、大間の海は急に深くなっていて危険なので、遊泳できる場所はきちんと決まっていました。
看護師という職業を意識したのは、小学校の頃です。テレビか何かで見て、「ナースキャップってどうやって頭に止まっているんだろう」と不思議に思ったところから、純粋に「白衣ってかっこいいな」と憧れを抱くようになりました。

— 憧れから、本格的に看護の道へ進もうと決心されたきっかけは何だったのでしょうか?
吉田 高校2年生の時に、29歳だった兄を膵臓がんで亡くしたことです。病気が見つかってからわずか5ヶ月という、あっという間の出来事でした。日に日に衰弱していく兄に対して、当時の私は気の利いた言葉をかけることも、励ますことさえもできず、ただ見守ることしかできない自分の無力さを痛感しました。
「何もしてあげられなかった」という悔しさがこみ上げ、「人の役に立つ仕事がしたい」と強く心に誓ったんです。その時の痛切な思いが、現在まで看護の道に携わり続けている最大の原動力になっています。

— 資格取得後、地元の大間病院へ入職されるまでの経緯を教えてください。
吉田 高校卒業後、千葉県の看護学校へ進学して資格を取得し、まずは千葉県で2年間働きました。その後、大間町から車で1時間ほどの場所にある「むつ総合病院」の手術室に配属され、そこで1年半間勤務しました。
大間病院へ入職したのは、平成6年に当院で新たに血液透析が開設され2クール制になるため看護師不足がきっかけであったと思います。むつ総合病院の手術室で一緒に働いていた泌尿器科の先生から、「吉田さん、大間の人だよね」とお声がけいただき、地元である大間病院に呼ばれる形で戻ってきました。

— それから約30年勤務される中で、どのような変化やご苦労がありましたか?
吉田 最初は透析室への配属で呼ばれたのですが、その後、病棟で夜勤ができる看護師が足りないということで、当時の総師長から「病棟で勤務しませんか」と打診されました。自分は透析のために来たはずなのにと、当時はすごくジレンマを感じましたね。
昔は頼れる先輩看護師がたくさんいて心強かった記憶があります。尊敬する先輩方の背中を見てすごし、いつの日か中堅になってました。周囲を取り巻く環境も時代が変わり、制度や医療機器、そして電子カルテなど様変わりしてます。中堅が多い職場ですから平均年齢も高く、電子カルテに移行時は苦手な方もいました。
8年前には退院支援に取り組み、入院から在宅そしてお看取りまでと幅広くかかわることができております。そして透析の患者さんも徐々に増え続けています。病院自体も様々な疾患やケアに対応できるようになり、徐々に立派な病院へと成長してきた実感があります。

— 地元である大間町で地域医療に携わる中で、一番のやりがいは何でしょうか?
吉田 やはり、患者さんやご家族との距離が非常に近く、「地域そのものを看ている」という実感が持てることです。
例えば、救急で身元が分からない患者さんが運ばれてきた時でも、「この人はあそこの家の人と関係があるから、あそこに連絡すれば分かりますよ」とドクターにアドバイスできるくらい、地域のネットワークが頭に入っています。ドクターからは「歩く戸籍係」なんて呼ばれることもありますね(笑)顔が見える関係性の中で、外来から入院、そして在宅医療に至るまで一貫して経過を把握し、患者さんの生活に深く寄り添えることは、この町で看護を続ける何よりのやりがいです。

大間病院が担う地域医療|患者を主人公にした診療と訪問看護への取り組み
— 大間町における「大間病院」の役割と、診療理念について教えてください。
工藤 大間病院は、地域にお住まいの方々が健康に不安を感じた際に、一番最初に受診する窓口としての役割を担っています。そのため、町民の方々が安心して暮らせるためのサポート役であることが私たちの使命だと考えています。
長く診療していると、医療者側はどうしても「病院に来て採血をし、薬をもらうこと」が患者さんの生活の中心であると錯覚してしまいがちです。しかし、患者さんにとって病院への受診は、生活のごく一部にすぎません。主人公はあくまで患者さんご自身なんです。ですから、傲慢に「なんで薬を飲まないんだ」と患者さんの生活の中心に入り込むのではなく、患者さんのお仕事や日々の楽しみを継続していけるよう、なるべく元の生活を維持するためのアドバイスやサポートに徹することを大切にしています。

