1. おうちde医療
  2. >
  3. 在宅医療コンテンツ
  4. >
  5. ケアマネさんのための訪問歯科講座:基礎知識編

ケアマネさんのための訪問歯科講座:基礎知識編 最終更新日:2024/12/14

ケアマネさんのための訪問歯科講座
在宅医療のハブとなり活躍されているケアマネージャーさんへ「訪問歯科の今」を正しく、わかりやすくお伝えする「ケアマネさんのための訪問歯科講座」。
スタートは基礎編なので第0回「訪問歯科の基礎知識編」として、訪問歯科の概要、費用のこと、対象となる場合など、まずは知っておいてほしいことを平たく解説しました。
訪問歯科とは
訪問歯科をご存じでしょうか?
訪問歯科とは、お一人で通院することができない方に対して、患者様のいる場所に訪問して歯科治療をすることです。
お一人で通院することができない方でしたら、全年齢対応可能です。
(ただし、歯科医院側が対応できるのか異なるので、事前に問い合わせてみてください。)
患者様で一番多い年齢は、高齢者の方です。
寝たきりの方や認知症の方、脳梗塞の後遺症の方、精神疾患の方などさまざまな症状の方がいらっしゃいます。
現役世代といわれる年齢ですと、先天的なご病気や、交通事故などの後遺症の方などもいらっしゃいます。
乳幼児ですと、医療ケア児や障がい者の方などがいらっしゃいます。
行える治療については、歯科医院により異なります。
当院で行っていることをお話すると
虫歯治療
神経の治療
抜歯
歯周病治療
入れ歯の修理、作成
などを行うことが可能です。
皆様が通院している歯科医院とほぼ同じ治療をご自宅で受けることが可能です。
お金のこと
そこで、不安に思われるのが費用面だと思います。
もし医療保険1割・介護保険1割だった場合は、
一回の診療費が2,000円から2,500円となります。
ご自宅場合で考えていきます。(医療保険 1割、介護保険 1割)
ご自宅にお一人のみ診療で伺うと 医療保険は最低でも1,100円かかります。
そこから処置代や加算点数が入ります。
処置の内容にもよりますが、一回の診療で1,000円以上あがることは稀です。
介護保険は歯科医師が伺うと517円(月2回まで算定可能)、歯科衛生士が伺うと262円(通常は月4回まで算定可能)となります。
ざっくり計算すると
1100円+処置代+517円+362円=1,979円+処置代
になります。
説明するときは一回の診療が2,000円から2,500円になることが多いという風に話していることが多いです。
対象となる方、事例
訪問歯科を初めて受診する方で一番多いのは、最後の歯科受診日が5~10年前の方が多いです。
なぜそこまで期間が経ってしまっているのかというと
ご本人様が歯科診療をうけていることをしらないことを知らなかったからです。
ご夫婦でも歯科治療を現在受けていることをしらなかったり、親子になるとなおさらわからなくなると思います。
事案としてあったのは、おそらく入れ歯の修理途中で脳梗塞になってしまったケースがありました。
当院として伺った時には、入れ歯の修理した材料が劣化してしまい、入れ歯の内側がぼこぼこになっており、その状態で粘膜にあたり続けていました。
凹凸が強くなっているので、おそらく痛みはあったのだと思います。
しかし、なぜご本人様が訴えられなかったのかというと、脳梗塞により完全寝たきり状態になり、発声が全く出せない状態になってしまっていたため、痛みがあることや不具合があることを伝えられない状態でした。
ご家族様は、ご本人様が入れ歯を入れているということをしらなかったため、倒れてから数年間入れ歯をいれたまま過ごされていたことになります。
入れ歯をはずしたところ、上の粘膜が真っ赤になっており、見るからに痛そうな状態でした。
その方に関しては、入れ歯の修理した材料もかびていたので、すべて取り替えています。
入れ歯自体も古かったため新しく作り直しております。
入れ歯のこと
よく、歯科医院には「一年に一度は受診しましょう」と言われると思います。
それに対して回答されるものとして多いのは「私、入れ歯だから歯医者さんにいかなくていいのよ」とおっしゃる方です。
入れ歯は装具です。
入れ歯の内側を支えている粘膜は日々変化をしています。
ただし、入れ歯の形は変わりません。
ご本人様が痛みを感じていなくても、粘膜に傷ができている可能性があります。
当院の初診で入れ歯を拝見すると、ご本人様が気づかずに入れ歯にヒビが入っているケースもかなり多くあります。
入れ歯であっても定期的に受診する必要があることを覚えておいてください。
