ケアマネジャーのシャドーワークを考える 最終更新日:2025/04/25

加速する高齢化社会の中、社会問題化しているケアマネジャーの無報酬労働「シャドーワーク」。その原因、問題点や対策方法について、佐藤浩之主任介護支援専門員(加賀居宅介護支援事業所 管理者)により寄稿いただきました。
はじめに
最近、ケアマネジャーのシャドーワークについて論議されています。今までそのような論議をされた事がなかったため、ケアマネジャーに対しての処遇などの観点からもいい傾向になってきていると思います。
なぜなら、若くした世代のケアマネジャーが少なくなり平均年齢が上がり令和6年の統計では53.6歳にも到達しています。若い世代のケアマネジャーの成り手が少ない事になっています。昔は若くして介護職からケアマネジャーなったり、看護師のケアマネジャーも多くいました。しかし現在はそのような方々は以前よりもはるかに少ない現状にあります。介護保険が開始して間もないときは介護職よりもケアマネジャーの報酬が高く、成り手も多かったですが、近年はその逆転現象がみられています。原因はケアマネジャーの介護報酬が増えなく、介護職の処遇改善加算の制度のためケアマネジャーと介護職の給与所得の逆転も見られることも多く見られるようになりました。
給与所得もそうですが、ケアマネジャーの業務量の多さも関係しているのではないでしょうか。居宅、施設の所属している方、法人に所属している方や個人事業主の方もいるでしょうから、全てのケアマネジャーに当てはまる事ではないでしょうが、今回は私もそうですが法人に所属している居宅ケアマネジャー側から見たシャドーワークについて語らせていただきます。
改めてシャドーワークの定義とは何ぞやと検索してみると「影の労働」「無報酬労働」などになるが後者の方がケアマネジャーに対して当てはまるのではないでしょうか。
その「無報酬労働」に対して今回述べていきたいと思います。
1. ケアマネジャーの業務上に起こりえる内容
救急対応時の救急車の同乗や医療同意、入院時の手続きや着替え等の準備、公共料金の未払いや通帳紛失の復旧支援、マイナンバーカードの写真証明のサインなど
・緊急搬送対応時には救急隊員に病状、既往歴、通院歴、家族の情報など伝え、救急車への同乗をはっきりと断りましょう。
・医療同意、入院手続きは病院側と患者さんとの手続きであって、そこに権限のないケアマネジャーが対応する事ではないのです。
・マイナンバーカード申請する際、窓口に行けない方向けに写真証明書にケアマネジャーのサインが必要な書式もありその書類に署名して全く報酬につながらないのです。そもそもマイナンバーカードの申請手続きにケアマネジャーが手伝わなくてはならないのもおかしいと私は思います。
・公共料金の支払いや紛失した通帳の再発行手続きに関しては生命の危険性もあるため、何らかの支援は必要であり、早急な対応が求められます。ライフラインなどの復旧もケアマネジャーが先頭に立ってもいいですが、利用者さんと窓口へ行く際はヘルパーの介助を付け、直接介助は行わないようにしましょう。
2. 法人に所属している場合に起こりえる内容
事業所加算取得のための24時間の相談体制、ケアマネジャーの資格更新研修のための費用の個人負担と研修時を業務とみなさない法人、休日でもケースの対応をしなくてはならないなど
事業所加算を取得しているため24時間の相談体制やケアマネジャー資格の更新研修の費用の個人負担などもこれはある程度労働基準法の理解も必要です。
特に24時間相談体制で疲弊しているケアマネジャーもいると思いますが、介護保険制度では「24時間相談できる体制が整っているか」なので、深夜に必ず対応しなくてはならないなんて、法令に書かれていません。また事業所の電話を転送するので利用者さんだけではなく、休日に各サービス事業所からの電話もかかってくる居宅介護支援事業所もあるでしょうが、そのような事をするとサービス事業所のやり取りもしなくてはならず、休日もなくなる場合もあります。また平日、居宅介護支援事業所は営業中ですが、平日にケアマネジャーが休む場合もあります。居宅介護支援事業所によっては平日に休んでいる従業員に電話してその対応をさせているところもあります。休んでいる職員に対して対応させる場合んは業務をさせているので時間外労働となりますが休日対応は当たり前に業務をさせている法人もみられます。