— 大間病院の特長や、その理念を実現するために注力されていることはありますか?
工藤 一番の特長は、どんな患者さんが来ても断らずに診るということです。ただ診るだけでなく、どのような疾患が考えられ、どこに紹介すべきかという幅広い知識を常にアップデートするよう意識して日々勉強しています。
そのためにも、患者さんが何でも相談しやすい雰囲気作りを心がけていますね。ただ、患者さんによっては移動手段がなかったり、「紹介先に行かずここで診てほしい」と望まれる方もいらっしゃいます。そうした際に、本当に紹介しなくていい状態なのか、私たちがここで診てもいい範囲なのかを見極める判断は悩ましいこともありますが、患者さんの幸せを第一に考えて対応しています。

— どのようなスタッフ体制で診療にあたっているのでしょうか?
工藤 医師は、私を含め自治医科大学出身の医師6名で、日々の外来などを全て担当しています。また、車で1時間ほどかかる「むつ総合病院」から、整形外科の先生に週1回、外科の先生に2週間に1回お越しいただいています。病床数は48床あり、稼働率は時期にもよりますが5割から多くて7割程度です。病棟は1つですね。
吉田 その他のスタッフですが、看護師が36名、看護助手が14名おります。加えて、検査技師1名、放射線技師が2名、リハビリスタッフが5名という体制で診療を支えています。

— 訪問系のサービスも充実していると伺いました。
吉田 はい。在宅医療にも力を入れており、病棟に配属されている看護師の中から、訪問係として3名が在籍しています。「今月はあなたが訪問看護」といった形で、1ヶ月ごとのローテーションを組んで訪問看護に対応しています。
工藤 当院は看護師さんをはじめ、どんな疾患の患者さんにも対応できる頼もしいスタッフが揃っています。みんなで協力しながら、患者さんが望む生活に戻れるよう注力しているんです。

— 大間病院から少し離れた地域への診療も行っているのですか?
工藤 はい、大間病院の関連施設として「福浦診療所」と「牛滝診療所」での診療にも携わっています。 福浦診療所には週に1回、ここから車で40〜45分ほどかけて医師1名と看護師1名で向かいます。また、牛滝診療所は車で1時間半ほどと結構遠いのですが、月に1回、同じく医師1名と看護師1名で出向いています。
— 月に1回の診療所には、どのくらいの患者さんが来られるのでしょうか?
工藤 牛滝診療所に来られるのは2名ほどですね。距離的に、大間病院に来るのも、むつ総合病院に行くのも時間が変わらない方が多いのだと思います。それでも、私たちが定期的に出向くことで、遠方へ通うのが難しい方々の安心に繋がればと考え、診療を続けています。

大間町・風間浦村・佐井村の訪問診療と訪問看護|自宅での療養と看取りを支える
— 大間町周辺での訪問診療や訪問看護の体制、対象エリアについて教えてください。
工藤 巡回診療は、毎週月曜日の午後と火曜日の午前午後に実施しています。対象エリアは病院から16キロ圏内としていますが、実際には大間町だけでなく、風間浦村の下風呂地区から佐井村の矢越地域まで幅広く対応しています。遠いところだと車で20〜25分かかりますし、過去には車で45〜50分ほどかかる福浦地区での在宅看取りにも対応しました。
吉田 訪問看護は月曜日から金曜日まで行っています。現在は巡回診療の患者様が13名、訪問看護が11名いらっしゃいます。佐井村は無医村なので、医師がへき地診療に行く際に、在宅介護をされているご家庭の訪問看護も当院が担っているんです。訪問には病棟配属の看護師からローテーションで1〜2名で向かいます。

