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お口の中を放置するとどうなるのか? 最終更新日:2025/01/06

ケアマネさんのための訪問歯科講座
在宅医療のハブとなり活躍されているケアマネージャーさんへ「訪問歯科の今」を正しく、わかりやすくお伝えする「ケアマネさんのための訪問歯科講座」。
第2回は「お口の中を放置するとどうなるのか?」のテーマにて、お口の中の状態が悪くて放置していたら、何が起こるのかについて解説しました。
清掃不良により食べれなくなる
歯科訪問診療で一番多いのは清掃不良です。
歯ブラシで落ちる汚れのことをプラークと言い、プラークはそのまま放置すると虫歯や歯周病の原因となります。
プラークは400~700種類の細菌でできています。
プラーク1㎎の中には10億個以上の細菌が存在しています。
(出展:特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会)

数が多いなぁということは伝わったと思うのですが、実際にはどのぐらいの数がいるのか想像がつかないと思います。
身近なもので例えると、大便の細菌数よりも多いと言われております。

いかがでしょうか?

大便は汚いと思う方が多いですが、お口の中の汚れはそこまで汚いと思われている方は少ないのではないでしょうか?
再度申し上げますが、プラークは細菌の塊であり感染物質です。

そこでヘルパーさんなどの介護スタッフに注意してほしいのは、口腔ケアを行うときは、グローブをしてから対応することです。まだ、素手で行っている方が多くいらっしゃいます。そして、ご利用者さん毎にグローブを交換してください。そうしないと、ヘルパーさんが感染してしまう可能性もありますので、注意してください。
また、プラークは物理的にこすらないと取れないものです。
たまに洗口剤のみで口腔内清掃を終了する方がいらっしゃいますが、歯ブラシを行わない場合は、汚れは全く落ちていないと考えてください。洗口剤を使用する場合は、歯ブラシを行ってから洗口剤を使用することをおすすめします。
そして、もしプラークが取れないと、唾液の成分と化学反応をおこして歯石になります。
つまり、歯石になっているということは、歯石の部分に日常的に歯ブラシが当たっていないことがわかります。早いと2日間歯ブラシが当たらないだけでも、歯石になることがあります。

さらに、歯ブラシがあたらないと歯周病と虫歯になります。
虫歯は歯自体が欠けてしまい、最終的にかみあわせがなくなってしまいます。
歯周病は歯の周囲の組織がなくなっていく病気です。
歯の揺れがつよくなり、最悪の場合は歯が自然に抜けてかみ合わせがなくなってしまいます。
つまり清掃不良を放置すると食べ物を食べれなくなってしまう可能性があります。
入れ歯の清掃を怠ることで虫歯や歯周病になることも
入れ歯は、どんなにぴったりに作っても、入れ歯と粘膜の間に食べ物が詰まってしまいます

基本的には毎食後清掃する必要があります。たまに入れ歯をいれたままお口の中を清掃している方がいらっしゃいます。汚れが入れ歯の内側につまったままで時間が経過すると、入れ歯の内側で食べ物が腐敗してきます。

腐敗した食べ物が粘膜に長時間つきっぱなしですと、粘膜が全体的にただれてきます。
入れ歯の内側に汚れがつまっている状態で、噛んでしまうとその部分が高くなり粘膜面に傷ができてしまいます。

入れ歯は残っている歯にバネをかけています。バネをかけているため、汚れがたまりやすい状態です。入れ歯を外して清掃しないと、入れ歯を支えている歯の清掃不良にし、虫歯と歯周病を進行させてしまいます。
かみ合わせがなくても、歯ぐきが固くなっているから噛めている?
かみ合わせがない方がよく発言されます。ご本人様だけでなくご家族様もこのように発言されているケースがあります。歯科医師が確認してみると、まったく噛めておらず丸のみをされているケースがかなり多いです。

もし常食を召し上がっている場合は、噛めないので丸のみになっているので窒息リスクがあがります。窒息しなかったとしても、咀嚼できていないので胃や腸に負担がかかります。胃や腸に負担がかかると、胃酸の分泌が悪くなったり、腸閉塞や下痢になる可能性があります。

食べているといっても、実は噛み切れないものを自然と選ばなくなっているケースもあります。ご飯を用意する側は、一番食べにくい方に合わせてお食事を作っているケースがあります。そのため常食と思っていても、自然と介護食を召し上がっていることも多くあります。
入れ歯があわなくなってしまう
入れ歯を使っていると、「私は入れ歯だから歯医者さんに行く必要性ないのよ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

入れ歯は固いものです。入れ歯を支えている粘膜に関しては、やわらかいものです。ご本人様の体重がかわると、入れ歯を支えている粘膜の形が変わります。少しずつ入れ歯が合わなくなると、それに対して入れ歯を合わせようと、ご本人様が無意識に対応してしまうケースがあります。

上の入れ歯が口を開けると落ちてきてしまう状態なのに、舌でずっと押し上げながら使っているケースや、噛み続けて落ちないようにしているケースもあります。
舌でずっと入れ歯を抑えてしまうと、飲み込むときに舌を使えなくなってしまいます。
そのため、合っていない入れ歯を使用し続けることで誤嚥してしまう可能性を高くしていることとなります。

入れ歯に関してはどのぐらい持つものなのかに関しては個人差があり、明確に申し上げることは難しいですが、個人的には、3年ほど同じ入れ歯を使用していれば、よく持ったなぁと思います。中には15年以上使用されている方もいらっしゃいますが、かみ合わせの歯がすり減ってしまい、噛みにくいにもかかわらず気づかずに使用している方もいらっしゃいます。

入れ歯にヒビが入っているにもかかわらず、使用しているケースなども多くあります。入れ歯に関しては、使用している段階で半年から1年に一度歯科医院にて状況を確認してもらうようにしてください。
ほとんど話さなくなってしまう
声が小さくなり、もし間違って気管に入ってしまっても、咳などで出すことができない可能性が高いです。そのままでいると、さらに飲み込みが悪くなり誤嚥する可能性が高くなります
お茶や水でむせる
お茶や水でむせるけれども、少し甘い飲み物ならむせないで飲めるケースなどがあります。
その場合はすでに飲み込みが悪くなっているケースが考えられます。
甘い飲み物は、少しとろみをつけたお水と同様のとろみになっているケースもあります。
このまま放置すると、誤嚥性肺炎になる可能性が高いです。
いかがでしたでしょうか?
ご利用者さんから聞いたことある発言はありましたでしょうか?

もし、心当たりありましたら、歯科医院にご相談ください。
関連リンク:
基礎知識編
ご利用者さんのお口の中がどうなっているのか把握されていますか?
 
執筆:
池川 裕子(いけがわゆうこ)
池川 裕子(いけがわゆうこ)
医療法人社団煌道会 出張歯科四つ木 院長
〒124-0011 東京都葛飾区四つ木二丁目18番2号 アプト船橋204
TEL:03‐6745‐8893
歯科訪問診療は以前より耳にするようになりました。
しかし、実際に何を治療してもらえるのか?どの医院を選べばいいのか?など
わからないことが多いのではないでしょうか?
ケアマネジャー様に向けて、歯科訪問診療の内容や申し込方法までわかりやすくお伝えしたいと思っております。