資格の更新研修も費用は各ケアマネジャー負担、研修日は有給を使っているところもあるそうですが、これを聞いた時にはびっくりしました。私の勤務している法人は費用は法人持ち、もちろん研修は仕事として扱ってくれます。
最近は東京都が更新費用の約3/4を補助してくれたり、更新研修のあり方向けた議論でも厚労省が法廷研修は業務時間であると検討されているため今後正式に通知があるかもしれません。
3. ケアマネジャー自体が仕事を増やしてしまっている事もあります。
サービスのキャンセル連絡を利用者の代わりにケアマネジャーが各事業所に通達している、通院介助、介護保険証などの確認を各サービス事業所の代わりに確認と交付する事、ケアマネジャー個人の携帯電話番号を利用者、家族に教えるなど
ヘルパーやデイサービスを利用者さんが休む時にケアマネジャーに連絡してケアマネジャーが利用者さんの代わりにサービスの休み連絡をしているケアマネジャーも少なからず見受けられます。なぜ利用者さんとサービス事業所の間にケアマネジャーが入るのか不思議でなりません、ケアマネジャーが不在時にはどうするのでしょうか?ケアマネジャーが連絡できなかった場合にはキャンセル料はケアマネジャーが支払うのでしょうか?
サービス事業所からも平気で「介護保険証を送ってください」「負担割合証を送ってください」と連絡が来ることがありますが、平然とケアマネジャーが各事業所に送付したりする事も見受けられますが介護保険法には各事業所が保険証を確認しなくてはならない義務があります。認知症の方で介護保険証など紛失してしまったり、保険証を確認するのが難しいケースの場合であればケアマネジャーだけではなく各サービス事業所と連携して確認する事はありますが、そのようなケース以外の場合は各事業所に確認する義務がある事をケアマネジャー側がサービス事業所に説明するのも必要になります。
ケアマネジャーが利用者さんやその家族にケアマネジャーの個人携帯番号を伝えたり、Lineでつながっていて、営業時間外に連絡が取れる環境を自らケアマネジャー作り出している事も見受けられます。時々、引継ぎなどした際には以前のケアマネジャーがそのような対応をしていたことにびっくりしてしまう事がたまにあります。居宅介護支援事業所と利用者さんとの契約内容に忠実に対応するのが理想と思われます。そのような事をするといずれにしても疲弊していくと思いますので、利用者さんとの距離を保っていく事も大切です。
4. シャドーワークによるケアマネジャーの負担軽減を図るには
シャドーワークは本来必要な支援ですが、ケアマネジャーが対応しないといけない事はないのです。ケアマネジャーの業務は介護保険法にて決められています。それに逸脱してしまわないように、ケアマネジャー業務をきちんと理解していき、必要な機関に繋ぐことが本来の業務ではないでしょうか。
マイナンバーカードなどの介護保険制度以外の申請手続きは居宅支援事業所の契約書や運営規定の見直しをして実費請求を出来るように整える事も必要になります。介護保険制度など熟知していき、時には断る勇気も必要なのです。
シャドーワークを行っていると、「ケアマネジャーって大変そう」と思いこれから資格を取ってケアマネジャーをやってみようなど思わないのではないでしょうか。いろいろ複雑なサービス調整がありますのでシャドーワークはなくならないとは思いますが、法令に載っとった行動をしていけばシャドーワークはかなり軽減されるのではないでしょうか。ケアマネジャーの仕事が魅力的で若い方々がもっと参入してくれればと切に願います。
執筆:

佐藤浩之(主任介護支援専門員)
加賀居宅介護支援事業所 管理者
〒169-0074 東京都板橋区加賀1-3-1
TEL:03-5248-2784
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