— どのような方が利用されており、1日に何件ほど回られるのでしょうか?
工藤 病院への通院が困難となり、寝たきりになってしまったご高齢の方が中心です。年齢は80代、90代の方が多く、過去には107歳の方もいらっしゃいました。ご家族が介護されているケースが多いですが、独居の方もいますね。1日の流れとしては、月曜日は午後のみで3〜4件、火曜日は午前・午後で6〜7件ほど回ります。診察だけでなく、お茶をいただきながら雑談することもあります。
吉田 当院に入院されていた方が、在宅に戻られた際に訪問看護を利用されるケースが多いです。風間浦村に行ってから佐井村の奥地へ移動するなど、1日で40キロ以上車を走らせる日もあります。おむつ交換などの清潔保持はもちろん、褥瘡(床ずれ)ができていないかの観察や、ご本人からの訴えに耳を傾け、些細な変化を見逃さないようケアも行っています。

— 夜間の急変時などは、どのような体制で対応されているのですか?
工藤 基本的には、夜間に何かご相談がある場合は病院の代表電話にご連絡いただき、受診が必要であれば救急車で来ていただくことが多いです。ただ、どうしてもご自宅での対応を希望される場合は、数ヶ月に1回ほどですが臨時往診に向かうこともあります。在宅看取りは24時間体制ですが、22時以降にご自宅で亡くなられた場合は、お電話でご連絡いただき、医師が死亡確認に向かうのは翌朝となります。
吉田 訪問看護では、日中の訪問で状態変化が著しい患者様がいらっしゃれば、夜勤の看護師に「今夜はお電話があるかもしれない」と必ず申し送りをしています。患者様やご家族からの電話には夜勤看護師が対応しますが、ご家族から求められればオンコール体制で訪問看護師が臨時訪問を行っています。

— 地域医療に携わる中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
工藤 先日、むつ市の病院から「最期は大間で迎えたい」と戻ってこられた40代の末期がんの方の在宅医療を担当しました。亡くなる数日前までご自宅でジグソーパズルを完成させたり、お母様の手料理を食べたりと、最期までご家族に囲まれて過ごすことができました。ご家族の不安を聞くのは辛い部分もありますが、お話を聞いて表情が明るくなるのを見た時は、訪問診療をやっていて本当に良かったと感じます。
吉田 ある肺がんの終末期の患者様が、在宅に戻られた際に「家はいいなー」と喜ばれていたことが忘れられません。徐々に呼吸も苦しくなり死期が近いと感じたある日、医師と私が訪問した際に、最後の力を振り絞って「最期まで俺を頼む」と手を差し出して強く握手を求めてこられました。その日の夜に旅立たれましたが、きちんとお話しできて、最期をご自宅で迎えられたことは本当に良かったのだろうと心に残っています。

— 訪問診療ならではの良さや、逆に大変なことはありますか?
工藤 津軽出身の私にとって、この大間町の温かさは本当に魅力的です。ご自宅に伺うことで患者さんの生活や過去が見え、深く理解した上で方針を話し合えるので、ご家族の理解を得やすいという良さがありますね。帰り際に「ありがとう」とお茶をいただいたりする時は本当に嬉しいです。一方で大変なのは、すぐ検査ができないため緊急時の対応に悩むことです。病院受診を促しても「どうしても家にいたい」と望まれる場合、痛みのコントロールなどにどう対処するか、時間をかけて話し合っています。
吉田 患者様やご家族と顔が見える関係で、強い信頼関係を築けるのが良さです。漁師町なので、夏場は「先生これ持ってけ!」と出汁昆布をいただいたりして、フレンドリーな笑顔に私たちも元気をもらいます。大変なのは、冬の道路凍結時の運転の怖さですね。また、夜間の訪問介護や訪問入浴サービスがなくなるなど、社会資源の少なさを痛感しています。歯科医師が不在で十分な口腔ケアができないことも今後の課題だと感じています。

