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飲み込みの検査の種類について 最終更新日:2025/01/20

飲み込みの検査の種類について
在宅医療のハブとなり活躍されているケアマネージャーさんへ「訪問歯科の今」を正しく、わかりやすくお伝えする「ケアマネさんのための訪問歯科講座」。
第5回は歯科医としてケアマネさんに知っていただきたい「嚥下=飲み込み」の大切さについて、その検査を中心に解説しました。
歯科医師の嚥下に関する知識の現状
歯科訪問診療でできることの一つに「嚥下(えんげ)の検査」があります。嚥下とは飲み込みのことを指します。最近では、VEと呼ばれる嚥下内視鏡を使った飲み込みの検査が行われています。この検査では、誤嚥がないかなど飲み込みの状況を確認することができます。
飲み込みに関しては、すべての歯科医院が対応できるわけではありません。私が学生だった15年以上前は、嚥下について授業で取り扱っている歯科大学は全国で3校しかないと言われていました(歯科大学は全国で29大学あります)。
嚥下を歯科大学で教えるようになったのはここ10年ほどのことであり、現在では国家試験にも出題されています。そのため、若手の歯科医師の方が知識としては豊富である可能性があります。
一方で、卒後10年以上前の歯科医師の場合、自発的に嚥下について勉強していない限り知識が乏しい場合があります。
嚥下対応の歯科医院を探す方法
嚥下に対応している歯科医院を探すには、東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)の摂食嚥下リハビリテーション学の戸原玄教授が作成した「摂食嚥下関連医療資源マップ」が役立ちます。
このサイトでは、「医療機関一覧」から地域別に嚥下に関わる歯科医院を検索することが可能です。また、嚥下食を提供する飲食店の情報も掲載されています。同じ区内で調べてみるとよいでしょう。興味がある方はぜひ活用してください。
嚥下検査の種類
飲み込みの検査には、主に以下の3つの方法があります。
1. ミールラウンド
2. 嚥下内視鏡検査(VE)
3. 嚥下造影検査(VF)
以下、それぞれの検査について詳しく説明します。
ミールラウンド
ミールラウンドは、飲み込みの検査の中で最も簡易的な方法です。
これは、普段の食事風景を観察する検査で、個人宅であれば、食事中の姿勢や環境、食事の状態を確認します。また、食事の形態や食器の状態、好みなど、さまざまな点を確認します。
施設の場合は、食事の提供状態や環境、介助の様子、食べ物の残し具合を観察します。ただし、施設では床に落ちた食べ物やゴミ箱に捨てられた食事が見逃されることがあり、これがカロリー計算の誤りにつながることもあります。
ミールラウンドでは、必要に応じて聴診器やエコーを使って飲み込みの状況を確認することもあります。
嚥下内視鏡検査(VE)
嚥下内視鏡検査(VE)は、鼻の穴から内視鏡を挿入し、声門周辺を観察して誤嚥がないかを確認する方法です。
この検査は訪問先でも行うことが可能で、飲み込む際の状態や食形態や姿勢の変化が飲み込みに与える影響を調べることができます。しかし、この検査にはいくつかの注意点があります。
内視鏡を鼻から入れるため、鼻からの出血が起こる可能性があるため、血液をサラサラにする薬を服用している方には特に注意が必要です。これまで直接口から食べていなかった方に関しては、この検査により誤嚥してしまう可能性もあり、当院ではVE検査の前に必ず全ての医師にて確認してから行うようにしています。
また、鼻の穴が小さい方や認知症の方では、検査が難しい場合があります。さらに、VE検査は普段の食事環境とは異なる状況で行われるため、患者が緊張して本来の飲み込みの様子が見えない可能性もあります。
嚥下造影検査(VF)
嚥下造影検査(VF)は放射線を使用して行う検査です。
造影剤を混ぜた食べ物や飲み物を飲み込んでいただき、その様子を観察します。この検査では、VEとは異なり咀嚼の様子も確認することができます。
ただし、放射線機器を使用するため、病院や対応可能な歯科医院でしか実施できないという制約があります。
発声による簡易的な評価方法
飲み込みの状態を簡易的に評価する方法として、発声状態の確認があります。発声が大きければ誤嚥時に自力で対処できる可能性がありますが、唾液で声がザラついている場合は既に誤嚥している可能性があります。日常的に大きな声を出したり舌の運動を行うことで、飲み込みを改善する訓練となります。
まとめ
嚥下検査には、ミールラウンド、VE、VFの3種類がありますが、それぞれ特徴や制約があります。
VE検査を行う場合は、事前に医科と連携して確認を行うことが重要です。また、VEが実施できない場合でも、適切な評価を行う方法は他にもあります。
嚥下内視鏡検査を行えない場合でも、慌てて訪問歯科医院を変更する必要はなく、大学病院と連携しながら診療を進めることも選択肢の一つです。
飲み込みに関する適切な検査を行うことで、患者さんのQOLを向上させることができます。
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執筆:
池川 裕子(いけがわゆうこ)
池川 裕子(いけがわゆうこ)
医療法人社団煌道会 出張歯科四つ木 院長
〒124-0011 東京都葛飾区四つ木二丁目18番2号 アプト船橋204
TEL:03‐6745‐8893
歯科訪問診療は以前より耳にするようになりました。
しかし、実際に何を治療してもらえるのか?どの医院を選べばいいのか?など
わからないことが多いのではないでしょうか?
ケアマネジャー様に向けて、歯科訪問診療の内容や申し込方法までわかりやすくお伝えしたいと思っております。