また歯の調子が悪いけれども放置されている方が多くいることも訪問歯科を行っていると遭遇することが多いです。
「もう歯が少ないから、総入れ歯になればいいのよ」とおっしゃる方が多いです。
上記でもお伝えしたように入れ歯は装具です。
装具と言われれば何を思い浮かべるでしょうか?
義足や義手を思い浮かばれる方多いのではないでしょうか?
義足や義手は完成してすぐに使えるでしょうか?
例えば義足で考えてみましょう。
義足の最初は取り付け方を学び、最初立ち上がりから練習を始めます。
立ち上がりに慣れてから、平行棒をつかって歩く練習をします。
そこから、自立して立てるように訓練をしていきます。
・・・・・といったような想像がつくと思います。
入れ歯はどうでしょうか?
完成したら使えると思っていませんか?
入れ歯があくまでも装具です。
もちろんご自身の歯のように使えている方も多くいらっしゃいますが、
使えていない方も多いのです。
それは、訓練期間が必要であること、入れ歯は使用していくと必ず痛みが出て調整が必要なことが周知されていないからと思っております。
入れ歯を使えるようになるためには、食べるとき以外の時間も入れ歯を使用して慣れる必要性があります。
髪の毛一本でもわかるところに、大きい入れ歯が入ったと考えてみてください。
最初は気持ち悪さと戦うこととなります。入れ歯は自分の歯の1/3しかかみ砕くことができないと言われております。
とは言え、入れ歯のかみ合わせがないと、かめている方と比較して転倒リスクが2倍になると言われております。
かみ合わせについて
かみ合わせに関してお伝えするならば、一本でも歯がなくなれば放置をせず、治療をすることをお勧めします。
歯がなくなったまま放置をしていると、舌や頬、唇、歯同士の隙間が狭くなってきます。
いざ治療しようとしても、歯がなくなってからすぐのタイミングよりも、違和感が大きくなることが想定されます。
まずは、自分の歯を守ることを重視していただきたいです。
もし歯がなくなってしまった場合は、治療をなるべく早くする選択をしていただきたいです。
歯がなくなってしまった原因が清掃不良のことが多いです。
歯磨きについて
もし歯を修復しても、清掃が悪ければ、再度取れてしまったりかけてしまったりします。
歯がなくなったところに関しては、今まで以上に歯ブラシを当てるように心がけてみてください。
歯ブラシの磨き方は独自の癖が出やすくなります。
自分では磨けていると感じていても、歯科の専門職がみると磨けていないケースはかなり多くあります。
定期的に歯科医院に受診し、歯ブラシの磨き方を確認してみてください。
認知症との関係性
もし広範囲に歯がなくなってしまった場合は、インプラントや入れ歯が選択肢としてできてきます。
入れ歯は噛みずらいなど申し上げましたが、歯がなくなったところを放置するよりは、入れ歯をいれた方がお口の中は安定します。
かみ合わせがない状態で食べていると、窒息リスクが上がったり、食べ物が丸のみになるので胃腸障害が起こる可能性も高いです。
かみ合わせがある方(総入れ歯でもかみ合わせがあればOK)とない方では、認知症リスクも2倍違うというデーターもあります。
かみ合わせがないと認知症の発症率が高まることをご存じでない方も多いです。
訪問歯科の課題
高齢になり、歯科医院にあるユニットに座れなくなってしまったとします。
ここで多くの方は「歯医者さんにある椅子に座れないから、治療することができない」とあきらめてしまう方が多くいます。
ご本人様があきらめてしまうため、口の中の違和感を我慢してしまうケースがとても多いです。
我慢できなくなり、お口の中がかなり崩壊してから歯科訪問診療につながるケースが多いです。
これに関しては、歯科側にも問題があります。
まだまだ歯科訪問診療をできる歯科医師が足りていないことです。
ご自身のかかりつけの歯科医院に相談し、もし解決できない場合は、歯科訪問診療を行っている歯科医院を検索して連絡してみてください。
 
執筆:
池川 裕子(いけがわゆうこ)
池川 裕子(いけがわゆうこ)
医療法人社団煌道会 出張歯科四つ木 院長
〒124-0011 東京都葛飾区四つ木二丁目18番2号 アプト船橋204
TEL:03‐6745‐8893
歯科訪問診療は以前より耳にするようになりました。
しかし、実際に何を治療してもらえるのか?どの医院を選べばいいのか?など
わからないことが多いのではないでしょうか?
ケアマネジャー様に向けて、歯科訪問診療の内容や申し込方法までわかりやすくお伝えしたいと思っております。