本州最北端・大間町の魅力と高齢化の現状|マグロの町で地域医療を守る
— 大間町の現在の人口や、高齢化の状況について教えてください。
吉田 大間町の現在の人口は4,400人程度です。10年前は6,000〜7,000人くらいはいたと思うので、やはり人口減少は進んでいますね。現在の高齢化率は38%に達しています。さらに大間病院が地域医療を担っている近隣の両村はもう42〜43%になっていて、間もなく45%を迎えようとしています。私たちが訪問診療や訪問看護で接する患者様も80代、90代の方がとても多く、皆さんの生活をサポートする中で地域の高齢化を日々肌で感じています。

— 大間町での生活環境や、産業についてはいかがですか?
吉田 当院が医療を担う1町2村は津軽海峡などに面しており、主な産業は漁業になります。生活環境としては、町内にスーパーやコンビニエンスストアもありますし、温泉や豊かな自然も揃っていますから、生活する上で不自由は感じないですね。 大間町は本州最北端に位置しているので、遠方から来られる方は驚かれるかもしれませんが、海とともに生きる漁師町ならではの活気があり、とても魅力的な場所です。

— 吉田さんから見て、大間町の「こんな良い町ポイント」はどんなところでしょうか?
吉田 やはりマグロの一本釣りが有名で、毎年お正月の初セリでは「一番マグロ」が吊り上げられて名高いので、お正月にかけては町がすごく賑わいます。その他の季節も、春から秋にかけては本州から北海道へ渡る旅行者の方が大間に立ち寄って観光してくださいます。「北海道へ渡る前にマグロ丼を食べに行こう」という方が多くて、マグロ定食を提供している地元の食堂は、今やすごく混雑していて予約しないと入れないくらいなんですよ。 そうやって旅人や旅行者が多く訪れる土地柄もあってか、大間町の人はすごく心が温かく、他者に対してとても親切でお世話好きな方が多いなと私なりに感じています。

大間町・風間浦村・佐井村の地域医療の課題と未来|大間病院が挑むへき地医療
— 大間町における在宅医療の現状と、課題に感じていることを教えてください。
工藤 当院の医師は自治医科大学出身者が義務年限のローテーションで赴任するため、数年で入れ替わります。そのため、訪問担当の医師が変わるたびにしっかりと方針のすり合わせを行わないと、ご家族を困惑させてしまうことがある点が課題です。また、寝たきりの患者さんに褥瘡(床ずれ)ができてしまった際、「家族の介護が行き届いていない」という偏見を持たれてしまう現状に、もどかしさを感じています。
吉田 社会資源の不足に加え、訪問看護の利用者自体も減少傾向にあります。しかし、一人ひとりの「医療を受ける権利」や「手厚い看護を受けたい」という想いに応えるため、たとえ利用者が減っても訪問看護の体制を絶やしてはいけないと思っています。この地域には大間病院しかありませんから。それを維持するための看護師不足や高齢化が、私たちにとっての大きな課題です。

— そうした課題に対して、現在どのような取り組みを行っていますか?
工藤 在宅医療において、懸命に介護されているご家族が責められるような状況は心苦しいです。そのため今後は、病院から地域に出て、適切なマットやクッションの使い方など、褥瘡予防や管理の教育をイベントなどを通じて行っていきたいと考えています。
吉田 看護師不足に関しては、特定非営利活動法人ジャパンハートからの応援看護師制度を活用し、「へき地の看護」というコンセプトで支援をいただいています。実は、この取り組みを行っているのは、青森県では大間病院だけなんです。また、地域の小中高校へ出前講座に赴き、子供たちが医療者を目指すきっかけ作りにも地道に取り組んでいます。

