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ご利用者さんのお口の中がどうなっているのか把握されていますか? 最終更新日:2025/01/06

ケアマネさんのための訪問歯科講座
在宅医療のハブとなり活躍されているケアマネージャーさんへ「訪問歯科の今」を正しく、わかりやすくお伝えする「ケアマネさんのための訪問歯科講座」。
第1回は「ご利用者さんのお口の中がどうなっているのか把握されていますか?」のテーマにて、患者さんのお口の中のチェック方法やポイントなどを解説しました。
歯科訪問診療の実際
ケアマネさんへお聞きします。
「ご利用者様の中に歯科訪問診療を使われている方は、何名いらっしゃいますでしょうか?」
「ご利用者様のお口の中の状態を確認したことはありますでしょうか?」
令和元年日本歯科医学会「フレイルおよび認知症と口腔健康の関係に焦点化した
人生100年時代を見据えた歯科治療指針作成に関する研究」
要介護高齢者の2.4%しか歯科治療を受けれていないと言われています。
要介護高齢者のうち、歯科治療が必要な方は64.3%いると言われています。
そのうち緊急性が高いのは、5%と言われています。
緊急性が高い方ですら、歯科治療を受けられない状態です。
ケアマネさんが月に40名利用者様を持たれていたとします。
64.3%の方が必要だとすると利用者さんの中でどのぐらいの方が歯科治療を必要とされているのでしょうか?

40名×64.3%=25.72名の方の歯科治療が必要だと想定されます。
現状は、2.4%の方が歯科治療を受けていると考えると
40名×2.4%=0.96名となります。
2024年の介護報酬改定にて
ケアマネさんが抱えられているご利用者様のうち1名でも歯科訪問診療につながっていればよいかなと思います。
ご利用者様が誰一人、歯科訪問診療につながっていないケアマネさんも、まだ数多くいらっしゃると思います。
2024年の介護報酬改定では、リハビリテーション・口腔・栄養をみることを推奨しています。
令和6年度介護報酬改定における改定事項について(最終アクセス:2024年12月1日)
先程、上記でお伝えした要介護高齢者のうち わずか2.4%しか歯科治療を受けれていないと言われています。
それを解決するために「口腔連携強化加算」という、2024年の介護報酬改定で新たに単位数が設定されました。
この記事を記載しているのが令和6年12月1日なのですが「口腔連携強化加算」を理解して算定している事業所はまだまだ少ないのが現状です。
利用者さんのお口の中は
それでは、実際に在宅にいらっしゃる方のお口の中がどのような状態になっているのか想像したことあるでしょうか?
こちらの写真をご覧になってください。
入れ歯の写真となります。
汚れがかなり多く残っていることがわかりますでしょうか?
しかし、ご本人(以下Aさんとします。)にはケアマネさんが月に一回訪問するときに「お口の中清掃している?」と確認されていました。
Aさんは「しっかり毎日磨いているよ」とおっしゃっていたようです。
Aさんは季節の変わり目になると発熱して入院するということが毎年2回あったようです。
入院しても特に目立った原因はないと、医師から言われていたそうです。
そこでケアマネさんは「もしかしたら口の中が原因かもしれない」と思ったそうです。
訪問歯科として介入
そこで当院が介入することとなります。
当院が初診で入った際にも、Aさんがどのぐらい歯ブラシをおこなっているのかを口頭で確認します。
その際にも「毎日磨いているよ」とおっしゃっていました。

しかし、実際にお口の中を見た際に、入れ歯をだしたところ、ぬめりと汚れがかなり多く残っていました。
ぬめりは石鹸を持っているような滑り方をしていました。
汚れは外側と内側にもこびりつくように汚れが多く付着している状態でした。
これほど汚れがついているときは、入れ歯を全く磨いていない、もし磨いていたとしても1週間以上は磨いていないことが想定されます。

この汚れはプラーク、ぬめりはバイオフィルムと言われます。
バイオフィルムは、細菌の塊の外側に膜を作ってしまう状態で物理的に破壊しないと、ぬめりは取れない状態です。
入れ歯の洗浄
入れ歯洗浄剤を使用されている方はかなり多くいらっしゃいますが、義歯ブラシや歯ブラシで擦り洗いしないで、義歯ケースの中の洗浄剤に入れてしまう方が多くいますが、その場合には、ぬめりは全く取れません。

ご本人様はきれいな入れ歯を毎朝入れているように感じているのかもしれませんが、細菌がたくさんついた入れ歯を毎朝入れている方も多くいらっしゃいます。

Aさんの場合、義歯ブラシで清掃しても、最初は落としきれず、入れ歯を全体的に電動で磨くポータブルエンジンという機械で研磨し、つるつるになりました。
そこから、一週間に一度の診療を行い、入れ歯も古くなっていて、表面に細かい傷もはいっていたため、新しい入れ歯に作り直しています。

その後、季節の変わり目で発熱することはなくなり、入院することもなくなりました。
ケアマネさんにてお口チェックを
お口の中の汚れは細菌の塊です。
本当は毎食後入れ歯を清掃する必要があります。
細菌のかたまりが口の中に入っていたらどうなるでしょうか?

お口の中の粘膜が真っ赤にただれてしまったり、発熱してしまったりします。
お口の中をきれいにすることで、入院をふせぐ可能性があることをケアマネさんには覚えていただきたいです。

ケアマネさんで確認できるお口の中のチェック表があればいいのにと思いませんか?
実はOHAT(オーハット)というものがあります。
OHATは、オーストラリアの歯科医師Dr. Chalmersらが要介護高齢者の口腔問題をスクリーニングするために作成した口腔アセスメントシートです。OHATには口唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛の8つの評価項目があり、アセスメントシートにそって、当てはまる問題をスコア化していきます。
東京医科歯科大学の松尾浩一郎教授らによって日本語版(OHAT-J)に翻訳されました。
※Chalmers JM, King PL, Spencer AJ, Wright FA, Carter KD: The oral health assessment tool-validity and reliability. Australian dental journal. 50:191-199. 2005.
※Oral Health Assessment Tool (OAHT)日本語版. Available from: https://www.ohcw-tmd.com/research
東京科学大学大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野HP: http://www.ohcw-tmd.com/research/ohat.html
OHATはいろいろな項目があります。
ただ注意点があります。
口の中は本来人に見られたくない場所です。
利用者さんに嫌がられた場合は無理に行わなくてよいと思います。

もし嫌がられた場合は、訪問看護の方に相談してみてもよいと思います。
ただ、看護師さんは学生時代、口腔内の勉強をあまりしていない方がかなりおおくいらっしゃいますし、医師の方もお口の中はわからない方が多いです。
その場合は、歯科医院に相談していただき、口腔内をチェックしていただく方が現状もわかりスムーズにいくと思います。

もしお困りのご利用者様がいらっしゃいましたら、お気軽に歯科医院に相談していただければと思います。
関連リンク:
基礎知識編
お口の中を放置するとどうなるのか?
 
執筆:
池川 裕子(いけがわゆうこ)
池川 裕子(いけがわゆうこ)
医療法人社団煌道会 出張歯科四つ木 院長
〒124-0011 東京都葛飾区四つ木二丁目18番2号 アプト船橋204
TEL:03‐6745‐8893
歯科訪問診療は以前より耳にするようになりました。
しかし、実際に何を治療してもらえるのか?どの医院を選べばいいのか?など
わからないことが多いのではないでしょうか?
ケアマネジャー様に向けて、歯科訪問診療の内容や申し込方法までわかりやすくお伝えしたいと思っております。