— 5年後、大間病院はどのような病院であってほしいですか?
工藤 看護師さんの高齢化と人数減少が進んでいるという現状はありますが、大間病院は、地元で何十年も働き続けてくれている看護師さんたちの力で成り立っています。ですから、医師としては、5年後も看護師さんたちが少しでも「仕事が楽しい」「働きやすい」と思える環境づくりをサポートしていくことが使命だと感じています。
吉田 5年後も間違いなく、大間病院がこの地域にあり続けることを願っています。その頃には当院の看護師の平均年齢も53歳ほどになっているでしょう。それでも、病棟から外来、透析、内視鏡、訪問看護まで全てをこなすオールラウンダーな看護師たちが、地域や人を看ることを大切にしながら体制を守り抜いてくれると信じています。今ではスタッフみんなが「これが大間病院のあるべき姿だ」と理解してくれているので、その想いを継続していってほしいですね。

— 最後に、大間町や地域医療にかけるご自身の想いや夢を教えてください。
工藤 赴任当初は漁師町特有の勢いに萎縮することもありましたが、本当に皆さんが温かくて、今ではこの町も人も大好きです。私個人の目標として、来年からは予防医療や生活習慣に特化した勉強をしに、一度大間を離れる予定です。患者さんの楽しみを奪わずに、がんや心血管疾患を予防・治療できるライフスタイルをご提案できる、そんなサポートのプロフェッショナルになりたいんです。そして将来、また何かしらの形で大間の力になりたいと強く思っています。
吉田 私はとにかく「地元愛」ですね。これからの若者や、今一緒に働いているスタッフみんながこの町を誇りに思い、伝統を継承していってほしいです。そして、予防医療に力を入れ、終末期の方でも「大間病院があるから安心だ」と最期まで住み慣れた場所で過ごせる環境を作りたいです。私自身、来年で60歳になりますが、役職を降りても働ける限りはこの病院を支え、患者さんに「あなたと会えてよかった」と思っていただけるような寄り添う看護を提供し続けたいです。

地域医療の未来を、一緒に支えませんか。
大間町・風間浦村・佐井村の暮らしを支える地域医療。その現場では、看護師の力が求められています。
患者さん一人ひとりの人生に寄り添い、地域とともに歩む看護に関心のある方へ。大間病院での働き方を、ぜひ知ってください。
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国民健康保険大間病院|青森県大間町の地域医療を担う医療機関

診療内容
一般外来、整形外科外来(週1回毎週火曜日)、外科外来(月2回隔週)、血液透析(2クール)上下部内視鏡検査、入院管理、巡回診療・訪問看護。
救急はもちろん、在宅療養支援病院として24時間対応いたします。
またへき地医療を担い、無医村の地域に週1回1時間を要しながら、へき地の診療所へでむき診療しております。
その他 学校検診や小児の予防接種、地域の産業医として活動中。
救急はもちろん、在宅療養支援病院として24時間対応いたします。
またへき地医療を担い、無医村の地域に週1回1時間を要しながら、へき地の診療所へでむき診療しております。
その他 学校検診や小児の予防接種、地域の産業医として活動中。
お問い合わせ
国民健康保険 大間病院
〒039-4601 青森県下北郡大間町大字大間字大間平20−78
TEL:0175-37-2105 / FAX:0175-32-1012
WEB:https://www.shimokita-mc.jp/oma/index.html
〒039-4601 青森県下北郡大間町大字大間字大間平20−78
TEL:0175-37-2105 / FAX:0175-32-1012
WEB:https://www.shimokita-mc.jp/oma/index.html
工藤稜顕病院長のプロフィール|津軽出身の総合診療医

経歴:
2018年 自治医科大学卒
2018年 青森県立中央病院 初期研修
2020年 国民健康保険 大間病院
2023年 東京ベイ・浦安市川医療センター ICU・ER・外科で後期研修
2024年 国民健康保険 大間病院
現在に至る
2018年 青森県立中央病院 初期研修
2020年 国民健康保険 大間病院
2023年 東京ベイ・浦安市川医療センター ICU・ER・外科で後期研修
2024年 国民健康保険 大間病院
現在に至る
資格・学会:
日本医師会認定産業医
認知症サポート医
日本坑加齢医学会
認知症サポート医
日本坑加齢医学会
吉田美穂子総看護師長のプロフィール|大間町の地域医療を支える看護師

経歴:
1988年 青森医師会立青森准看護学院准看護学科卒業
1988年 北海道函館市亀田病院就職
1989年 千葉県香取市国保小見川総合病院付属看護学校入学
1992年 同校卒業
1992年 千葉県香取市国保小見川総合病院就職
1994年 むつ総合病院就職 手術部看護班勤務
1995年 国民健康保険 大間病院透析看護班
2001年 同院病棟看護班に配置換え
2016年 同院病棟看護班主任看護師
2018年 同院病棟看護師長
2019年 同院総看護師長
現在に至る
1988年 北海道函館市亀田病院就職
1989年 千葉県香取市国保小見川総合病院付属看護学校入学
1992年 同校卒業
1992年 千葉県香取市国保小見川総合病院就職
1994年 むつ総合病院就職 手術部看護班勤務
1995年 国民健康保険 大間病院透析看護班
2001年 同院病棟看護班に配置換え
2016年 同院病棟看護班主任看護師
2018年 同院病棟看護師長
2019年 同院総看護師長
現在に至る
取材を終えて:
よくある質問(FAQ)|地域医療・訪問診療・訪問看護・へき地医療

Q1. 地域医療とは何ですか?
A. 地域医療とは、地域住民が住み慣れた場所で安心して暮らせるよう、医療機関や介護・福祉サービスなどが連携して提供する医療のことです。特に高齢化が進む地域では、外来診療や入院医療だけでなく、訪問診療・訪問看護、在宅看取りまで切れ目なく支えることが重要です。
Q2. 訪問診療と往診の違いは何ですか?
A. 訪問診療は、通院が難しい患者さんに対して、医師があらかじめ立てた診療計画に基づき、定期的に自宅や施設を訪問する医療サービスです。一方、往診は、患者さんやご家族からの求めに応じて、医師が必要と判断した際に臨時で訪問する診療を指します。いずれも在宅医療を支える重要な役割があります。
Q3. 訪問看護では、どのようなサービスを受けられますか?
A. 訪問看護では、看護師などが自宅を訪問し、健康状態の観察、服薬管理、医療処置、療養生活の支援、ご家族への相談対応などを行います。医師の指示に基づき、病気や障害があっても住み慣れた場所で安心して生活できるよう支援します。在宅看取りの場面でも重要な役割を担います。
Q4. 在宅看取りとは何ですか? 自宅で最期まで過ごすことはできますか?
A. 在宅看取りとは、病気や加齢などによって人生の最終段階を迎えた方が、住み慣れた自宅で医療・看護・介護の支援を受けながら最期を迎えることです。訪問診療や訪問看護などの連携により、自宅で過ごすことが可能な場合があります。ただし、本人の病状や希望、ご家族の状況、地域の医療体制によって対応は異なります。
Q5. へき地医療とは何ですか? 地方ではどのような課題がありますか?
A. へき地医療とは、医療機関が少ない地域や交通条件などによって医療へのアクセスが難しい地域で、必要な医療を提供する取り組みです。医師・看護師不足、人口減少、高齢化、通院手段の確保などが課題となります。出張診療や訪問診療、訪問看護、遠隔医療などを組み合わせ、地域住民の暮らしを支えることが求められています。
Q6. 青森県の大間町・風間浦村・佐井村では、なぜ地域医療や訪問診療が重要なのですか?
A. 青森県下北半島の大間町・風間浦村・佐井村では、人口減少や高齢化、医療機関までの移動距離などが地域医療の課題となっています。津軽海峡に面した地域特有の地理的条件もあり、通院が難しい高齢者などを支える訪問診療・訪問看護の役割が重要です。地域の医療機関や介護・福祉サービスが連携し、住み慣れた地域で暮らし続けられる体制づくりが求められています。
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